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???

 戦場――その光景をそう表現するには、目の前の光景は余りにも悲惨に過ぎた。青空一つ見る事が出来ない黒雲の下、荒れ果てた荒野ではいたる所で黒煙と火の手が上がり、人間達の声が響き渡る。


 不思議な事に彼ら、つまり兵士達は武器や防具らしき物を殆ど身につけらておらず、小さめの金属鎧の下に厚手のローブを着て、 武器らしき物と言えば、手に握られた一振りの杖くらいなものだった。兵士と言うよりは、まるで古き賢者のような出で立ちだった。


 直後、そんな彼らの声を打ち消すかのような轟音と共に――

 

 それは、灰すら残さぬ燃え盛る爆炎だった。

 

 それは、血液をも凍り付かせる極寒の吹雪だった。


 それは、天の怒りを代弁したかのような轟雷の雨だった。


 それは、全てを吹き飛ばす暴風の嵐だった。


  果てには、万物全てを消し飛ばすかの如き破滅の大爆発、迷い込んだ者の生気を奪い即死させる呪いの空間、力尽きたはずの人間が立ち上がる死者の行進……まるで、大自然の驚異が意思を持つかのように右へ左へと、それぞれの集団へ猛威を振るい、殺戮を撒き散らした。彼らの悲鳴は殺戮の悪意によって蹂躙されたのである。

 

 この惨状を表現するに相応しい言葉――冗談や比喩など欠片も無い、文字通りの「地獄」だ。


「魔法」――それが、兵士達を蹂躙した物の正体だった。自身の生命力を「魔力」と呼ばれる霊的エネルギーに変換し、世界に超自然現象を引き起こす万能の法。


 人類の進歩の記録と言っても過言では無い叡智の結晶が今、歪な形で戦争で人を殺す為に使われていたのだった。


 ――どれくらいの時間が経っただろうか。生命を冒涜する殺戮の嵐が過ぎ去り、今までの轟音など無かったかの様に戦場は静まり返っていた。


「……何で、だよ」


 そんな中、最早個人の区別も付かない程に損傷した死体の山で、二人の人間が対峙していた。それは、どちらもまだ若干の幼さが残る男女だった。両者共に血塗れで、他の兵士が謎の杖を持っていたのに対し、二人がそれぞれ握っていたのは一振りの長剣だった。剣も彼ら同様べっとりと血に塗れ、ギラリと光る鋭利な白刃と対照して、ある種の美しさを醸し出している。


「何でこんな事を起こしたんだ!?」


 死体の上で、少年は激しい怒りを露わに対面の少女を糾弾する。その表情たるや、まるでこの世の憎悪全てを込めたかの様に鬼気迫っていた。


「……」


 その怒りを特に拒む事まず無言で受ける少女の表情はーー恐ろしく空虚だった。まるで、外見こそ人間だが中身が何も入ってない人形の様で、ただ何も喋らずに目の前の少年を見つめるだけだ。


「聞こえてるんだろ、答えろよ! 確かにお前がこの国を、世界を恨んでるのは俺だって知ってるさ! 世界はお前を裏切り続けたのかもしれない……けど、俺やアイツみたいに、お前に手を差し伸べてくれた存在だっていたはずだ! なのに、皆の事も裏切って、何の関係も無い人達まで巻き込んで、こんな戦争まで起こして、一体お前は何がしたいだ!? 答えろよ、■■■!!」


 怒る少年の、今にも泣き出しそうな必死の糾弾に、それまで無表情だった■■■に意思の色が灯る。そして、ゆっくりとその口が開かれる。


「それは、~~~だからだよ。大丈夫、『次』はきっと上手くいく。だからその為にも、この世界は一度滅ぼさなければならないの。人々の中にも、やがて『世界の意思』に気付く者が現れる。その為の引き金を、私が作ってあげただけの話だよ」


 おもむろに、■■■が剣を空に向けて掲げる。一瞬、剣が発光した次の瞬間、最後まで晴れる事が無かった黒雲が突然晴れ、一条の光が差し込む。


「――ッ!? お前……!」

 

 差し込まれた光は■■■を祝福するかの様に少女を照らす。太陽によって鮮明になった彼女の表情は、


「うん。私は今、とても気分が良いんだ!」

 

 恐ろしく純粋で、無垢で、だが不気味な満面の笑顔だった。それを見た少年は全てを察した。もう、この少女は手遅れなのだと。ならば、これ以上全てを滅茶苦茶にするくらいなら、この場で息の根を止め、介錯してやる事……それだけが彼に残された唯一の彼女を救う方法だった。


「……もう良い。お前は此処で俺が終わらせる。その結果が取り返しのつかない破滅への道なのだとしても、お前を一人だけで絶対に行かせはしない。手遅れなのだと言うのなら……お前を、殺す」


「……やっぱり、■■■は優しいね。何度やり直しても、君だけは君のままだったから、私は君に期待してたんだ。この破滅を回避する切り札になると……でも、此処まで事が進んだ以上、それも無意味だね。君と私は絶対に分かり会えない……さあ、かつては背中を預け合った仲間同士の殺し合い……燃える状況だね!!」


 突き放すような言葉と共に少年は自身の剣を構える。主人の意思に応える様に「聖剣」は神々しく眩い光を放つ。対する■■■も自身の剣を構え、こちらも主人に応える様に「魔剣」は禍々しい殺気を放つ。


「「……」」


 高まる緊張、静まりかえる戦場…そして、全てが無音になったその一瞬、


「フッ!」


「ハアッ!」


 両者は激突した。光と闇、神速で振るわれる二筋の閃光が静寂の戦場に鳴り響く。


「……待って、二人と、も……」


 そして、薄れゆく意識の中、二人の会話を終始ずっと聞いていた「第三者の少女」の意識は完全に闇の中に溶けていくのだったーー


こんにちは! 愚者と申す者です。今回ある事が切っ掛けで大きな時間が空き、その間に何か出来ないかと考えたところ、前々からやろうと思っていた小説の投稿をやろうと考えました。なろう小説に投稿するのは初めてなのでまだ至らぬ点も多々あると思いますが、徐々に改善出来れば良いなと思う次第です。これからよろしくお願いします!

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