午後2時
午後2時僕は自分の部屋で、100パーセント勝ち目のないメールを必死に探していた。朝から3通目のメール、相手の返信は1通だ。
好きな人はいますか?
どうしても打たずにはいられなかったこの言葉。わかっている、彼女には婚約者がいることくらい。結婚して遠くに行くことくらい。わかっている。
送ったあとで、返信が無くて、当たり前だけど、僕は「冗談です」と付け加えた。
わかってる、わかってる。
驚かさないでよ、と彼女の文字が飛んで来る。
僕にも相手がいますから。
と、これは悲しい嘘。
その相手を心配させるようなメールを送っちゃいけないよと、彼女からのメールは少し遅れて届いた。
そうですね、そうですね。
これでおしまいなんだ。
朝から突然、メールが届く。忙しくて返信もままらならなかったけど、午後2時のメールになんとなく予想はついた。
好きな人はいますか?
彼がわたしに、密かに思いをよせていることは、うすうす勘づいていた。だけどあんまりだと思う。わたしが結婚することは知っているはずなのに。
わたしには、婚約者がいます。
そう返事をしたら、冗談ですと返ってきた。
冗談なんかじゃないでしょ、わかってる、わかってる。
僕にも相手がいますから。
悲しいな、悲しい。そんな見え透いた嘘にどう付き合えというんだろう。しばらく考えて、わたしは。
相手の人が心配するようなメールを送っちゃダメだよ。
と送っておいた。
そうですね、そうですね。
全部気づいていたんだよ、だけど、ごめんね。
午後2時。