剣の街
初投稿作品なので、至らない所あると思います。
人の叫び声、剣と盾のぶつかり合う音、地面に倒れ落ちて血の匂いしかしない死体がそのままになっている。
空からはきつい暑さが射し、顔を覆った冑が息苦しさを生み出している。私が着用している特製の鎧は頑丈でなおかつ軽い希少な鉱石で作られているため体は敵の攻撃から守ってくれるが、この暑さからは守ってはくれないらしい。腕や脚は比較的薄く作られている為そこまできつくはないが、手の鎧部分は蒸れてきている。足の鎧に至ってはもはや言葉にしたくもない。
(これでは、敵ではなく暑さに殺されかねん)
攻撃の合図が鳴ってからどれだけの時間が経っただろうか。どれだけの敵兵を殺しただろうか。少なくとも、分かることはまだ今日の戦いは終わる様子は無いと言うことだ。さらに、ついてきていた部下も途中ではぐれてしまい1人になってしまった。
今日の戦場となった国境近くの砦であるジャイド砦の前方1000m辺りにある、あまり草の生えていない平野部で敵軍とぶつかり合っていたが、敵の攻勢も弱まってきてそろそろ終わるかなと考えていた時。
「ゔりゃあ!」
考え事をしすぎて周りへの注意を怠ったからだろうか、敵兵がかなり近くに迫って来ており、片刃の剣が私に向かって振るわれる。接差に左手で持っていた盾で自分の体を隠した。その瞬間、腕がもげるのではないかという衝撃が私の左の腕を襲った。余りの痛みに悲鳴をあげて、腕を庇いたくなったが必死にこらえて右手の剣を相手の脚に目掛けて思いっきり振るった。骨が割れる音がした。気にせず、そのまま足で蹴り倒した。
今回、攻めてきた隣国のバーリギスタンの兵士の特徴として、頭、胸、腰など最低限の装備で特攻して行き、一撃で倒すと言う戦い方が好まれているため、腕や脚に至ってはほぼ裸だ。目の前の奴は気休め程度に苔猪と思われる皮で覆っているが、今の一撃でまともに動くことは困難になっただろう。
相手は未だに顔を真っ赤にしてやる気満々にこちらを睨んできている。バーリギスタン人の特徴である赤い髪に映えて、実に恐ろしい。さっさとトドメを刺してしまおう。
倒れた相手の頭に向かって剣を振るい、剣で頭を斬り潰して、敵に足をかけ剣を引き抜いた。敵の頭からは血が垂れている。
(いつまで経っても、この感触には慣れないな)
剣を頭から抜いたところで「ボォー」と低い音がした。すると、敵兵の殆どが退却を始めた。一部がこちらを警戒しながら下がっているが追撃の合図も無いので、剣を背中に縛り付けてある鞘へと収めて味方たちが集まっている方へ行き休憩することにした。
皆が集まっている所に行くと、各々の家にまつわる剣を帯刀している兵士たちが地面に座って剣の手入れをしていたり、それも終わった者達は、近くにいる人達と会話をしながら皆思い思いに休んでいた。大体、二,三百人はいるだろう。
(正直、気を抜きすぎじゃないかと思わないでもないが)
味方の軍勢がだいたい集まり、私の剣の手入れも終わった頃、後ろの砦から帰還の笛の音がしたので、私達は砦に戻り始めた。戻っている途中に死体や武器などを片付ける為の馬車や兵士、今日の戦いで亡くなった者達にお祈りを捧げる為移動している僧侶たちとすれ違った。
僧侶たちは、魂や霊を静めたり、傷を治すといった奇跡を扱うことができるがそれを使うための勉強や訓練、お祈りばかりしているので戦うには不向きな者達なので基本、戦いの際は後方で待機している。
我が国では、剣神ラーデルを主に信仰しており、大半の人がこの信仰をしている。信仰していない少数組は、自然を讃える自然信仰か他の神を信仰している人くらいしかいない。
ある程度、砦に近づくと道も固くなり整備されているため歩くことが楽になった。早歩きしながら、砦へと戻っていると聞き覚えのある声に話しかけられた。
「スバル様!私です、ソンナです!」
後ろを振り向くと、そこに居たのは頭や首、胸等の急所のみを金属鎧で覆い、ほかの部分はバーリギスタン人を思わせるような装備をしている私の部下が居た。背丈は175くらいで体型は標準的な体つきをしている。冑のスリットから見える彼の眼は澄んだ水色をしており、すぐに彼だと気づいた。
「今日の戦い、お疲れ様でした」
彼は、私の家とは違うが強く長い友好が続いているため、戦争の際にはほとんど毎回同じ部隊で参戦している。今回は途中ではぐれてしまったが。
彼の持っている貫剣は、片手で持つことは困難で、両手を使うことを前提にしている。形状としては、若い木から削り出したような棒状の持ち手部分と先端の突く攻撃を主体とする刃から出来ている。間合いが広い為、よっぽどの兵士でもない限り先に突かれてやられてしまうだろう。
「ああ、お疲れ様。そっちに来ていた敵兵はどうだったかな?」
「はい、正直に言いますと圧力が少なく感じました。いつもの奴らだったら、手こずるところを楽に倒せましたので」
さすがは、貫剣の使い手と言ったところだろう。危なげなくこの戦いを終えていたらしい。私は鎧で体を守り、剣で殴ったり、斬ったりする戦い方をするために、常日頃から体中が痛んでいる。少し羨ましいと感じた。まぁ、今さら戦い方を変える気はないのだが。
それから、しばらく敵兵のことや今回の戦のことについて話している間に砦の門へと到着した。門前周辺では、先に到着していた味方兵士が列を作って門兵の検査を受けていた。検査と言っても、剣と各家ごとの象徴である紋章版の確認だけだ。
数十年前迄は、素通りすることも出来たのが敵国の兵士が商人を装って中に入り、彼らの味方が来た頃合いに一斉に砦の内部で暴れたことがあったためだ。今まで、我々の国への攻撃、略奪行為が全くなかったため、まさか攻められるとは思っていなかった弊害であろう。
それ以来、一人一人がその場の気分や暇な奴が適当にやっていた警備や防衛活動は終わりにされ。決まった時間、役割を行う仕事として門兵と言う役職が出来たのだ。
列の並びも少しずつ進んでいき、ようやく自分たちの番が来た。あらかじめ、腰から鎖で下げていた熱酸大蛙の革袋の中から紋章版は取り出した。
この獣は口から岩を焼くほどの酸をだし、大の大人の腰ぐらいの大きさを持つことからこの名が付けられている。この化け物蛙の皮は自分を酸から保護するためかとても丈夫かつ柔軟性も備えているため、荒い使い方にも耐える為兵士達に人気の品でもある。
「兵士殿!今日の戦いお疲れ様であります!お手数お掛けしますが、紋章版の提示と顔の確認をしますのでご協力のほどよろしくお願いするであります!」
確認をしてもらう為近づくと、相変わらずの大きくて勢いのある声を持つ男だなと思った。装備している武装は鎧は前面と背中側をいくつもの金属板で繋ぎ合わせた鎧を着用している。長時間たっている必要があるため、頭や首、腰などの装備は皮で出来た鎧を着込んでおり実に軽そうである。腕や脚の部分は布を巻いた後、鎖帷子で補強している。手は手続きのためか手袋だけである。顔は剥き出しになっており、彼の碧眼になんとなく目線が行ってしまう。
門兵は仕事の都合上、兵士達の家の専門的な知識、鎧と剣を使える技量、そして国の中央にある城塞都市におわす剣王様の任命を必要としている。だから、この砦にいる門兵たちも片手で足りる数しかいないため何年も同じ砦に居ると顔も覚えてしまう。目の前の門兵に紋章版を手渡した。
「今日もこの暑さに負けないような大声だな。今日の手続きも宜しく」
「はい!それでは、紋章版を確認の為お預かりいたします」
門兵が確認している間、ソンナと砦の中に入ったら、まずどこの店に行くかを話していると門兵が確認終了の意を伝えてきて、紋章版を返してきた。次に剣を見せる為しょっている鞘から我が家固有の剣を見やすいように、縦に掲げた。
「紋章版の提示と刀身の呈示のご協力ありがとうございます!その刀身はまさしく、岩をも斬り、そして潰すことが出来るデトノース家の剣に相違ありません!」
「ハッハッハ、最近は岩の獣達ではなく人ばかり斬っているがな」
我が家の剣は普通の剣とは違う作り方をしているので、柄の部分が長く、刀身は短く、太く出来ている。その分斬る箇所も少ないが、他の剣とは違い無茶な扱いや衝撃にとても強く、破壊力も抜群である。
「それでは、問題ありませんでしたのでどうぞお通り下さい」
「分かった、通らさてもらうとしよう。ソンナ、先に入って入り口付近の掲示板の近くで待っている」
「はい、こちらも終わり次第そちらへと向かいます」
砦の門の外側で待っていることは出来ない。そういった趣旨の命令が下されているため、一旦ソンナには別れを告げ砦に入ることした。
砦の門は、基本は木で出来ているが金属によってさらに補強された、高さ7mはある両扉形式のものである。今、現在は開かれたままになっているためそのまま入れるが、普段は開いておらず隣にある普通の扉から入る。
(兵士になっていなければ、ここを通ることもあまりなかっただろうに)
門を通りながら考えていると、外とはまた違う景色が見えてきた。
剣と鎧描写伝わったかな