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その6

俊は、指定された駅につき、周りを見渡す。

「あ、しゅん〜、こっちこっち!」

未菜が走り寄ってきて、俊の手を取った。

「ちょっと待っちゃった、でも平気!」

俊は未菜の手を離し、言った。

「聞きたいことがあるんだって言ったろ。別にメールで良かったのに」

未菜は再び俊の手を持ち、引っ張った。

「わかってる、ちゃんと聞くよ。どっか入ろう?お腹すいちゃった!」

俊は舌打ちをする。が、こいつから詳細を聞き出す必要がある···。

手近なレストランに入ると、向かい合った席ではなく、未菜は俊の隣に座った。

「狭いだろ、あっち座れよ」

嫌悪感を隠しもせずに俊は続ける。が、それを気にする風もなく未菜はメニューを見ている。

「なぁに、俊ちゃんったら。いつもこう座ってたでしょぉ?」

俊は未菜の肩あたりを押しやり、向かい側の席に追いやった。

「俺とおまえは今は何でもない。いい加減にしろよ」

メニュー越しに、未菜は俊を見た。

「なんでもなく、ないもん。わたし知ってる。俊ちゃんの事なんでも知ってるよ」

俊はため息をつき言った。

「俺のことなんかどうでもいいんだよ。おまえ、LFOの晒し板の事知ってるな?」

未菜は再びメニューの向こう側に顔を隠した。

「知ってるよ。俊ちゃんの知り合いが、散々悪行暴露されてる板でしょぉ?」

「何したんだ」

間髪入れずに俊は聞いた。未菜は片目だけメニューから出す。

「何も···」

俊は未菜が持つメニューに手をかけた。

「嘘つくな。おまえが炎上させてんだろ」

未菜はみるみる大きな瞳に涙を浮かべていった。

「俊ちゃん、怖い。なによあのサーシャっての。あんなの中身はただのおっさんでしょ?俊ちゃん騙されてるんだよ···」

俊は未菜が持っていたメニューを、バッと取り上げる。

「関係ないだろ。サーシャの中身がなんだろうが、おまえには何の関係もないだろ!?」

未菜は目を大きく見開く。俊は、今までこんなふうに未菜を怒鳴ったことがなかった。というか、可愛らしい未菜を怒鳴る男など、今までいなかった。

「俊ちゃんの馬鹿っ!なによこないだだって、せっかくわたしが俊ちゃんの喜ぶことしようとしたのに···家出ちゃうなんてひどいよっ!」

俊はメニューを未菜に投げつけた。

「喜ぶ事だと?男の寝込みを襲うのが喜ぶ事なわけあるか、おまえはあほか!!」

言い過ぎた。さすがに俊は思った。が、止まらない。サーシャを悪く言う奴は許せん。

俺があいつを護らなければ。サーシャ本人すら護ってないあいつを···。

「おまえは俺の親友に手を出した。しかも俺と寝たその日に。そん時に俺らは終わってる。俺に恨みつらみを言うのは構わん。が、俺の相方に迷惑をかけるのは絶対許さんからな」

うつむいて黙ってしまった未菜。俊は立ち上がってレストランを後にした。

ポケットの中でスペアキーが動く。俊はスペアキーを握りしめた。

早く帰ろう。どうせ起きて待ってる。俺が帰らないと、あいつは一人じゃ朝飯も作れないからな···。


家に着き、ドアを開けると何やらコゲ臭かった。

「た···だいま···?おい、サーシャ?」

ヒョコっとキッチンとは名ばかりの場所から顔を出す真理子。

「あ、あぁおかえり、早かったな?」

見ると、なんと、真理子が料理をしている···!

俊は目を見開き近づく。

「明日は世界が破滅する日か···?」

と呟く俊を、真理子は肘てつで応戦した。

「うるさい。腹が減るだろうと思っただけだ。···が、うまくいかなかった···」

フライパンには無残な残骸がチリチリと乗っかっている。

「おまえが帰ってくるまでまだかかるだろうから、作り直そうと思っていた所なんだ」

と言う真理子。俊は大袈裟にため息をつく。

「食材もタダじゃないんだ。俺が作るからいい子にしてろ」

真理子は口を尖らすが素直にキッチンを明け渡した。そして、言う。

「役に立たなくてすまんな」

俊は真理子の手を取り、自分の額に押し付けた。真理子は意味がわからずされるままにしていた。しばらくそうすると、俊は真理子の手を離し

「おまえは俺の栄養剤だな。まぁ、料理は···しなくていいんじゃないか」

無駄だしな···と呟いた。


一人でインしないこと。俊に約束された真理子は昼間に本屋に出かけ、立ち読みで料理の勉強をしていた。

面取り、イチョウ切り、魚の三枚おろし···。

写真では、いとも簡単に食材がおいしそうな料理へと変わっていく。

いつかサクサクとおいしい料理を作ってみたいモノだ。それがいつになるかは、わからんが···。

時計を見、もうすぐ昼になろうかという時間を確認して真理子は本を戻して店を後にした。昼飯は、簡単なものを俊が作ってくれている。残せば大変なメに合う。

こないだなど···。残したせいでサーシャはミニスカートをはかせられてしまった。次は水着でも取り出しそうだ。恐ろしい···。

アパートに着くと、ポーチの所に少女が立っていた。

真理子を見ると、軽く会釈する。真理子は会釈で応じながら、誰?と思った。

一人暮らしするほどの歳には見えない。アパートの住人ではないだろう。だが真理子にそれ以外で関わりのある人間は、いない。

「あの、私、未菜です。いつも俊ちゃんがお世話になってます」

ニコっと笑う可愛らしい笑顔。真理子は「あぁ」と頷く。

「こんにちわ。あれ、俊君なら学校行ってるけど···?」

未菜はコクンと頷いて

「はい、ちょっとお話したくて。わたしは学校休んじゃったんです」

と言う。真理子は未菜を部屋の中に案内した。

ちょこんと座る未菜の前に、インスタントコーヒーを置く。

「ごめんね、これしかないんだけど···」

未菜は、フルフル、と頭を振る。コーヒーには手を付けなかった。部屋を見回す未菜。

俊が真理子の部屋に来て、もう1ヵ月が経つ。元々物を増やさない主義の真理子の部屋は、もうほとんど俊の部屋と化していた。

「なんか、すいません。俊ちゃんったらずいぶん迷惑かけてますよね」

大人ぶった物言い。真理子は思った。こいつは、クロトの、何なんだ??

「迷惑だと思ったら本人に言うわ。どうかしたの?」

真理子は言う。余裕な態度でいなければ···焦っちゃだめだめ。

「アナタが、俊ちゃんを甘やかすから、俊ちゃん帰って来ないんだと思うんです。俊ちゃんのおうち、とっても立派な家なんですよ。こんな所にいていい人じゃないんです」

眉を寄せ、心底心配してます、と言った雰囲気の未菜。真理子は何も言えない。

「そりゃあ、色々嫌な事はあると思います。でも、いつもわたしに抱きついて、それで収まってたんです。でも、今回たまたまわたしがいなかったから···」

すぅっと未菜は息を吸い込み、言った。

「わたし達ずっと付き合ってます。もちろん何回も一緒に夜を過ごしてます。今回も、わたしがいればアナタの所に逃げ込む事もなかったのに···。身代わりみたいにしちゃってすいません。でももう、返してください」

ガタっと、真理子は立ち上がった。そして玄関のドアを開けた。

「クロトは犬ではない。ましてやおまえや私の所有物でもない。とっとと親の元へ帰れ。そして二度とここに来るな」

未菜は、もう仮面をかぶらずに続けた。

「ばばぁが粋がってんじゃないよ。アンタ、ここにいていいの?晒しの炎上はもう止まらない。アンタがいなければ、正義の怒りの矛先は、一体どこに行くのかしらね?」

そして可愛らしく微笑んで言った。

「アンタみたいなただの引きこもりが、普通に恋愛?痛すぎでしょ、馬鹿じゃないの」

そしてマグカップをひっくり返し、出て行った。


ポト、ポト、と、テーブルからコーヒーが流れ落ちる。パトラッシュがフンフンと匂いを嗅いでいる。

が、真理子は気にしていなかった。

怒りの矛先が···どこへ向かうって···?

真理子はパソコンを起動し、決して見ようとしなかった晒し板を開いた。


  |334:名も無き冒険者:

  |  行こう!諸悪の根源を根絶やしに!

  |  これは正義の名の元に行われる

  |  粛清だ!!

  |

  |335:名も無き冒険者:

  |  サーシャだけではない

  |  あいつと関係のある者すべてが悪だ

  |

  |336:名も無き冒険者:

  |  集合は今日。はじまりの街西口

  |

  |337:名も無き冒険者:

  |  オレも行く!

  |  ラーミャに真の平和を!

  |

  |338:名も無き冒険者:

  |  奴を、逃がすな···!

  |


真理子はダイブシップに入り、ログインした。

 はじまりの街、西口へ···!



ー解説

炎上について:未菜は、リアルでもLFOゲーム内でも、うまく立ち回り人の同情を集めてサーシャの悪行をでっち上げていきました。

真理子の自宅を知ったのはレストランの帰りを俊の後をつけていったからです。

俊もそうなんですけど、頭いいので!

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