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書き直しがひどいことになったので、申し訳ないのですが再度UPにしています。できてるところまで、また徐々にUPするので、どうぞよろしくお願いいたします。
太陽の熱がじわじわと体力を奪っていく。
屋根の下、それこそその熱を直接浴びているわけではないが、汗が止まらない。
片手にうちわを持ち、それでぱたぱたと自身を仰ぎながら目の前の元気な子供達を眺めた。
子供達は手持ちのお金と睨めっこしながら、各々があれこれ言っている。
駄菓子屋なので、もちろんお店の中にはお菓子がいっぱいある。そんな店内の中で子供達が集まっている場所からすると、やっぱり今の人気はアイスらしい。
見てるとつい私も食べたくなるが、さすがに売り物に手は出せない。
そうしているうちに、一人がひとつのアイスを持って、顔を上げた。
「ねーちゃん、これいくら?」
「それは百円、ってこの前もそれ食べてなかった?」
「えー、違うよ、この前はこれ!」
言いながら、アイスの沢山入っている冷凍庫の中を、ガサガサとかき回す。
元気いっぱいな子供達。その中に、一人。
みんなが集まっている冷凍庫よりも一歩後ろにいる、女の子。
みんなの輪に入るわけでもなく、ただひっそりとその女の子はみんなを眺めていた。
そんな彼女を、私は手招きした。
彼女は一度、きょろきょろと周りを見渡す。けれど彼女の周りには誰もいない。
手招きされたのは自分だと分かると、おずおずと近づいてきてくれた。
そんな彼女に、私は冷蔵庫からひんやりしたラムネを取り出して、渡す。
「まともに付き合ったら倒れちゃうよ」
私がウインクしながら差し出すと、彼女は頬を赤く染めて「ありがとう、しきちゃん」と言って、笑った。
夏らしいTシャツに短パンの子供達。対して、真っ白な長袖の上着を羽織る彼女は、確実に体感温度が違う。
思ったとおり、ラムネを渡したときに触れた彼女の手は、やっぱり熱かった。
私も女の子に笑いかけていたら、「あー!ずるいー!」と声がした。どうやら他の子供達に見つかってしまったらしい。
ずるいと言われてたじろく女の子に、大丈夫だよと伝えるように私は頭を撫でる。
「ずるくないよ、女の子だもん。女の子は大事にするものだよ」
「えー!でもさー!」
一面にぶーぶーと頬を膨らませた不満顔が並んでいる。そんな子供達を私は注目させるために、ぱん、と手を叩いた。
「よし、じゃあちゃんと私を大事にしてくれた縁を呼ぼっか」
私が縁の名前を出した途端、子供達は一変して目をキラキラと輝かせる。
「うっそ、えんにいちゃん帰ってきてんの!?」
「いついつ!?もう家にいる!?」
幼馴染の縁は子供達に好かれている。
縁の家の家色は【緑】。通常、家色というものは、地方へ行けば行くほど濁っていく特色を持つ。だから【緑】というはっきりとした色は、この辺りだととても珍しく、羨望の的だった。
しかも縁は、【青】の直属自衛軍の隊長をしている。
国家の中枢を担う原色の家に、縁は直接勤めているのだ。それはこの辺りの家には到底無理な職業だった。
「えんにいちゃんは!?ねえねーちゃんってば!」
「しきちゃん早く教えてよー!」
「あぁ、うん、そうだね、今日戻ってくるって聞いたけど…」
話も終わらぬうちに子供達が飛び出していく。
おそらくまっすぐに縁の家に向かったのだろう。
私は苦笑しながら冷凍庫にある、ぐちゃぐちゃのアイスを並べ直した。冷気がひんやりとして気持ちいい。
そのとき店の奥から物音がして、私は冷凍庫から目線を上げた。
さっきまで私が座っていた椅子。その奥は襖で仕切られており、襖を開けると六畳ほどの居間が現れる。
居間には窓もあり、襖さえ開けていれば風通りはいいものの、暑いには変わりない。なのに襖を開けて奥から出てきた彼は、なんとも涼しい顔でこう言った。
「それで?嘘まで言って二人っきりになりたかった?」