野盗
掲載日:2018/03/31
暗い中、県境の峠を越えていた。
自転車で全国一周という夢とともに、北海道から始まり、太平洋岸をずっと南下。
そして関東から西へと一直線に国道1号線に沿って走り続けた。
「しかし、まさかパンクするとはなぁ……」
国道から少し外れ、街灯一つない道で、とりあえず手で自転車を押しながら進んでいた。
駅か何かあればそこで泊まろうと思いながらも、本当に何もない。
「待て」
そんな星明り、月明かりだけを頼りにしていると、時代違いな青龍刀を持った人が、俺の行く手を阻む。
「何か、ご用ですか」
「おぬし、金目の物を置いていけ。おけば命は取らぬ」
「といっても……」
金目の物、自転車ぐらいが一番高いだろう。
現金は持ち歩いていないし、支払いは指紋で通る。
荷物は1000円を切る寝袋と、3000円ぐらいのテント、あとは百均で買ったペットボトルホルダー、リュック、腕時計だ。
「じゃあ、これをあげましょう。これ以外は二束三文ですから」
「……いいだろう」
自転車を俺は置いて、足早に去る。
パンクしていることに気づかないことを切に願ったが、十分経っても、二十分経っても、ずっとずっと歩き続けても追いかけてくる気配はない。
あとは近くの交番に駆け込んで被害届を出すだけだ。
俺はほっとしながらも、急ぎ足で先へと進んだ。




