俺達はランカーギルドに戦いを挑みました。
結局、Linker達はその場にいた100を超える我王流星煌破のメンバーのほとんどを殺していった。
アサシンであるMLGの高火力はプレイヤー相手にも十全に発揮され、高い単体ダメージを叩き出すディバインナックルの進化カードと合わさってほぼ一撃一殺だ。
ロイヤルブレイドのLinkerは防御バフでダメージをカットし、全体回復でとにかく支援を行っていったので、最終的に3人は一度も死ぬ事はなかった。
「は? てめーら何してきてやがんだよ晒しスレに晒すぞコラ!」
「自分らの事棚上げにしといてよく言えたもんだな!」
ギルドメンバーに脅しをかけられるが、特に怖くはない。むしろ、自分は悪者だとも思わぬようなその口ぶりに怒りが湧いてくるほどだ。
感情的になるLinkerとは対称に、MLGは実に落ち着いた様子を見せている。
「勘違いをしているようだね。これは戦争なんだ、殺す事があれば殺される事だってある。今回は君たちが後者だったというだけの話だよ」
そう言って、残ったメンバーを一人また一人と切り裂いていく。残っているのは数人の130レベル前後の者だけだ。
「クソが、戦闘狂ロールプレイってか! なんなんだよちょっとレベル高いからって余裕ぶりやがって……!」
「いや待て! あいつは……」
「何か知っているのかギルメン!」
残った内の一人がMLGを見て何かを思い出したような口調になる。
「……先輩、俺らがいない間に何かやったんですか?」
「いや、私にそんな心当たりは」
「……そうだ、あの女の名は月光門あかり……!」
放たれた言葉に、MLGは衝撃を受ける。Linkerも進化カードも同様だ。
もしかして、彼はMLGの現実世界での知り合いだったりするのだろうか。突如本名で呼ばれ、MLGはひどく狼狽する。
「なっ、何故それを」
「ゲーム開始の初日、親衛隊を名乗る集団に突如個人情報をばら撒かれた伝説のプレイヤーだ……!」
MLGの本名を知っている理由を聞き、Linkerと進化カードは納得した。そういえばあの時、周囲には多数のプレイヤーがいたのだ。一部始終を見ていたプレイヤーによって、その情報が拡散されてしまったのだろう。
「あのサイコ集団に粘着されてた月光門あかりか!」
「ああ、明らかに被害者だった彼女の家には、それ以来多数のMSWプレイヤーからお見舞いの品が送られるようになったという……」
「あ、あの日以来やけにハムだの缶詰だのプリペイドカードやらが多数届くと思っていたらそういう事だったのか……!」
「怖っ! 知らないやつからそんなの送られたって怖くて食べられないだろ!」
「え、普通に全部おいしく頂いたけれど。ダメにしたらもったいないだろう?」
「いや……それも一理ありますけどー!」
2人の与り知らぬ所でMLGは個人情報漏洩による被害を受けていたようだ。本人は自覚していないようだし、送られるものはあくまで厚意からのものらしいが……。
「クッ、現実世界であんなのに付きまとわれている月光門あかりなら、人が集まっている所で刃物を振り回したくもなるか……」
「うむ……なんか納得していいのか微妙な事を言われている気がするが……ともかく分かってくれればいい。他の人の迷惑にもなるから、もう少しばらけてもらおうか。あと、フルネームで呼ぶのもやめてほしい」
MLGの正体を知ったギルドメンバー達は唐突に戦意を失い始めた。
どうやら親衛隊のおかげで(せいで)、月光門あかりの名はMSW内に憐みの対象として広がっていたようだ。
誰の話を聞こうともしない無法者かと思われていた我王流星煌破ギルドメンバーはMLGの言葉を素直に受け入れた。
「わかりました、あかりちゃん!」
「すまない言葉が足りなかったね月光門と呼んでほしい」
その後彼らはバラバラに別れ、MLGに言われたように他プレイヤーの迷惑にならないよう戦争イベントを過ごしたという。
それからしばらくして、戦争イベントは終了した。
100近いプレイヤーの撃破で一気に星の因子は増加したが、それでも参加時間が遅かっただけあって目標としていた数値には到達できなかった。
が、それでも想定より数万ほど少ない程度。最後のチャンスという事もあって全力で狩りをしたおかげだろう。この程度の不足なら普通の狩りでも補える。
というわけで、そちらの心配はいらない。
「ううう、晒されてたりしたらどうしよう」
が、Linkerは頭を抱えていた。我王流星煌破のメンバーはMLGの事を知って撤退はしたが、普通にどこかのスレッドで自分達の事を悪者扱いして晒したりしていないかと不安になる。
晒された所で特に困りはしないかもしれないが、今更になって怖くなってきた。
「大丈夫だ、今ざっと調べたが特に俺達の名前が出てたりはしてないぞ」
進化カードのその言葉を聞き、Linkerは安堵した。ほとぼりが冷めて3人が完全に忘れた頃に、という展開もなくはないが、いくらなんでもそこまで悪質な真似はしないだろう。
「悪いのは我々ではないのだから、もっと堂々としていていいと思うんだが」
「だとしても晒されるのは怖いですよぉ……」
見ず知らずのプレイヤーから罵倒される事を想像してLinkerは脅える。
これ以上は嫌な事を思い出してしまいそうなので、その話はもう終わりだ。
「なんにせよ、です。星の因子はかなり溜まったんで、残りは普通に狩りで貯めていきましょう! あと30日ありますし、カンストくらいはすぐいけますよ!」
「そうだね、頑張っていこう」
ともかく、星の因子はレベル上げと並行して行う事で3人共合意した。
そうなると今度はレベル上げに関する話になる。Linkerは進化カードの方を向く。
「……で、もう少しでレベルが150になるわけじゃん? お金に関しては狩りでそこそこあるし、必要なアイテムも割と手ごろな価格で露店とかで売ってるし……やっぱり、なったと同時にする感じかな」
恐る恐る聞いた。
別にLinkerにはもう逃げるとかそういう気持ちは一切ないのだが、それでもやはり直前になるとなんとも言えない感情が生まれてしまう。
かなり長い間親友を待たせてしまったし、もちろんレベルが150に到達したら即座にという事になるのだろう。
そう思っていたが、進化カードは首を横に振った。
「いいや。結婚はメインストーリー終わらせてからだ。この前そう言ったし」
「ああ……あれその場のノリとかで言ってたんじゃなかったのか」
冗談のつもりだと思っていたが、どうやら進化カードは本気で言っていたようだ。
「や、でも結構待たせちゃったし、俺は別になってすぐとかでもいいんだけど」
「気にせんでいいさ。俺は結婚するなら新年明けてからのがいいってだけだからな」
それに本編をクリアしてからの方が締まりがいいだろう? と進化カードは笑った。
Linkerも、それを聞いて笑顔を返す。確かに結婚式というイベントをエンディングにした方がそれっぽくなる。
まあメインストーリーの方がどんなラストを迎えるのかは知らないが、ともかく結婚は進化カードの希望に合わせる事でまとまる。
「2人もとうとう結婚か。それじゃあ私からも結婚当日にはMSWのプレイヤーから送られた缶詰とかをプレゼントさせてもらおうかな」
「……いやあ、それはちょっと」
「えー。でも、結構いいとこのカニの缶詰だよ?」
「うぐぐ、それならやっぱり欲しいような……」
見ず知らずの人間が送り主とはいえ、カニ缶の魅力に負けそうになるLinkerだった。




