俺はランカーギルドに遭遇しました。
それからしばらくして、月末。通算で3度目の参加となるシューティングスター・ウォーの開催日だ。
レベルは143まで上がり、他のプレイヤーとの戦闘は無理だろうがモンスター相手ならば誰かに頼る必要もなく、楽に戦う事ができるだろう。
Linker達3人は、最も近いレンディアスから参加する事にする。平日で学校もあったためやや遅れてのスタートとなってはいるが、星の因子を稼ぎきるのに問題はないだろう。
戦争イベント用マップに転送された直後、Linkerは目の前に広がる光景に驚愕する。
「なんだあれ」
Linker達からいくらか離れた位置で、物凄い数のプレイヤーがひしめいている。100人は超えているだろうか。
別の国に所属したプレイヤーのようで、敵という事になる。敵対プレイヤーが居る事は当たり前なのだが、あの数が固まって動くのは異常である。
パーティを組んでいたとしても星の因子が手に入るのは一番ダメージを多く与えたパーティにのみであり、あれほどまでに多数のプレイヤーが密集してもモンスターの奪い合いとなるだけであまり効率がいいとは言えない。
いったい何の目的で非効率な事をしているのか。
「我王流星煌破だ」
「えっなんだシン急に」
「いや、あいつらの所属してるギルドだよ」
進化カードに言われ、集団の属しているギルドを確認する。確かに、我王流星煌破というギルドに所属していた。
「かっこいいね」
「かっこいい……かなあ」
それから、更に進化カードの説明が続く。
我王流星煌破というのは、ギルド長の弟が考えた必殺技の名前だそうだ。自分の前世である王の力で流れ星を操り爆発させる拳法らしい。
その他にも多数の設定が書き記されたノートを見つけたギルド長は、その名を付けたギルドをMSWのランキング1位にするべく某所のスレッドで協力を仰いだのだという。
簡単に言えば、弟の黒歴史の大公開だ。それを悪ノリ大好きな掲示板の住人たちがこぞって協力し、MSW内の一大勢力になっているそうだ。
活動内容自体は特に決まっていないが、とにかく何でもやる集団である。
ギルドランキング1位にするべく横殴り上等でボスモンスターに攻撃するし、ゲーム内で詐欺を行ったり露店を開いてぼったくり価格でアイテムを売ったり冤罪晒し誹謗中傷その他本当に何でも。
良い悪いは別としても、MSWの中でかなりの有名集団である。
「あれもその一環だろうな。ああやって集まって、モンスターの湧きの多い場所を占拠して他プレイヤーの因子集めを邪魔してるんだろう」
「うわあ、ランク1位のギルドがそんな迷惑な事してんのかよ」
トップのギルドがマナー最悪集団とは、Linkerはちょっとがっかりする。
「ん? あいつらはギルドランキング1位じゃないぞ、2位だ」
「え、じゃあ1位は誰だよ」
「1位はまったりほのぼのだ」
まったりほのぼの、それはギルド名が示す通りに厳しい狩りノルマを強制された殺伐とした人間関係のギルド。
強力な装備を落とすボスモンスターが湧くのを24時間体制で監視し続け、出現と同時に全ギルドメンバーが集結し即座に狩っていく。
噂では全ギルドメンバーが24時間ログインし続けているという話もあり、彼らの正体はニートか運営側の用意したAIであるという説が有力である。
「全然まったりほのぼのしてなくねぇか」
「まあ、どこまでがエンジョイ勢かは当人たちが決める事だからな……」
ともかく、話は多少ズレたが我王流星煌破とは関わらないようにしようと決めた。こちらに一切の非がなくとも接触を試みれば無実の罪で晒し上げられたりする事もあるそうだ。
Linkerと進化カードはそれに納得した。MLGも異論はなさそうだった、のだが。
「あサーセンそれ俺の獲物なんでぇ!」
MLGが攻撃しようとしたモンスターを我王流星煌破のメンバー達が遠距離攻撃で撃破した。
しばらく呆然と立ち尽くしていたMLGだったが、特に気にしていないという風に彼らに手を振り、それからLinkerと進化カードの方へ振り返った。
「皆殺しにしよう」
「先輩!? 無理ですよ!」
口元だけが歪み、目は笑っていない独特な笑顔を向けられ、その威圧感に首を縦に振ってしまいそうになったがLinkerは否定を返した。
こちらは3人、相手は100人超え。戦うまでもなく多勢に無勢である。
「いいや、ここはレンディアスのリスポーン地点に近い。それに私達より強いメンバーはステータスを確認してもいないし同程度のレベルが10人そこらだけだ。こちらが何度か殺されようと戦線復帰速度を生かせばあんな烏合の衆の殲滅くらいなんてことはないと見たね」
MLGの言うようにあの集団の中にはLinkerたちよりもレベルの高いプレイヤーはいなかった。しかも、大半は2桁レベルの者が非常に多い。
これならば確かに負けはしないだろうと思える。しかし。
「でも、後で仕返しとかされませんかね……」
プレイヤー同士で戦えるイベントであるので倒す事に問題はない。だからといって倒された彼らが何の報復も行わないという話になるわけではない。
晒されたりもするだろう。いくらそれが無実の罪だとしても、Linkerとしては晒されるのは避けたいところだ。
だが、そんなおびえを見せるLinkerを、MLGは優しく諭す。
「リンくん、心配はいらない。彼らは人間ではなく星の因子を落とすモンスターと変わらない。さあ、一緒に言うんだ。あれは殺していいものだ」
「あれは殺していい……あれは、殺して……」
「あの先輩、リンを洗脳しようとするのやめてもらっていいですかね」
進化カードの声でLinkerは気が付いた。危うく、MLGに乗せられてしまう所だった。
「はっ、俺は何を」
「先輩と一緒にあそこへ突撃する所だったぞ」
Linkerが正気に戻り、MLGはむすっとする。
「むうう。あと少しだったのに」
「あはは、流石にそんな簡単に言いなりになったりはしませんよ」
凛花だってあと数年もすれば大人になる。そのぐらいの年ともなれば人の意見のままに動いたりはしない。どんな時だって自分で考えて行動するのだ。
そこで、今なおマップの一角を占領する我王流星煌破の方をもう一度見る。
「でも、ちょっとぐらいならやり返したっていいんじゃないか、とは思いますよ」
「おお、話がわかるじゃないか!」
「え、やるのかリン?」
MLGは嬉しそうだが、進化カードは困惑した様子で問う。
自分で考えた結果だ。やられたままでは終われないと首を縦に振る。
「よく考えたら晒されたところで問題あんまりないしな。パーティはだいたい身内で組むし」
「……まあ、リンがいいならいいんだが」
そういうわけで、我王流星煌破の面々と戦う事になった。
レベル的に精鋭というわけではないのだが、それでも相手はランク2位。それを心してかかる。
「さあ行こうじゃないか2人共! 皆殺しにしよう!」
この場の誰よりも楽しそうな声を上げながら突っ込んでいくMLGを追いかける形で、Linkerと進化カードも戦闘に参加していく。




