俺はリベンジをしました。
激闘だった。
120レベルとなり3次転職も済ませたLinkerたち3人はメインストーリーを進める事にした。星の因子の必要量が心配だったが、これまでの狩りでなんとかギリギリ進行可能な量が溜まっていたのは幸いだ。
しかしこのクエストのボスはかなりの強敵で、初見で挑んだ3人は叩きのめされてしまった。
自分達だけでなく敵のレベルも高くなっているので、どうやら事前に情報を集めずに挑んだ他のプレイヤーも同じように負けてしまったらしい。
その結果、120から開始できるクエストではあるが、だからといって3次転職直後ではほぼ勝ち目のないクエストであると判明した。
というわけで、もう少しレベルを上げてから再挑戦する事にした。
暗黒海域の効率の良い地帯がうまいこと空いていたのでそこでひたすら狩りを続けると、以前の湧きが甘い場所に比べて何倍もの経験値を得る事ができた。
狩場の取り合いが激しい場所なので毎日そこでというわけにはいかなかったが、それでも運良く効率の悪くない場所で狩る事ができ、これとアースガルド防衛戦のおかげで1週間ほどでレベルは130まで上がった。
以前より10も上げればどうにかできるだろうという話になり、3人は再びメインストーリーに挑んだ。
クエストはアースガルドへのワープポイントのすぐ横にいるNPCに話しかけると開始される。
ついにアースガルド侵攻部隊の隊長が現れたらしく、強い星の因子を宿す者にそれの討伐を依頼するという流れだ。
要請を受け入れるとアースガルド防衛戦マップに転送される。出現するのはボス1体だけなので、ここで経験値稼ぎをしたりはできない。
現れたのは寡黙な、黒い鎧に身を包んだ騎士。戦闘終了までほぼ喋らない。
軽やかに動き回る黒騎士は一度に大ダメージを与えてはこないが、多段ヒットする小ダメージの突きをメインに繰り出してくる。
固定ダメージが含まれているのか防御系のバフがほとんど意味を成さず、受けるよりも避けるのが主になる。
つまり、Linkerの防御スキルのほとんどが機能せず、あまり役に立てなかった。
だがナイト系統の職の特性により敵の攻撃対象になりやすいので、Linkerが攻撃されている間に進化カードとMLGの2名が黒騎士に攻撃を加える事で比較的安全に攻略する事ができた。
「……っ、だが、これで確かに、繋がった」
膝を突いた黒騎士はそれだけ呟くと、黒い煙を上げながら空間に溶けるように消滅した。
そして元いた場所に戻され、アースガルドを守り抜いた事をNPCから厚く感謝され、そこそこの経験値と10万もの星の因子が報酬として手に入った。
「うおお、こんなに貰えるのか」
Linker達の所持する星の因子は、多少の誤差はあるが大体30万前後だ。前回の後再び発生した戦争イベントでしっかりと貯めた。
そしてクエストクリアでプラス10万。現在は約40万ほどになっている。
「次のメインクエでラストっぽいからなあ。噂じゃ80万くらいの因子要求されるんじゃないかって話だ」
「今の2倍かよ……気が遠くなるなあ」
「今月末の戦争は本気でやらないといけなさそうだね」
最終メインストーリー追加の噂があるのは年末。つまりは、来月である。
MLGの言うように、追加直後に挑むつもりであれば今度の戦争イベントが最後のチャンスとなるだろう。Linkerは月末に向けて気合を入れた。
「それはそれとして、無事クリアもできたわけだし、今日のチケットで運試しでもしに行こうか」
MLGの言葉に、残りの2人は頷きを返す。
先日MSWのメンテナンスが行われ、それが予定していた時間通りに終わらなかったので再びチケットが配られたのだ。
今度こそ、何か戦闘で役に立ちそうな物が手に入らないかなと期待しながらLinkerは近くの町へと向かった。
「嘘だろ……」
色々考えつつも、結局はまたどうせゴミが出るのだろうな、と諦め気味でガチャを回したLinkerは信じられないものを見た。
見間違いでなければ、目の前のカプセルは虹色に光り輝いている。
その驚愕に気が付いたのか、ハズレを引いてか渋い顔をしていた進化カードもMLGもLinkerに寄って来る。
「リン、まさか今度こそ!?」
「おお、レアなの引けたのかな? おめでとう」
2人の言葉を聞きながら、Linkerは恐る恐るカプセルを開ける。今度こそ思い切り自慢しようかとも思っていたが、いざその時になるとそんな余裕は生まれなかった。
そこから現れたアイテムは、「光と闇のスフィア」というアイテムだった。
Linkerには価値がよくわからないので、進化カードに聞いてみる。
「あー…………」
「え、もしかして俺またぬか喜びしてるのか?」
「いやあ、悪くはない、かもしれないがなあ……」
進化カードの話では、これは以前引いた強化スフィアと同じくユニークアイテムにしか使用できないらしい。
そしてランダムに強化オプションが付くのも同じなのだが、虹色だけあってそこはワンランク上の効果だそうだ。
付加されるオプションはどれも強力なものとなるらしい。だいたい何が付いても非常に有用なものが付くという。
が、光と闇、と名付けられるだけあっていい事だけではない。何かしらのマイナス効果も付与されてしまうらしい。
致命的なものからほぼ無意味なもの、かなりの種類の弱体効果の中から1つ選ばれる。
場合によってはほぼノーリスクとなるが、また場合によってユニークアイテムが産廃と化してしまう恐れもある、ギャンブル要素の強いスフィアのようだ。
「どうする? 使うのか?」
「それは当然、使わない理由のがないだろ」
が、Linkerは躊躇わない。劫火の姫の加護を準備する。
使い物にならなくなるかもしれない、という話だが元々所持しているユニーク装備はファッションアイテム程度の価値しかなかったのだ。ならばこれ以上弱くなっても特に困る事もない。
戦争イベントや年末のメインストーリーに向けて少しでも強くなれる可能性があるのなら、そちらへ向かって恐れず進んでいくつもりでいた。
「よし、それじゃあ」
以前と同じようにスフィアを使用する。また同じく劫火の姫の加護が輝き、強化が完了した。
どんな効果が付いたのか、早速見てみると。
「えと、強化効果とマイナス効果が1つずつ付くんだったよな」
「ああ。どんなだ?」
「いや、なんか強化効果2つあるんだけど」
Linkerの言葉に、進化カードとMLGは首を傾げる。
実際に装備して2人にも効果が見えるようにすると、その意味は理解された。
劫火の姫の加護に新しく付いた効果は、被ダメージ10パーセント減少と、装備者にターゲット集中効果の2つだった。
「これは……2個目がデメリット扱いなのかな」
「運がいいな、リンのジョブならむしろメリットじゃないか」
自身に攻撃が集中するのは職によってはデメリットだが、硬さが売りの職であるLinkerには、むしろそちらも強化である。
ここにきてようやく、劫火の姫の加護は装備する価値が生まれたという所だろうか。
「やったあーーーーーーーー!!」
Linkerは思い切り歓声を上げた。MSW内ではやたらと不運に見舞われていたが、とうとう幸運が巡ってきたのが嬉しかったようだ。
「俺もうこれずっと外さないでおこうかなー!」
「いやあ、それはやめておいた方がいいんじゃないかな」
なぜか、常に装備し続けるのはMLGに反対された。どうして、と聞こうと思ったLinkerだったが、その理由にはすぐ気付く。
ユニークアイテムである劫火の姫の加護は、装備すると紫色の炎が燃え上がるようなエフェクトが発生する。
希少なアイテムなので、当然それは他のプレイヤーの目を引く。
町中でガチャを回していたので、Linkerは現在多数のプレイヤーから視線を向けられていた。それはゲームの中とはいえ、相当なプレッシャーだ。
「……やっぱり、狩りの時だけにしておこうかな」
見られる事に慣れていないLinkerは、その視線に気が付くとすぐに外してしまう。
まあ狩り中は狩り中で他のプレイヤーに見られるのだが、そちらは今は考えないようにした。




