俺は普通に負けました。
その後、Linker達はひたすらモンスターを狩り続けた。
4騎士の圧倒的な強さがトラウマになったので途中他の国に所属したプレイヤーが来た場合は一目散に逃げ、見えなくなったのを確認してから再びモンスター狩りを再開する。
3人の時よりも効率がいいが、やはり作業である事は大きく変わらない。自然と別の事を考え、疑問が浮かんでくる。
「週末の4騎士ってネタ職業に就いてるんじゃなかったっけ」
そう、確か進化カードの話では、死神というジョブであったはず。名前の響きは強そうだが、それはネタ寄りの性能と言っていたのをLinkerは覚えている。
なのに、どうして同じくランカーであるベル・ウッドマンがLinkerらと大差なく一方的に殺されたのか、不思議に思った。
「まあ、まずはレベル差のせいかなあ、ボク今189なんだけど、あの人たち190後半だから」
「……そんなになくないです?」
「おっとリン、高レベル帯の数レベルの差はかなりのものだぞ」
MSWの最大レベルは現在200。しかしその最大レベルに到達したプレイヤーは今のところいない。
なにせレベルが180台に突入すると信じられないほどにレベルアップに必要な経験値が爆発的に増加するのだ。
今のMSWでは一番高レベルな狩場でも敵1体が10万前後の経験値しか出さないのに、180からはあたりまえのような顔をして兆単位で要求してくる。そして当然の権利のように倍に倍にと要求量は増えていく。
そんな仕様と引き換えと言うわけなのか180レベル以降はほんのわずかなレベル差でも与ダメージと被ダメージの増減の幅がすさまじいらしい。
進化カードから説明され、Linkerは納得する。
「へえ……」
「それから、私が倒される前に彼らの装備詳細を見たんだが、彼らはユニーク装備と呼ばれるものを身に着けていたようだ」
MLGの言葉に、ベルが頷きを返して肯定する。
「うん、彼らの装備してる大鎌、ハーヴェスト・ブルーだね。深夜12時から13時までの間にしか出現しない、職業と同名の死神を倒した時に落ちる可能性があるんだよ」
ちなみに、死神への転職条件がその死神を13体倒す事であるので、彼らが大鎌目当てに狩り続けたせいでその間誰も死神に転職できなかったという。元々なりたいと思う者も少なかったそうだが。
「ユニーク装備って、そんなに強かったんですか」
「うん……まあ、本当はね……」
聞いてくるLinkerから視線を逸らし、ベルは肯定する。
今は所持アイテム欄で腐って、もとい所持アイテム欄を温めている『劫火の姫の加護』も、本来はとても強いはずだったのだろうか、とifに思いを馳せてみたりする。
「それはともかく、ハーヴェスト・ブルーの強いとこは死神のジョブと性能がガッチリ噛み合わさってる部分なんだ」
死神のパッシブスキルには、自身のすべての攻撃に即死効果追加、というものがある。
まあ、PVPでの発動は期待できるほどでもない低さで、モンスターも死神に転職できる直後のレベルから極端に即死耐性が上がり、ボスには当然100パーセント体制がある。
明らかに罠ないし地雷と呼ぶべきなのだが、これは死神の他スキルの前提スキルでもある。これを最大レベルの10まで振らなくては死神は他の何もできない。つまり他の職業と比べてスキルポイント10ぶんのハンデを背負っている。
そんなハンデを乗り越えた先のスキルが有用かと言うと、そうでもない。攻撃スキルはカッコよさの面ではなかなかのものだが、そのスキルのために振らねばいけない別のパッシブスキルに問題がある。
即死効果発生時に全ステータス一定時間強化、というものだが、前述したように即死はまず発生しない。つまり死にスキルである。
有用なスキル自体がゼロというわけでもないが、その前提にいくつもの産廃スキルの取得を強要されるせいで、死神はネタ職であるとされているのだ。
だが、そんな死神にも一つだけ活路があった。それがユニーク装備、ハーヴェスト・ブルー。死神専用装備の大鎌であり、非常に高い攻撃力と固有の特殊効果が2つ存在する。
それが、「敵の即死耐性に応じて全ステータス強化」と「即死効果を持つ攻撃をした時二回攻撃する」というもの。
前者は敵に付与されている即死耐性1パーセントにつき1パーセントステータスが上がるというもの。つまりほぼ全ての敵に対して100パーセント近いステータスアップが見込める。
そして後者は完全に死んでいたはずの前提スキルを生き返らせる効果。ハーヴェスト・ブルー装備中は全ての攻撃が2回発動するのだ。
単純に考えても本来の3倍近い強さとなるわけである。並のプレイヤーが太刀打ちできるはずもない。たとえランカーでも4体1となればどうしようもないのだろう。
「ま、全部で50人しか手に入らないし、そもそもユニークアイテムなんて狙って出せるものじゃないから基本的に死神はネタジョブのまんまなんだけどね」
ははは、とベルは笑った。いつもの事なのか元より勝敗にこだわりがないのか、週末の4騎士に殺された事は気にしていないようだった。
まあ、あれだけ圧倒的ならなんとか打倒してやろうと思える気力もLinkerには湧いてこない。いっそ災害か何かだと思っていた方が楽かもしれない。
その後口数も増え、色々とあった戦争イベントだが、最終的には楽しく終える事ができた。
「さて。それじゃあボクはこの辺で。また何か困った事があったら呼んでね。できる範囲なら手伝うからさ」
「はい、今日はありがとうございましたベルさん」
深夜12時となり戦争イベント、シューティングスター・ウォーは終わった。
ランキングにまでは入れなかったものの、目標だった星の因子10万を稼ぐ事ができたLinker達3人は十分に満足だった。
最後まで付き合ってくれたベルにできうる限りの感謝を伝え、彼と別れた。まだやる事があるのかログアウトはせず、どこかに転送されていった。
エスティメス中央広場に残った3人は明日も学校。ログアウトしようとしたところで、MLGが思い出したように声を出した。
「あ、そうだ。これは君たちに伝えておくべきだったかな」
「ん? 何です、先輩」
「うむ、実は明日から夏条くんが学校に来るそうだよ」
「へぇ」
「おー、ようやくか」
「えっ、夏条が!?」
「軽いノリで言うから流しかけたぞ! それはマジなのですか!?」
「ああ。君らと因縁浅からぬというのを耳にしてな。明日から、できればこれまで通りに接してあげてほしい」
夏条涼。小門進太郎に恋して色々あって諦めさせたお嬢様。
2週間ほど前から姿を消した彼女がついに学校に現れると聞き、Linkerも進化カードも目を見開いて驚く。
MLGが肯定した事で、長い間いなくなったせいで自殺でもしてしまったのでは、という不安からも開放される。2人は喜びで抱き合った。
「良かったなあシン! 明日夏条と会ったら、恋人は無理でもせめて友達にはなってやれよ!」
「わかってるさ! ああ生きててよかった! なんだかんだ言っても俺結構怖かったよ!」
「はははは、その調子なら今までと同じように触れ合えそうだな。か、夏条くんの心配はいらなさそうかな」
満足そうに頷き、言うべき事を言い終えてかMLGはログアウトした。
Linkerも進化カードもそれに続くように落ちた。明日は遅刻するわけにいかない。
急にいなくなったのはどういう理由があったのか、夏条に聞くためにも朝一番に学校へ行って聞くつもりでいる。




