俺は4人の死神と出会いました。
ベル・ウッドマンがパーティインしてから、Linker達の狩り効率はすさまじいまでに上昇した。
ゲーム内ランキングに載るほどの猛者であるのだから当然と言えば当然なのかもしれないが、彼は敵の技をコピーして戦う事のできるトレーサーの力を存分に見せて、そして魅せてくれた。
「か、かっこいい……」
本人曰く弱いらしいが、敵の使う技を盗んで戦うというかなり素敵度の高い職業には、MLGも魅力を感じたらしく、感嘆の声を上げていた。
Linkerも以前ベルが使っていた技以外も見る事ができ、それらを自在に操り敵と状況によって使い分ける姿には改めて感動する。
まあ、それでもトレーサーを目指したい、とは思えないが。
「いいでしょー。ボクもこのジョブ大好きで結構やり込んでるんだよね。……っていうか、ランキングに載るほどやってるのボクだけみたいなんだけど」
「それは極めるのが難しい、という事でしょうか?」
「まず敷居の高さかなあ。掲示板とかで職業別スレッドとかあるみたいだけど、転職条件厳しすぎってのが1番多い不満みたいだし」
ちなみに2番は敵の技を覚えられる確率低すぎってとこで、3番はせっかく覚えても全部で10個までしか同時に覚えてられないとこだよ。とベルは付け加えた。
詳細を説明すると、敵を撃破した際に技を覚えられたかが表示されるらしいが、撃破時に習得の判定をするのではなく敵が覚えたい技を使ってきた時に判定しているそうだ。
そして習得確率は一番弱いモンスターの技であっても30パーセント。そこから凄まじい速度で確率が下がっていき、最終的に実用範囲の技はどれもこれもゼロがアホほど付いているそうだ。一部ではユニークアイテムで装備全部埋めた方が楽だろ、との声まで上がっているとか。
更に上述の通り、どれだけ苦労して覚えられたとしても計10個までしか覚えていられないのだ。つまり覚えるつもりのない技を使ってくる敵と戦っていると、勝手にそれを覚えてしまう可能性がある。
しかも、どれを忘れるかの選択ができないらしい。覚えたのが一番古い順に自動的に消されてしまうのだ。
どちらもとんでもない仕様ではあるが、それを差し置いて転職条件が一番面倒と言われる辺り、いかに以前自分が聞いた条件が酷なものなのかを物語っている。
そりゃあ不人気にもなるわとLinkerは思った。というか言葉を選ばず言ってしまえば産業廃棄物か何かなのではないかとも。
「ううむ、そう言われるとその転職条件とやらが気になってしまうな。……ベルさん、よろしければお教えいただいても?」
「うん、いいよ。まずはね……」
しかしそれでもMLGの興味は失われないらしく、トレーサーの転職条件をベルに聞き出そうとしていた。
ああまたあの長いやつ聞くのか、とLinkerが観念するも、ベルはその先を紡がなかった。
「ベルさん?」
「リン、やばいぞ。来やがった」
ベルではなく、進化カードが応える。
何の事かよくわからなかったLinkerだが、見ればベルも進化カードもMLGもどこか一点を見つめている。
釣られるようにLinkerがその視線の行き先を追いかけると。
「あー、そういえば今日って日曜日だったもんね。戦争イベで会うのは久しぶりだなあ、何か月ぶりだっけ」
「……なるほど、彼らが以前リンくんとシンくんの言っていた」
全身を雪のように白い装備で覆った、髑髏の仮面を付けた死神。
全身を血のような赤い装備で覆った、髑髏の仮面を付けた死神。
全身を闇のように黒い装備で覆った、髑髏の仮面を付けた死神。
そして全身を血の気が抜けたようなおぞましい蒼の装備で覆い、髑髏の仮面を付けた死神。
その4人は他者を震え上がらせるようなオーラを放つ、見るだけで理解できるほどに圧倒的な強者。
ホワイトライダー、レッドライダー、ブラックライダー、ペイルライダー。黙示録に登場する4騎士の名をそのまま使った彼ら4人のプレイヤー名は、赤色であった。
敵国に属している事を示す彼ら4人。見まごうはずもなかった。なにせつい最近Linker達は彼らの話をしていたのだから。この戦場で出会う事もわかっていたのだから。
「週末の4騎士……!」
「……なあシン、やっぱその名前だとイマイチ締まんなくないか」
のんびりした響きのギルドに属する死神を前に、Linkerは我に返って呟いた。




