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俺はVRMMOで男と結婚する事になりました。  作者: カイロ


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30/72

俺は死にました・・・・・・ゲームで。

「……わかってたと言えばわかっていた結果なんだけどなあ」


 戦争イベントマップ内に湧くモンスターを3人で狩りながらLinkerは愚痴る。

 通常のマップに存在するモンスターとは比べ物にならないほどHPの高く設定されたそれは3人がかりであっても1体倒すのに相当時間がかかる。星の因子は確実に多量に手に入るのだが、長々と続けたせいで本当に効率がいいのかわからなくなり始める。

 あずき蕎麦ちゃんに殺された後も何度か他のプレイヤーに勝負を仕掛けたが、誰も彼も100を超えたレベル帯であり、勝負にならなかった。

 いっその事自分らよりも下のレベルのプレイヤーを狙おうともしたが、そういうのは150後半台のプレイヤーとパーティを組んでいたため、考えただけで中止した。

 周りの他のプレイヤーを見てようやく3人は気付いたのだが、どうやらこのイベントは2桁レベルの初心者は3桁レベルの強いプレイヤーとパーティを組んで敵を倒すのが効率がいいようだ。

 一人で参戦したらしい初心者には高レベルプレイヤーが積極的にパーティ加入を勧めてるし、ソロで挑んでいるのは先ほどのあずき蕎麦ちゃんのような超強力な廃人ばかりなのだろう。

 一人ぼっちのプレイヤーを助けて一緒に楽しもうとする民度の高さは称賛されるべきであるのだろうが、今のLinker達にはそれが効率の悪さに拍車をかけている。

 3人パーティを組んでいるLinker達は彼らの救済対象ではないのかパーティの空いてる枠が足りないのか、他のプレイヤーから声をかけられる事はなかった。


「声をかけてもらえないなら、いっそこっちから声をかけてみるべきか……」


 このまま3人で狩っても目標の因子の量まで到達できない。そう思ったLinkerはレベルの高いプレイヤーをパーティに誘おうかと呟く。


「リン、知らない人に自分から話しかけるの苦手じゃなかったっけか」

「……まあ、そうなんだよな」


 パーティ勧誘を選択肢に上げながら、Linkerは話しかけるのが不得手であった。

 何を言えばいいのかはなんとなくわかるのだが、一番最初になんと声をかければいいのかわからない。

 当たり障りなくこんにちは、とかどうも、と始めればいいのかもしれないが、聞こえなかったり、意図的に無視されたらどうしよう、という考えが浮かんでしまう。

 そこをなんとかできても、会話の立て直しができない。事前にこういう流れの会話にしようと想い返事をいくつか考えておくが、想定していない方向に話が進んだらおしまいだ。

 ある程度親しくなればそうでもないのだが、自分から話しかけた上にまるで知らない相手となると度々失敗する。

 自分でもそれを欠点だと理解しているし、過去を振り返れば、これが原因だったのかもな、と考える事もある。


「そういうわけでシン、頼んでいいかな」

「ふっ、こう見えても他人と話すとガッチガチに緊張してな」


 進化カードは不敵に笑った。そんな自慢気に言えたもんでもないだろうに。Linkerも人の事は言えないが。


「じゃあ、先輩」

「どうしてもと言うなら考えるが、しかし一言喋るたびに私の個人情報が漏らされるような気がして、怖いからな……」

「俺らはそんな事しませんよ……」


 月光門はどうかと聞いたが、こっちはこっちでトラウマを抱えている様子で駄目だった。

 結局、提案者であるLinkerを含め、誰一人他人と話せる人材がいない事を確認しただけとなってしまう。

 いっそあずき蕎麦ちゃんの所へ戻って、駄目元でパーティを組んでもらえないか聞いてみようかとも考えるが、話しかける前に魔法でまた殺される気がしたので頭の中で即却下する。


「これは地道に狩っていくしかないって事かな……」

「あれ、Linkerくんじゃないか、よく会うね」


 溜息を吐いたと同時、Linkerを呼ぶ声がした。つい最近も聞いた声だ。

 声の方を見ると、全身鈴まみれアバターのベル・ウッドマンが手を振っていた。


「ベルさん!」

「やあ。進化カードくんに……そっちの子は前に言ってた新しい友達かな」

「MoonLightGateです」


 ようこそMSWへ、と言ってベルはMLGに優しく笑いかける。

 そして、そんなベルをよく見れば、誰かを引き連れている様子もない。どうやら、ソロのようだ。


「あの、ベルさん、今日は一人なんですか?」

「うん。いつもはおじさんと一緒に組んでるんだけどね、今日は娘さんと奥さん連れて遊園地行くっていうからね」

「結婚してるんだ……」


 ランキング1位で、あんなアバターをしているから、てっきりリアルでもあんな感じなのかとLinkerは勝手な想像をしていたが、それを聞いて脳内でモロダシおじさんに謝罪する。いやリアルでモロダシだったらそれはそれでおかしいのだが。

 それはともかく、一人であるならLinker達には好都合だ。まさに救いの手と表現するのがピッタリだろう。


「それはともかく、ソロなら話は早いです。ベルさん、俺達とパーティ組んでもらえませんか?」


 ベル・ウッドマンはいい人だ。わざわざ有料のアイテムを使ってまで見知らぬ初心者を助けてくれるのだから。

 その実力だって折り紙付きである。ここで出会ったのも何かの縁と、勢いに任せパーティ参加を申し込んでみる。


「うーん、君らの事も知らない仲ってわけじゃないけど、ボクは基本ソロのが気楽だからなあ」


 予想に反して、芳しくなかった。

 まあ、Linkerの頼みは聞き方によっては強者のおこぼれを貰い、美味い汁だけ啜ろうとしているような、いわば寄生させてくれと言っているのに近い。寄生行為を快く思う人間など少ないし、仕方ない面もあるだろう。

 それに良い人で強いからといって頼ってばかりというのも良い事とはとても言えない。それが正しい時もあるのかもしれないが、Linkerはおとなしく引き下がる事にした。


「そう、ですね。それじゃ、俺達は3人でなんとか頑張ってみます」

「そっか。それじゃあ、またどこかで会えるといいね」


 言って、ベルは優しく笑って走っていく。

 それを見ながら、進化カードもMLGも唸っている。


「うむ、彼は強い、のかな。まあそれにばかり頼るのはよろしくないだろうが、どうしたものかな」

「やはり地道にモンスター狩り、って所なんですかね。しかし困ったな、そうなると今日で10万も星の因子を稼げるかどうか」

「そう言うなって。ベルさんに頼れなかったのは残念だけど、それなら俺達は俺達なりに……あれ」


 二人を納得させようと口を開いたLinkerの視界にはベルは映っている。だが、彼はいつの間にか走り去って行くのをやめ、こちらへ向けて全力疾走していた。

 開いていた距離は一瞬で埋まり、ベルは3人の前に戻ってきた。


「な、なんだきみ達困ってたんだ。それならそうと言ってくれれば、ボクも協力したのに」

「え、でもさっきソロの方がいいって」

「言ったけどー! 言ったけどボクは初心者が困ってるならお手伝いしてあげたいから! ホントに遠慮しなくっていいからね!」

「は、はい……」


 困った、というこちらの呟きが耳に入ったのか、ベルは突如意見を反転させ、Linker達に協力すると宣言した。

 しかしそこまでせずとも、とLinkerは遠慮気味なのだが、ベルはまるで聞く耳を持たない。

 初心者の心強い味方であるというのは間違いないだろうが、正直申し訳ないので今後は彼に頼らずとも済むように早くレベル上げをしようと思うのであった。

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