俺はシュウマツの4騎士の噂を聞きました。
戦争イベント、シューティングスター・ウォー開幕までの5日間、Linker達はひたすらレベル上げに勤しんだ。
学校が終わると同時に帰宅し、深夜12時まで狩り続ける。常に3人で戦い、3倍の速度で経験値が貯まっていく。
獲得経験値が少なく感じ始めたら新しい狩場へ行き、敵を狩る。そんな生活を続けて戦争前夜、Linkerはふとある事が気になった。
「そういえば、月光門先輩は生徒会の仕事はいいんですか?」
ひたすらに狩りをした結果、3人のレベルは揃って65まで上がっていた。80レベルが目前である。
そう、MLGもまたLinkerや進化カードと同じく、学校が終われば即家に帰りMSWでモンスターを倒し続けた。
しかし月光門あかりは生徒会長である。生徒会としてやるべき事があるだろうし、もしかしたらそれらを放り出して遊んでいるのかもしれない。
それはよくない。Linkerはあくまで気晴らしにとMSWを勧めたのであって、仕事を投げてまでのめり込むのは……そう思ったが、MLGは首を振った。
「うん……少し言いづらいのだがね、実は生徒会の仕事は私がいない方がスムーズなんだよ」
「えっ?」
Linkerはその返答に困惑する。いない方がスムーズとはどういう事だろう。進化カードは「あぁ……」と理解したように唸るが、Linkerはわからなかった。
「ほら、君たちを生徒会室に呼んだ時、親衛隊の彼女らが部屋にいただろう? ……業務の為に生徒会室に行く時も、あんなふうに部屋を埋め尽くして、他の生徒会メンバーを追い出して業務をストップさせるんだよ」
言われて、親衛隊連中は誰も月光門に近付けた事がないとか言っていたのを思い出した。まさか本当にそこまで徹底的にやっていようとは。
というか、流石にそこまで横暴な行いをしていれば退学させられたりしていてもおかしくはない。不思議に思ってLinkerは当事者に聞いてみる。
「そこまでムチャクチャやってるなら、退学になってもおかしくなさそうなんですけど」
「いや、彼女たちも悪気があるわけではないんだよ。その辺りはちゃんと私が先生方に説明しているから、なんとか」
不思議を生み出していたのは本人だった。
慈悲深いと言えばまあそうなのだろうが、ここまでくると本当に親衛隊から解放されたいと思っているのか疑問さえ出てくる。そうでなければ、堪忍袋の緒が鋼鉄か何かでできているのだろう。
「とまあそういう訳で、私は生徒会長でありながら基本的な仕事は副会長以下に丸投げというわけなんだ。誇れた話でもないが、「まぁ会長の朝の食事から下着の色まで聞きながら仕事するよりは……」と皆率先して私の仕事を片付けてくれてね……、正直生徒会に私の居場所があるかと言うとね……」
雲行きが怪しくなってきた。MLGの声のトーンが下がったのをいち早く察した進化カードは別の話題をぶつけて路線を変える。
「そ、その話はこのあたりにしてだ。……攻略サイトを見ていて知ったんだが実は今度の戦争、週末の四騎士が参加するらしい」
「し、終末の四騎士……!?」
終末の四騎士と言えば、黙示録に登場する4名の騎士の事だろう。
白い馬に乗ったホワイトライダー、赤い馬に乗ったレッドライダー、黒い馬に乗ったブラックライダー、そして青ざめた馬に乗ったペイルライダーの4騎。
当然そんな恐ろしいものがオンラインゲームなんぞで遊んでいるはずもない。単に名前を使っているだけなのだが、進化カードがわざわざ名前を出したからには相当の実力者であるのは間違いないだろう。
「いや、週末の四騎士な」
「ああ誤字じゃなかったんだそれ……」
週末の四騎士と言えば、一体なんの事なのだろう。
まあ、名前から考えれば4人なのは間違いないのだろうが、正直ものすごく弱そうに聞こえて仕方がない。
「週末の四騎士、と言うからには、やはり日曜にだけ姿を現すという事だね」
「ええ。ギルド週末の四騎士に所属するのは4人。そして指摘の通り日曜日にだけログインするんです」
MLGと進化カードはノリノリで話を進めるが、Linkerはいまいちついていけなかった。名前の響きはかっこいいのだが、漢字が違うだけでこうもアホくさく思えてしまうとは。
「いや、でも週イチでしかやってないならそんな強くないんじゃないの?」
「俺も最初はそう思ったんだがなあ、ところがどっこいとんでもなく強いそうだ」
いくらネトゲ廃人といえど365日毎日プレイしているわけでないにしても、仮に初期からプレイしていたとしても、それらに対して最大で7分の1しかプレイできていない事になる。ならば強さもそれほどではない。Linkerはそう思った。
しかし、彼らは全員若干ネタ寄りの性能である職業の死神で統一し、それでいながら常にギルドランキング10位以内に入っているのだという。
ランキング掲示板で確認すると現在のランクは5位。ギルドメンバー数も名前の通りに4人。
どんなプレイスタイルなのかは不明だが、それを見ただけで十分に彼らが強者であるとLinkerにはわかった。
ランキング内の他のギルドはどれも定員いっぱいまでメンバーが入っている。軽く10倍を超える人員の差を7日に1度のプレイで抑え込みランクインしているのだ。
ある程度オンラインゲームに親しんだ人間であれば彼らがある種の尊敬するべき存在だとすぐにわかる。間違いなくまともな仕事をせず、すべての情熱をゲームに注いだ者である事は想像に難くない。
「つまり、敵にだけはしたくないタイプだよな」
「だな。同じ国に所属してくれるのを祈るばかりだ」
LinkerがMLGの方を見ると、曇りかけていた表情は完全に消え、意識はまだ見ぬ強敵に向けられているようだった。
「うん……そんなに強い人を私たちが倒せたら、さぞ気持ちいいだろうね」
艶のある声でそう言われ、Linkerは反応に困った。
MSWをプレイ中、たびたび本性……もとい隠れた感情が目覚めるMLGを見ていると、自然と彼女の周囲に親衛隊が生まれるのはただ単に類が友をなんとやらなのではないかと思うが、友達をあまり悪く言うものではないのでLinkerはその想いを心の中にだけとどめておく。
「えっと、さすがにレベル差ありまくりですし、無理じゃないですかね」
「そうなのか……」
しゅん、と残念そうにMLGはうなだれた。
まあ、強敵が参戦しようと何であろうと、明日は戦争だ。
せめて次のストーリーを勧められるだけの星の因子が手に入る事を祈って、Linker達はログアウトするのだった。




