表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
41/60

職人チーム

 「なんでしょうか?テルさん。」


 自己紹介の時はカチコチに緊張していたテルだが今はセリカをまっすぐ見据えている。


 「俺はエツリア王国の政策のせいで国から逃げ出して来る事を余儀なくされた。だから国というものを信じてなかった。でもセリカ様。あなたの作ろうとしているこの国の事は信じてみたいと思わされました。」


 「ええ、期待には応えるつもりですよ?」


 セリカもまたテルをまっすぐに見据える。


 「近々この近辺が戦場になりそうだと聞きました。俺はユキとこの街を守りたい。守るためなら俺は秘匿していた能力を使う事に躊躇しないでしょう。」


 「……」


 「俺の能力が明らかになればエツリアはもちろん、敵対しているカムリ公の勢力やバンドー皇国のみならず、セリカ様。あなたですら俺を取り込み利用しようとするかも知れない。」


 「テルさん。」


 「は。」


 「あなたの能力がどのようなものかは知りません。ですが、その力を大切なものを守る為に行使するというならそれは尊い事です。見事、この街と民を。そして愛しき者を守り切って見せなさい。そして、あなたがこの国の民である限り私があなたを守りましょう。」


 セリカの視線と言葉には魂が籠っているかのようだった。女王の覚悟や決意、そして民を守らんとする自らに対する誓い。それを肌で感じたテルはにセリカを信じて戦う事を決めた。


 テルとユキはアイコンタクトを取るとセリカの前に進み出て臣下の礼を取る。


 それを見たセリカは無言で頷き、なにやら書状を認め始めた。


 「カズト、ライム、あなた達も署名を。」


 そしてその書状をテルに手渡す。


 「「これは!?」」


 《オーシュー王国冒険者テル、並びにユキの2名に危害を加えようとする輩は何人たりとも許さぬ事をここに記す。》


 上記の内容にセリカ、カズト、ライムの3名が署名してある。


 「何かの助けにはなるでしょう。困った事があれば頼りなさい。」


 「「はっ!!」」


◇◇◇


 俺はモーリス。この街で工房を構えるドワーフの職人だ。今日は朝も早くからウチを贔屓にしてるテルって冒険者が珍客をわんさか連れて来やがった。なんと、女王陛下だぞ?いや、流石の俺様も開いた口が塞がらないってヤツだ。しかしな、その女王陛下の連れってのがまたぶっ飛んでやがった。


 「俺はガイアってんだ。宜しく頼むぜ。」


 「アタシはローレルってんだ。悪いけど邪魔するよ。」


 なんて事だ。ドワーフとエルフが一緒にいやがる。いや、俺個人は別にエルフに対して思う所はねえ。ただ嫌味なヤツが多いなってくらいなもんだ。だが、職人の目線で見た時に俺はまだまだ世の中を知らなかったって事を思い知った。


 「この杖をあんたら2人で仕上げたってのか?元々がマジックウェポンなんだろ?」


 そう、この2人は共同作業をする事でエルフだけでもドワーフだけでも到達し得ない高みへと上り詰めたんだ。2人が手掛けた杖はとんでもない出来栄えだった。多分国宝級じゃねえのか。


 この2人はテルとユキの装備品にエンチャントを掛けるとかで俺の工房を借りに来たらしい。これはすげえ。この俺の『作品』にこれだけの職人がさらに手を掛ける。俺はどうしても作業を見たかった。


 「見てるだけでいいのかい?よかったら一緒にどうだ?」


 渡りに船だった。


 俺も自分の腕にゃあ自信があったがこのガイアって職人からは学ぶ事がまだまだ多かった。技術だけじゃなくて発想とかもな。


 このエルフの姐さんもすげえ。こんな複雑な術式を複数重ね掛けなんて一体どうなってやがるんだ。自分に無理な事を出来る奴と一緒に仕事するってのはこんなにも刺激的な事だったんだな。


 「おい、テル、ユキ、興が乗って来た!お前らの装備品おいていけ!ちょっと面白くしてやらあ!」


 「「面白く!?」」


 テルとユキがなんか心配そうなツラしてやがる。なんだ?そんなに俺が信用できねえってのかよ。


 「テル、だったよな?アンタ、身のこなしから察するに近接格闘もやるんじゃないのか?大丈夫、かっこよくしてやるから任せておくれよ。」


 テルの野郎、エルフの姐さんの言う事にはあっさり従いやがった!?ちくしょう、覚えてやがれ。とびっきりのネタ装備に…いや、素敵装備にしてやらあ。


◇◇◇


 「本当に、何から何まで済まないな、カズトさん。」


 テル達は職人チームの仕事が終わるまでカズト達と雑談で時間を潰していた。


 「ん?ああ、気にするな。使い道が無かった道具が腕利きの冒険者の手に渡り、しかもその冒険者は俺達の側に立ってくれる。結構な事じゃないか。それに、職人たちも面白い仕事が回って来て張り切ってる。いい事尽くしだよ。」


 カズトはそのようにあっさりと言う。本当に言葉の通り、それ以上でもそれ以下でもないのであろう。


 そんな時、エルフの職人ローレルがカズトを呼びに来た。


 「おーい!カズー!出来たぞー!」


 無邪気に手を振っているローレルを見て、エルフとは人付き合いをあまり好まない種族だというイメージが崩れ去っていくテル。


 「思ったより時間が掛かったな…」


 「やっているうちに面白くなって注文と違う仕様になってたりするのではないですか?」

 

 疑問に思うカズトに返したセリカの言葉を聞いたカズトは『ありそうだな』とでも言いたげな微妙な表情をしていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ