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高性能アイテムの代償

 ダンジョンドロップ品の武具や装備品の説明をされ大凡の目ぼしを付けたテルとユキに、おそらくパーティメンバーであろう美麗な容姿のエルフと筋骨隆々のドワーフがやって来た。エルフとドワーフが同じパーティにいる事自体、大概デタラメな事柄である。大事件と言ってもいい。それほどこの世界でのエルフとドワーフは種族レベルで険悪な間柄なのだ。


 「なんだい?ビートが呼びに来たんだけど?」


 「おう、いきなり人型になりやがるモンだから宿の親父と娘が目ぇ回してたぞ?」


 ビートという黒猫に呼ばれて来たというローレルというエルフとガイアというドワーフ。だがテルとユキの前に現れたのは黒い髪と褐色の肌を持つ美しい女だった。但し、頭には猫耳、尻には二股に分かれた尻尾があった。


 「おいビート、あんまり悪戯するなよ?」


 「「え??」」


 テルとユキの勘違いでなければ今カズトはこの褐色の美女に対して『ビート』と呼んでいた。


 【私はケットシー。カズト様の眷属ですの。宜しくお願いしますわ。】


 「「あ、はい、えっと。よろしく?」」


 カズトがローレルとガイアを連れて来たのはテルとユキの装備品にエンチャントを施す為らしい。2人共モーリス謹製の革のグローブを使っていたがそのグローブに空間収納と状態保存のエンチャントを施すとの事だ。

 どこか知り合いの工房がないか尋ねられたので明日モーリスの工房を紹介する事にしたテル。一応、エルフが一行にいる事は事前に言っておいてくれと念押しされたテルだったが、なんとなくモーリスならエルフの事など気にしないような気がしていた。


 (俺やユキみたいな得体の知れない人間に良くしてくれるんだ。大丈夫だろ。)


 


 「俺はこれを頂くよ。」


 数あるダンジョンのお宝の中からテルが選んだのは『疾風の脛当て』というものだ。上等な魔物の革で作られた脛当てで、前後2つのパーツに別れていて脛だけでなくふくらはぎから踵、足の甲までガードするレガースだ。ライムが言うには風の加護で脚力上昇の効果があるという。


 「ユキは忍びなんでね。一緒に行動するには常人離れした脚力、跳躍力が必要なんだ。」


 ユキの方はさして気にしていなかったのだがテルの方はユキの疾走や跳躍に着いて行けない場面があるのを心苦しく思っていたようだ。


 一方のユキはと言うと。


 「私はこれを頂いても良いだろうか?」


 ユキが選んだのは『風盾鉢金』。鉢巻の額の部分に金属で補強がしてある。なんと言うか、忍びのユキにはぴったりの品だ。これの効果は読んで字の如く、自分の周囲に風の防護障壁を展開する能力があるとの事だ。


 さっき会ったばかりの自分達にこれほどの施しをしてくれるこのカズトという男。テルは自分の事などすっかり棚に上げてカズトに放った一言。


 「なんだか悪いな。会った事もない俺達の為に。」


 見事にブーメランとなって返って来た。


 「あんただって見ず知らずのユキさんを助けたんだろ?俺だって同じだ。同郷のよしみって事もあるが、あんた達にはつまらない死に方はして欲しくない。」


 そこにユキから意外な内容の援護が入る。しかし援護と同時にテルに反省を促す内容でもあった。


 「ここは素直に感謝しよう。しかしカズト殿。過ぎたる施しを受ける方の事も少しは考えた方が良い。恩を受けた者は恩を返そうとする。しかし受けた恩が大きすぎるとどうやって恩を返したらよいのか分からなくなるのだ。私がテルに受けた恩は生涯をテルに捧げる程のものだと思っているがテルはそれを全く分かっておらん。どうやらカズト殿もテルと同類のようだ。」


 そう言い苦笑するユキ。言われたカズトも苦笑する。


 「そうだな。だがそれはただでくれてやる訳じゃない。」


 この後カズトから発せられた言葉は。


 「それであんた達はこの街を。この国の民を。セリカの国を。そして自分自身を守ってくれ。それが恩返しだ。」


 そのあまりに大きく重い恩返しの内容にテルとユキは思わず顔を見合わせ…


 「ぷっはははは!こいつはとんでもなく難易度の高い恩返しになっちまったな。」


 「そうだな!まさか命懸けの恩返しになるとは思いもしなかったよ!」


 「タダより高いものはないってね!カズにぃ?」


 「なっ!?おまっ!心の中が読めるのか?」


 そんなふざけたやりとりをしていたテル達だったが、視線の先にこちらに近付いてくるセリカを認めるとテルがなにか覚悟を決めたような、そんな顔つきになった。


 「セリカ様。それにカズトさん。」


 これから自分の人生を左右する、まるでセリカに決闘を挑むかのような決意がテルから感じられた。


 

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