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探り合い

 「お前を見てるとな、いや、そっちのお嬢さんもなんだが…デキるヤツがわざとデキないフリをしてるようにしか見えないんだわ。」


 「…買いかぶりですよ。」


 まあ、そう来るよな、とゼマティスは思うがギルドが調査したテルの素性は放っておけるものでは無かった。


 「一応、ギルドの構成員のプライベートってのは一般には公開されないんだが…ギルマスクラスになると話は別だ。」


 (俺の素性はバレバレか)


 とテルは溜息をつく。


 「お嬢さんの方は皆目見当もつかねえ。お手上げだな。だがお前さんの方は…」


 調べれば分かるか、とテルも納得する。何しろ頬に傷などと言う目立つ特徴があるのだ。


 「1年程前にエツリアの貴族一家が変死する事件があった。死者24人。心当たりは?」


 「………」


 ユキは心配そうにテルを見つめている。


 「こっちの情報では辺境伯の長男が行方不明ってことになってる。同時期にエツリアからこっちに流れて来た男がいるんだが…」


 ゼマティスはテルの左頬にちらりの視線をやり、


 「その男は左の頬に2本の傷痕があったってな。しかも辺境伯の息子、お前さんと同じく左頬に傷痕があったらしい。」


 「……すごい偶然ですね。」


 テルは動じた風ではない。しかし心中では(詰んだかな。)と思う。


 「だーかーらー、そんなに警戒すんじゃねーって。いいか?別に俺はお前さんをとっ捕まえてエツリアに差し出そうってんじゃない。むしろその逆だ。」


 テルは目の前の男の真意をはかり兼ねていた。


 「では、逆に俺達を保護するとでも?」


 「ま、平たく言えばそう言うこったな。何故力を隠しているかはわからねえが、その隠された力とやらが何なのかはどうでもいい。個人的には興味はあるがな。」


 ゼマティスはいい笑みを浮かべながら続ける。


 「お前がいい仕事するってのも分かったてた事だし、今までソロに拘ってたお前がそこのお嬢さんを相棒にしてるんだ。それなりの信頼関係を築けたんだろう。いい事だな。そして、お前が辺境伯の息子だってんならわずか15歳にして20人以上の兵士騎士を制圧出来る腕利きって事だ。こんな逸材を他国に売り渡すなんて考えられるか?ん?」


 「俺がエツリアの貴族の息子だとして、なぜ凶行に及んで国を脱したかは問わないんですか?」


 ゼマティスは先程の笑みを消し去り真剣な眼差しになる。


 「エツリアから逃げて来る人間は少なからずいる。その誰もが魔法の資質が無い連中だ。お前さんもそうなんじゃないのか?特に貴族の令息が魔法を使えないんじゃさぞかし肩身が狭かろうぜ。しかしな、さっきから言ってるがそんな事は重要じゃない。お前がこの街から出て行くのは大きな損失だ。お前にはこの街を好きになって貰いたいのさ。」


 「俺はこの街が好きですよ。」


 テルとしては心からそう思っている。


 「いや、違うな。例えば俺がここでお前に、いや、そこのお嬢さんに不利益になる提案をしたらお前は今すぐこの街を捨てるだろう?」


 ふむ、とテルは考え込む。流れ者の自分を受け入れてくれたこの街には感謝している。だが…


 「そう、かも知れませんね。そこまで絆されてはいない。」


 ここでユキが言葉を発した。


 「今から私達の秘密を話そう。貴殿の言葉が嘘か真か、貴殿の反応を見て判断させて頂こう。特にテルは簡単に他人を信じられる人生を歩んで来ていないのだ。」


 「ユキ!?」


 「いいではないか、テル。この御仁が私達の話を聞いて、それでもこの街に留まらせたいと言うならよし、敵対するなら逃げるまでだ。」


 確かに2人なら【能力】を使えば逃げるくらいは造作もない。


 「わかった。俺が話すよ。ユキは俺の手を握ってて。」


 いざという時に瞬間移動(テレポーテーション)で逃げる為だがなぜかユキは頬を桜色に染めながらぎゅっと指を絡めて手を握る。


 「一応断っておきますがこれは他言無用に願います。」


 「ああ。誓おう。」


 ゼマティスから一応の言質を取ってテルは話し始める。前世の事から転生の事。自分のユニークスキル【超能力(サイキック)】の事。そしてユキが自分の前世と同じ世界からの転移者である事。


 衝撃の事実を明かされたゼマティスはと言えば。


 「ふーん?なるほどなあ…。確かに明るみに出れば国が動くだろうな。しかもエツリアも黙っちゃいないだろうな。」


 ((思ってたのと違う!))


 テルとユキの反応だ。何しろゼマティスは笑いをかみ殺しているのだ。


 「いいじゃねえか、ユニークスキル。羨ましいぜ?しかしまあ、秘匿していたのは正解だな。強すぎる力は妬みを買うからな。だが、それもあと少しの辛抱かも知れん。」


 「どういう事です?」


 ここでゼマティスはテル達にとって驚愕すべき事を言い始めた。


 「王都で最近政権交代があったのは知ってるだろ?王女だったセリカ様が国王を打倒して新しく女王になった。」


 「ええ、何でも貴族主義を撤廃させる為に立ち上がったとか。」


 「このウフロンとウリアはそうでも無いが、他の領地では貴族の平民差別が酷くてな。まあ、エツリアの魔法至上主義となんら変わらないのさ。このオーシュー王国もな。」


 「……」


 「それでだ、セリカ様は勇者召喚をされたらしいんだが、その時に召喚されたのは青年と少女。どちらもお嬢さんと同じ黒髪黒目らしい。案外、お前らと同じ世界から呼び出されたのかも知れねえなぁ。」


  

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