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ゴブリンの巣

本作品は『いや、自由に生きろって言われても。』のスピンオフ作品です。

 翌朝、テルとユキは朝寝坊もせず早い時間からギルドで依頼を探していた。


 「あ、テルさん、ユキさん。おはようございます。」


 いつもの受付のお姉さんである。


 「あ、おはようございます。どうですか?ゴブリンの件は。」


 「ええ、ギルドから調査依頼が出ます。今から依頼表を掲示するとこなんですよ。」


 「あ、それ、見せて貰っていいですか?」


 テルは受付嬢から依頼表を受け取り目を通す。内容はゴブリンの集落の有無。集落発見の場合は場所、規模、構成等可能な限り調査し報告する事。


 「これ、俺達が受けます。」


 依頼に関してはユキは全面的にテルに任せている。テルとしてはユキが飛ばされて来たあの森をゴブリンの件を抜きにしても調査したいと思っている。他の冒険者に荒らされる前に。


 「はい、受付けました。くれぐれも気をつけてくださいね?」


 「ああ、ありがとう。それじゃあ行ってきます。」


 こうして依頼を受けた2人はムスタングに乗り込み森へ向かった。


 


 「ユキが襲われていたのも昨日もゴブリンと出くわしたのはこの辺りだったが…」


 「うむ。確かにこの先で目が覚めたのだ。」


 「しばらくうろついてみよう。ゴブリンが出たら1匹逃がして追跡だ。」


 「わかった。」


 こうして2人は何をするでもなく森の中を散歩気分で探索していたが。


 「やはり集落はありそうだな。」


 簡単にゴブリンと遭遇した。今日は4匹。最初の1匹を斃した所で残りの3匹が戦意を喪失し逃げ出した。3匹全部が同じ方向に逃げて行く。


 「…何というか…分かりやすいな。」


 ユキが呆れ気味に言う。ゴブリンは中途半端に知能が高い。仲間の元へ逃げかえれば自分達は助かる。そこまでは知能が回るが全員で同じ方向に逃げれば棲み処が割れる、そこまでは知恵が回らない。もしこれが3匹とも陽動だったらゴブリンはもっと恐ろしい魔物になっていた事だろう。


 「それじゃあ追うか。」


 「私が行こう。これでもこういう仕事は本職なのでな。」


 言うなりユキは音も無く走り去って行った。テルはムスタングに揺られながら速足程度のスピードで進む。周囲にユキが転移して来た際の手掛かりになる物はないかと注視しながら進んでいると、草叢から何かに反射したようにキラリと光るものがある。


 「なんだろう?」


 ムスタングから降り何かが光った周辺を探してみると。


 「これはまた…ユキの物かな?」


 見つかったのは十字手裏剣だった。忍者と言うのは後世の創作物で、現代日本人が想像するいわゆる忍者というものの存在を疑問視する声は多い。だが実際にユキという存在と触れ合い、ここに手裏剣などという『証拠』を発見するとテルも日本男児だ。感慨深いものがあった。


 (やっぱり本当にいたんだなぁ…)


 そんな風に男のロマンに浸っていると、木の上からユキが降ってきた。


 (おお!忍者っぽい!)


 キラキラした少年の目でユキを見つめるテル。


 「うっ!ど、どうかしたのか?」


 「はっ!?いや、ユキの忍者っぷりに見惚れてしまって…」


 「ふふふ、おかしなテルだな。それより、集落を発見した。」


 やはりか。


 「この先に廃村らしき場所があった。かなり昔に廃れた集落なのだろう。廃村と言うよりは『遺跡』や『遺構』といった方がいいかも知れないな。そこにかなりの数が認められた。恐らく100は超えているだろう。肌の色が違うものや体格が大きいものもいたようだ。」


 ゴブリンの上位種がいる事はこれで確定だ。迂闊に手を出すべきではないだろう。テルはそう判断して撤収をする事に決めた。


 「戻ってギルドに報告しよう。討伐クエストが出るはずだ。」


 「万全を期して確実に殲滅するのだな?」


 「そう言う事。さ、乗って。」


 2人はムスタングに跨りギルドへと戻る。


 「そういえばさ、ユキ。これを見つけたんだ。ユキの物かい?」


 カバンから先程の手裏剣を取り出しユキに手渡すテル。


 「…! テル。これはどこで?」


 「ああ、もうすぐだ。そう、そこの茂みの中だ。」


 ユキは暫し考え込む。


 「…私が飛ばされて来て意識を取り戻し場所は少し離れた所だった。そしてこれは加藤段蔵が使っていた手裏剣だ。」

 

 (ユキ以外も飛ばされて来ている可能性もあるって事か…)


 面倒な事にならなければいいが、と思うテルだが今はゴブリンの件がある。


 「まあ、今は考えても仕方がない。ギルドへ急ごうか。」


 そう言いムスタングの速度を上げて街へと急いだ。


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