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往来でいちゃつくキミ達も悪い

本作品は『いや、自由に生きろって言われても。』のスピンオフ作品です。

 ギルドに戻り、依頼の薬草とゴブリンの討伐証明部位を受付に提出する。


 「お疲れ様でした。依頼達成ですね。こちらが報酬になります。そしてこちらはゴブリン討伐の追加報酬ですね。」


 ゴブリンは次から次へと湧き出て来る魔物なのでギルドが常時討伐依頼を出している。特に依頼を受ける手続きをしなくても証明部位を提出するだけでよい。他にも常時討伐対象になっている魔物はいるが。


 「ありがとう。一応報告しておくけど、ゴブリンと遭遇したのは以前ユキを救出した森の中だったんだ。大規模なゴブリンの集落とか無ければいいんだけどな。」


 テルの言葉にふと受付嬢が考え込む。


 「この件は上に相談してみましょう。もしかしたら調査依頼が出る可能性があります。テルさんには出現ポイントの件などで指名依頼がかかるかもしれませんので。」


 「ああ、出来るだけ協力するよ。報酬には期待していいのかな?」


 おどけた調子で言うテルに対し受付嬢は。


 「一応ギルドマスターには言っておきますね。」


 と曖昧に微笑むだけだった。それでは、と受付嬢に声を掛けユキと共にギルドを後にするテルだが、少し歩いた屋台通りに差し掛かると立ち止まりユキに布袋を差し出す。


 「これは?」

 

 と小首を傾げるユキの姿に頬を染めるテル。


 「こ、これは今回の報酬の半分だよ。それからゴブリンの分は全部ユキが貰っていいから。」


 「いや、しかしそれでは…」


 ユキの立場からすれば受け入れ難い。何せテルは命の恩人だ。本来なら分け前など受け取る訳にはいかないのである。しかしテルの認識は全く違っていた。


 「さっきの戦闘でユキは俺の事『相棒』って言ってくれたよね?」


 「う、うむ。」


 「それに、俺たちは対等の関係だって言ったはずだ。だからユキは俺を『テル』と呼ぶ。」


 「た、確かに。」


 「対等だから報酬は半分だ。ゴブリンは全部ユキが倒した。だからユキに全額渡す。」


 「しかしそれでは私の借りはいつまで経っても…テルに恩返しが…」


 「ユキを助けたのは俺の無償の善意って事でいいじゃないか。もしどうしてもって言うなら…」


 何を言われるのかとユキは生唾を飲み込む。


 (ごくり…)


 「ユキが一人前の冒険者になっても…俺の相棒でいて欲しい。」


 「テルは私が一人前になっても…その後も恩返しの機会を与えてくれると…」


 「ああ、俺と共に居てくれることがユキの恩返しだ。」


 「それならこの命尽きるまで…」


 ちなみにここは屋台通り、人通りも多い天下の往来である。そんな場所で若い男女が見つめ合い頬を染めてなんとも言えない桃色空間を作り出している。そんな事をしてると良からぬ輩に目をつけられて…


 「ようよう、にーちゃん達見せつけてくれるねえ?」

 「ちょっとだけ俺たちにも幸せ分けてほしいんだよねぇ?」

 「まさか断らねえよなぁ?」

 

 「「あ”?」」


 いい雰囲気を邪魔されたテルとユキは一瞬で沸点に到達した。


 「「「ひぃ!」」」


 「あん?どこかで見た顔だと思ったら昨日ユキに絡んでた奴らか。どうやら昨日の忠告は無駄だったらしいなぁ?」


 「確か、またやらかしたらぶっ殺す、だったかな?テル。」


 「いや、そこまでは言ってないと思うけど…」


 「そうだったか?」


 「でもまあ、反省してないみたいだし…」


 「「「ぎゃああああああ!!!」」」


 

◇◇◇


 「あっ!テル君、ユキちゃんお帰りー!結構遅かったね。何かあったの?」


 宿の前を掃除していたストラトが2人を出迎えた。


 「いや、実はさ…」


 2人は屋台通りでの出来事をストラトに説明した。


 「へぇ~?じゃあ何?ユキちゃんに絡んで来た3人組の冒険者がまた?」


 「今回は立ち直れない程に心を折ってやったからもう大丈夫だと思うよ。」


 「うむ、あの様な女の敵、あれでもまだ甘いと私は思うのだがな。」


 ユキの方は心底おかしいらしく必死に笑いを堪えて話している。


 「て言うかね、この街でテル君の顔見て絡んで来るのってかなりモグリだと思うんだけど?」


 そうストラトが言いたくなる程にはテルの顔は売れている。整った顔立ちに左頬の2本の傷跡。これで忘れろと言われても無理なインパクトだ。


 「ああ、見ない顔だったから最近この街に来たヤツじゃないかな?昨日絡んで来た時も俺の事知らなかったみたいだし。」


 「ストラト殿、連中ならまだぶら下がっているやもしれん。見に行ってみるか?」

 

 ユキはニヤっと笑いながら言った。何か腹に一物抱えている様な悪い笑みだ。


 「ぶら下がってる?なんだろ?ちょっと見てくるよ。お父さん!ちょっと出かけるからー!」


 ストラトが駆け足で屋台通りに向かって行くのを見て、


 「おいおい、アレは少女に見せちゃダメだろう?」


 「いやなに、昨夜の睡眠を削られた少しばかりの意趣返しだよ。それにテル。私もまだ少女と呼べる歳なのだが?」


 「あ、いや。うん。ごめん。ってユキっていくつなの?」


 「…それは乙女の秘密だ。」


 

 『ドバーーン!!!』


 宿の扉が破壊されたかと思う程の勢いで開かれるとそこには鬼の形相のストラトが立っていた。


 「あんた達!乙女になんてモノ見せるのよ!今夜はおかず1品抜きよ!それからテル君!今夜はあたしとお風呂に入ってあたしの汚らわしい記憶を上書きするのよ!」


 ストラトが叫び終えた時には既に土下座している2人がいた。


◇◇◇


 「あー、お前らは何で素っ裸でこんな木に吊るされてるんだ?」


 「ごめんなさい。生まれて来てすみません。ごめんなさい。生まれて来てすみません。」


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