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これが恋か?

本作品は『いや、自由に生きろって言われても。』のスピンオフ作品です。

 「ユキは凄いんだな。魔法スキル2つもあるんだね。」


 一通りステータスとスキルの概念を説明し終えたテルはユキのスキルを聞いて感心していた。ユキとしては魔法と言われてもピンと来ないが『忍術』と言われれば不思議としっくり来るものがあった。


 「私は火遁と水遁を使っていた。その影響だろうか?剣術や投擲と言ったものはまあ、普段の戦闘で使っていたものだから。」


 ふと、ユキは疑問が浮かんだ。聞いていいものかどうか悩んだが信じた相棒の事だ。思い切って聞いてみた。


 「なあ、テル。テルは幼少の頃魔法の適正を見る儀式とやらを受けたのだろう?」

 

 「ああ、10歳の時だな。あの国ではほぼ全員が受ける儀式なんだ。」


 「ふむ。しかしだな、そんな儀式など受けなくても『ステータス』を確認すれば『魔法スキル』の有無は分かるのだろう?」


 「うん、確かにそうだね。でもステータスに反映されるのは最低でもスキルLvが1以上にならないとダメなんだ。でも儀式ではその子が潜在的に持っているスキルが分かるみたいなんだ。」


 「将来発現するであろうスキルの有無まで分かる儀式だと?」


 「ああ。それで希少なスキルや有用なスキルを持っている子はまだ才能が開花していなくても国や有力貴族が召抱えて行く。」


 「テルの【サイキック】は儀式では見つからなかったのか?」


 「俺のスキルはどうやら【ユニークスキル】と言って、俺個人しか持っていないものなんだと思う。儀式でもユニークスキルまでは見抜けなかったんじゃないかな?」


 「なるほど…」


 ユキは自分の問いに気を悪くする事なく答えてくれた事が嬉しくて。

 テルは自分を頼ってくれる存在がいる事が嬉しくて。


 お互いが共に居る事が何とも心地よい事に気付いてしまった。そしてテルはさらに気付いてしまった。それは悲しい現実だった。


 (俺、前世も含めると40年近く生きてるけどまだ『恋』をした事がない!?)


 思春期真っ盛りの時に傭兵団に買われ特訓と戦場の日々。大人になってからは商売女を相手にする事もあったがそれだけだ。今日という日を無事に乗り切れた事が最大の喜び。胸をときめかす様な相手など何処で出逢えと言うのだろうか。

 そしてこちらの世界でも自由に生きられたのは10歳まで。これも不幸なことだが前世の記憶を持つテルは精神年齢も前世のものだ。同年代の少女を恋愛対象とは見る事が出来ない、至極真っ当な感性の持ち主だった。最近になり漸く精神年齢に実年齢が近付いて来た感じはするが、前世の日本の同世代の様に青春を謳歌するような生活ではない。


 (こういう気持ちが人を好きになるって事なのかなぁ?)


 そこに思考が行き着いた時、急に気恥しくなるテル。こんな時にどうしたら良いか、絶望的に経験値が足りていないが故にあまりにもベタな行動を取ってしまう。


 「な、何か喉乾いたね!飲み物買って来るから待っててよ!」


 「あっ!テル…」


 (待って!)と言わんばかりに手を伸ばすユキだったがもうテルは走り去っていた。


 「もう…何とも朴念仁な…ふふっ。」


 その時、ユキの足元に影が差す。


 「ねえねえ、お嬢さん、こんな所で1人で何やってるの?」

 

 いかにも冒険者な感じ男3人がユキの周囲を囲んでいる。3人共それなりに整った容姿なのだが『誠実さ』と言ったものが全く感じられない。


 「1人ではないよ。今連れが少し外しているだけだ。すぐに戻るさ。」


 「こんなに可愛い子をほっといて1人でどっか行っちゃうヤツなんてどうでもいいだろ?」


 「ふふ、全くその通りだな。」


 「じゃあさ、俺達といい事しないか?へへへ。」


 「断る。」


 「は!?」


 「断る。」


 「なんだと?」


 「断ると言っている。私に構うな。」


 「…このアマァ…いい気になるんじゃねえぞ?」


 雰囲気をガラリと変える3人の男たち。全く怯える様子のないユキに対して苛立ちを募らせる。だがイラついていたのはユキも同じだ。折角テルと心地よい時間を過ごしていたのに。なんだか穢された気がする。そしてユキの目が据わった。すっと音も無く立ち上がり、


 「目障りだ。失せろ。」


 愛らしい顔からは表情が消え、声のトーンは平坦だ。その時、3人組の背後から声がする。


 「お前ら、俺の連れに何か用か。」


 こちらも抑揚のない声。振り返ると左頬に2本の傷痕の男。


「ああん?なんだぁ?テメーは。関係ねぇ奴はすっこんでろ!」


男達の1人がそう発した直後。あまりにも自然に、そしてあまりにも滑らかにテルが動く。あまりにも自然すぎる動きに言葉を発した男は全く反応出来ず。


「がっ!? ぶへっ!!」


綺麗に鳩尾に入ったテルの拳。苦痛に前屈みになった所で顔面へ膝蹴り。


「おい、コイツはバカなのか?その子は俺の連れだと言っただろ?関係無いのはお前らの方だ。それから、俺を知らないとはお前ら余所者か?」


男2人ユキに背を向けテル向き直ると


『スラリ』


と剣を抜く。直後、男の1人が昏倒する。


「武器を抜いてしまっては見過ごせんな。」


 ユキが何をしたか見ていたテルはユキの身体能力に驚愕していた。

 (これが『忍び』の力か。フィクションの中の話だと思ってたけど驚異的だな。)


 ユキは自分より20㎝は身長が高い男の後頭部に膝蹴りを見舞ったのである。助走も無しにだ。


 「な、なんなんだ、お前らは!?」


 残った男がうろたえ出した。


 「お前がどこで誰を口説こうが勝手だが、彼女は俺の相棒だ。手ぇ出したら殺すぞ。」


 その言葉を聞いたユキは頬を染めてテルに歩みより、テルの背中に回りテルの服を指先でつまむ。もう自分を置いて行くなとばかりに。


 そしてユキも鼓動が早くなる自分に戸惑っていた。

 

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