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ユキ、冒険者になる

本作品は『いや、自由に生きろって言われても。』のスピンオフ作品です。

 「それじゃあモーリス、また来るよ。」


 「おう、また来い。」


 気になるユキの戦闘相手の行方だが今は考えても仕方無い事だ、とテルは頭の中から吹き飛ばす。モーリスに挨拶して店を出て、ユキと共にギルドに向かうのだが。


 (何だかいつにも増して視線が痛いな…)

 (何だろう?物凄く居心地が悪い…それに女子(おなご)達からは怨嗟の視線すら感じるのだが…)


 「て、テル?何故か物凄く睨まれている気がする。。。」


 「と、取り敢えずギルドへ急ごう!付いて来て!」


 テルは突然駆け出した。


 「む…」


 ユキも後を追う。


 (テル、速いな。忍びの私が本気で走らないと置いていかれる?)


 (流石は忍びだな。離されないか。)


 それぞれがお互いの脚力に感嘆している内にギルドへと到着した。かなりの速度で走った筈だが2人の呼吸はそれ程乱れてはいない。


 「流石、音に聞く【軒猿】だね。」

 「いや、テルに置いて行かれない様にするのがやっとだったよ。凄いのだな、テルは。」


 ギギィ…


 ドアが軋む音をたてながら2人はギルドの中へ入る。


 「なっ!?傷面(スカーフェイス)!?誰だよ!その可愛い子は!?」


 「おい!お前まさかその子とパーティ組むのか!?」


 「ちょっ!テル!ホントなの?」


 ギルドに入るなりテルとユキの周りを取り囲む冒険者達。


 (なるほど…スタイン殿やモーリス殿の言った通りだな。テルの相棒になると言う事はこういう事になるのか。)


 周囲のテンションが上がりすぎて逆に冷静になってしまったユキ。


 「みんな落ち着け!ちょっ、前を開けてくれ!ちがっ!その前じゃなくて!こら、取り出そうとするなぁ!!!」


 密かにテルの貞操の危機が訪れる。

 「ぷっ…くくく…あはははっ」


 突然響き渡る可憐な笑い声。その笑い声の主も劣らず可憐。心底可笑しそうに笑うその笑顔にその場の全員が心を奪われた。先程までの喧騒が嘘のように静まり返るギルドホール。


 「済まないが冒険者登録をしたいのだ。通してくれないか?」


 黒髪の可憐な少女が小首を傾げて話し掛けるとざざざっとカウンターまでの道が出来上がる。モーゼの十戒か。とにかくこの場にいた者は男女問わずユキの魅力にやられたらしい。


 「ありがとう。」


 と一礼して受付カウンターへと進むユキだが引率のテルまで放心していた。


 「?テル…?」


 「はっ!? そうだ!登録だな!」


 気を取り直して受付カウンターへ向かう。


 「こんにちは。テルさん。可愛らしい子を連れて来ましたね。依頼の申し込みですか?」


 「いや、彼女の冒険者登録をしに来たんだ。」


 登録と聞いてやや驚いた受付嬢だったがそこはプロ。

 「登録ですね?ではこちらに必要事項の記入を。代筆は必要ですか?」


 「ああ、大丈夫だ。」


 ここに来てテルは大事な事に気付いた。この世界には『ステータス』の概念がある事を。まだユキに説明していない。


 「お、俺が代筆するよ!」


 何故か狼狽えるテルに疑問を持ちながらもユキはこの場はテルに任せようと思った。何か【能力】に関係する事があるかも知れない。迂闊に書き込んではまずい事もあるかも知れない。そんな事を考えているうちにもテルはいそいそと書類に書き込んで行く。


 「はい、結構です。テルさん、パーティ登録はどうしますか?」


 「あ、お願いします。パーティ名は『軍神(グンシン)』で。」

 「テル…その名は御館様の…」


 「ああ。気に入らないか?」

 「いや。ありがとう。。。」


 2人の間でのみ通じ合うパーティ名の意味。かつての主君、戦国最強と目された上杉輝虎の異名。この世界で意味を知る者は自分とテルだけ。それがユキには嬉しく感じられた。


 「えー、テルさんがCランク、ユキさんはEランクなのでパーティ軍神はDランクになります。こちらがユキさんの冒険者カード、こちらがパーティカードですね。大切に保管願います。」


 「はい、ありがとうございました。」


 そして2人がギルドを出て行った後。


 「はぁ~、なんだよ、あの可憐さは…」


 「テルも素敵だけどあの娘も可愛いわねぇ…」


 「てかさ、あの娘ユキちゃんだっけ?黒髪黒目だったよな?」


 「ああ、そういや王都の方で黒髪黒目の勇者だか英雄が現れたって噂だぜ?」


 「マジかよ!」


 そんな話で盛り上がっていたその頃、テルとユキの2人は人気の少ない落ち着ける場所で腰を下ろしていた。


 「ごめん、大事な話をするのを忘れていたんだ。」


 「?」


 テルの謝罪に小首を傾げるユキ。小柄な彼女は自然と上目使いでテルを見上げる事になる。テルは何かが頭を突き抜けた気がした。顔が火照る。鼓動が早くなる。


 「す、ステータス、スキルの話!」


 何か分からない、胸をかき乱す感情に戸惑いながらテルはユキにステータスとスキルの概念を説明するのだった。


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