架空小説投稿サイトの減点アンケート
「アンケートですか?」
「うん」
「それはまた、唐突ですね。それでいったいなにをお聞きに?」
「『陶片追放』」
「は?」
「全ユーザーにね、『ランキングから除けてほしい作品』を選んでほしいんだ」
「どうしてそんな荒れそうなことを」
「ただのアンケートだから。実際に除けることはないよ」
「仮にもランキングなんですから、一応は人気の順位になってるんですよ?」
「どこかの週刊誌でやってる『好きじゃない芸能人ランキング』みたいのがあるでしょ?」
「ありますね」
「それと同じ」
「それは行う必要がありますか?」
「褒められている物より叩かれている物のほうに関心が強くなる。
自分の気持ちを楽にしたい人ほどね」
「それがアンケートの実施に関係がありますか?」
「盛り上がる。良くも悪くも、ユーザーの色々な意見が見られる」
「サーバーに負荷がかかります。荒らし対策も必要になります」
「メンテくらいならこちらも労力は負おう。それ以外は好きにさせていたほうがいい。
ユーザーたちが自発的に動いてくれる「状況」を生みだせるほうが有意義だ」
「そうですか? ある程度の制限をかけるべきだと思いますけど」
「ユーザーが作っているランキングなんだから、修正していくのもユーザーに任せたほうがいい。
場や素材を提供する以外のことは極力避けるのが大事なんだよ」
「不必要に荒れる事態を招くことに繋がります。
悪い感情ほど簡単に伝染してしまいますから、結果を受け入れたくないユーザーたちが他サイトでうっぷん晴らしに悪評を吹聴するようになるかもしれませんよ?
作者にはメリットがありませんね」
「ない。だから答えるユーザーの側にリスクを背負ってもらう」
「制限はかけないんですよね? でもリスク?」
「まず3年以上使用されていてログイン率が高いアカウントを対象とする。
次にそのアカウントでランキング作品を、最低でも30作品以上読んでいることが第二の条件。
それでアカウント情報の開示。評価している作品、書いた感想、好んでアクセスしている作品、そういうのを全部公開してもらう。これがリスク」
「リスクになりますか?」
「なるよ。自分と自分が好きなものを関連付けされるんだから。
日頃から真摯な態度でいるユーザーであれば、自分の行動で好きな作品が好奇の目に晒されるなんて嫌がる。
とはいえ、わざわざ好んで他者を貶める行動を取るようなソシオパス気味なユーザーばかりが対象になっていたらそうとも言えなくなるけど。
まあ、それはそれで、ユーザーの質が調査できて興味深くもある」
「……誰もアンケートに協力してくれないと思いますよ」