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神羅転生物語  作者: watausagi
最終章 降臨
199/217

上級神と最上級神

◇◇◇◇◇


そこには、周りに何もない所。戦いの場としては御誂え向き。


ーー1人、ポツンと誰かが立っている。その傍には1人の女性。黒いオーラが渦巻いている。


シンラが近づくと、誰かは振り返る。


「ーーやあやあ。待ってたよ君を」

「俺を?」

「ああそうさ。この女を捕まえれば君は絶対に来ると思っていた。

ありがとう来てくれて」


耳に心地よい男性の声だが、まるで蛇がまとわりついたように感じて、とてつもなく嫌だった。


「気持ち悪いな。本題に入れよ」

「ふむ、君は賢い方だと思っていたんだけどね。上級神である僕にそんな口のきき方をしていいのかな?」

「ばーか。お前みたいな上級神より、下級神であるラファエナの方がよっぽど神様らしい」


「……ったく、君はいつも僕の心にさざ波をたてるんだね。

せっかく用意した駒も滅茶苦茶にしてくれちゃってさ」

「駒? ……勇者か」


シンラの言葉に、初めて邪神は驚いていた。


「ハハッ、そうそう頭の回るやつは嫌いじゃない。

でも少し違うね。駒は勇者だけじゃない。あのクーガとかいう中級神もその1つさ。

アイツはバカだからすぐに僕の言うことを決めてさ、力を使わずに済むように世界を征服してくれって頼んだら二つ返事で引き受けたんだよ。

……だけどね、この国の住人を絶望に叩き込めるよう、完全じゃない勇者召喚魔法陣を僕が国に用意してやったというのに、あの魔族には〝悪魔の取引〟っていう知恵をプレゼントしておいたのに、勝つどころか惨敗だった。

やっぱり駒は駒。君のようなイレギュラーは頭に入れてなかったよ」

「……だから、俺に復讐するのか?」

「復讐? ああ、うん、もうそれでいいよ。

大体力を使わずに済むようにって、僕はそんな事しなくても上級神だからいいじゃないか!

障害となる物は排除していけばいい。……まずは君だ。

まさか僕に勝てるなんて思ってないよね? 実力差はいやでも分かるだろ? 創造魔法なんて借り物の力、使わせないよ?」

「……まあな」


やはり、創造魔法は使えない。

他にもさっきからこっそりと最大威力の魔法を使っているが、その全てを無かったかのように消される。


ーーー火魔法 ムスペルヘイム

指を振るだけで防がれる。


ーーー氷魔法 ニヴルヘイム

口笛でかき消される。


ーーー時空魔法 ラグナロク

デコピンで無かったことにされた。


「無茶苦茶だな……」

「いや、君も人の身でありながらまあまあじゃないかな?

だけど、上級神を甘く見過ぎだよっ 」

「ぐうっ……!?」


それは、クロイヌのスキルにある 見えざる巨人の手と似ていた。

不可視の力が、シンラとその周りに襲いかかる。シンラは膝をついて耐えるが、気を抜けば這いつくばってしまう。


「弱い弱い、流石人間だよっと!」


邪神は余裕しゃくしゃくとシンラに近づき、動けない体を蹴り飛ばす。

その場から吹っ飛ばされて、久しぶりに自分の痛覚を思い知った。


「ふぅ……おかしいと思わないかい?」

「……何がだっ」

「神が、本来力のある神が、自分よりも小さき存在を認めなきゃならないなんて、そんなの間違っていると思わないかい?

僕は上級神なんだ。しかも、あんな運命神よりまともな僕が一番の上級神! 君たち下等生物とは違うんだよ。

なのに……なのにこの私が輪廻転生の輪に組み込まれる? バカなっ!

そんなの認めないぞ!」

「ぁっ!」


サンドバッグのように、何度も何度も蹴りまくる。シンラでなければ、存在ごと消滅して死んでいた。


「おこがましいよ 図々しい。

知ってるよ。君もそうなんだろ。

全く……人が神になるなんて、あっていいはずないじゃないか」


邪神は口では平静を装いつつ、内心爆発寸前の如く感情がくすぶり続けているのを、シンラは分かっていた。


邪神は大きくため息をついて、シンラから離れると今度はラファエナに歩み寄る。


「……これはね、あのふざけた〈神様プロジェクト〉とかいうやつにも選ばれず、何を考えてるか神になったんだ。

許せない。ね? そうだろ? 今すぐにでも存在を消したい気分………あ、僕は何を言ってるんだろう。

殺せるじゃないか!

僕としたことが、まだ古臭いしきたりにとらわれてるらしい。

うん、だったら話は早い」


何をするかは、分かった。


ーーーくそっ……体が……


《適応しました》


ほんの少し、指が動いた。


《適応しました》

《適応しました》

《適応、しました!》


手が、足が動いた。


「こんな出来損ない、一瞬で消してやるのが神ってもんだよねぇ」


ーーー遅いっ、もっとだもっと!


《適応しました!!》


ーーー足りない! 足りない!


《適応…….しました》


ーーー大体なんだ。借り物の力とか、聞き飽きた。人の身で勝てないなら……変わればいい。



《適応※しまし※》


《適応※※※※》

《※※※※※※》



ーーーそうだ、人間なんてやめてやる。 神にだってなってやる……!


《ーーーーーー》

《進化しました》


瞬間、世界が止まった気がした。


〜〜〜〜〜


ラファエナの存在を消そうとしていたアウスは、体が固まる。


「なにっ」


何かがおかしい。何かは分からなかったが、何かが確かにおかしい。

分からないーーそれが、アウスの感情に恐怖を生み出す。


「一体何が……あれ」


アウスは気づく。

今の今までそこにいたはずの、もうすぐ新たな邪神となったかもしれないラファエナがーーいない。

はっとして左を見て右を見てーーいた。

ラファエナはシンラに抱えられている。


「どういう……」


そして、またある違和感を感じる。

シンラの力が分からないのだ。

さっきまでは明らかに弱者だったシンラの力が、まるではかれない。


「わ、私は上級神で……すよね?」


シンラの目は鋭く冷たく、眼差しがアウスを強く射る。


その事が不快だったアウスは、最大威力の魔法を使うが、その全てを無かったかのように消される。


向こうは何もしていない。こちらは神力を使いに使っているというのに、向こうは何もしないで、ただこちらの魔法が無力化される。


「まだ…まだ……」


呆然と、力なく呟くアウスはシンラを見失った。……ゆっくりと後ろを見てーーそして聞こえた。


「《消えろ》」


ーーアウスは、消えた。

今のシンラは最上級神。圧倒的な力は、言葉に意思をのせるだけで実現する。


創造神シンラ。

その力は比べることすらおこがましい

認めることすら図々しい……


◇◇◇◇◇


ーーー……不思議な気分だ。なんというか、体が覚えているというか、懐かしいというか……いや、何の不思議でも無かったな。だからもう……時間がない。


〜〜〜〜〜


「………っ……うぅ、ここは?」

「俺の部屋だ」


何故か扉などが壊れていたので、急遽創造魔法で直している。


「シンラさん……私、全てを思い出しました」

「そっか」

「気にならないんですか?」

「ほとんど分かっている」

「っ! それはっ」

「カムラは死んでるからな」


シンラがそうクギを刺すと、あからさまにラファエナは落ち込んだ。そんな事実とっくに分かっているはずなのに。


「ぁ……ふぅ……全てを話しますね。

聞いてくれますか?」

「ああ、いいよ」

「ーーー創造神カムラ。元人間であり、そして私のお兄ちゃん。大好きなお兄ちゃん。私の憧れだった。何でも出来て、凄くて、そして優しい。

……でも、凄くなりすぎた。

色々あってお兄ちゃんは、私の目の前で神様になろうとしていて、そこで私は言ってしまった」


『ダメ! 私も神様になる! 一緒にいる!』


「ーーー普通は無理なんです。ただの人間が神になる。それは神以上の力が必要で、つまり存在しない。

でもお兄ちゃんは出来た。出来てしまった。……ある、代償と共に」

「寿命か?」

「はは、やっぱりシンラさんは凄いですね。ーーー……そうです。ない筈の寿命がお兄ちゃんに出来てしまい、

それを後から私は知らされて、意味も分からず泣きじゃくり、お兄ちゃんに八つ当たりして寝込みました。

バカですよね。お兄ちゃんは私の願いを聞いてくれただけなのにーーでも何で、お兄ちゃんは私を神にする時あんな事を言ったんでしょうか?」


『ごめんな……ごめんなラファエナ。

お前のお兄ちゃんはわがままなんだ……』


「ラファエナ?」

「あ、すいません。

ーーー……私はバカだと言いましたよね? でもそれは間違いで、大バカだった。

私は神になる器じゃなかったのに、神を知った気になっていた。今思えば、体感時間がよく分かっていなかったんです。

だって、寝込んで、起きた時にはもう、お兄ちゃんの寿命は消えそうで……ちょうど輪廻転生の輪に組み込まれていく時でした。

私はまた泣きじゃくり、八つ当たり出来るお兄ちゃんもいなくなって、全てから逃げました」


自分で自分の記憶を消した。


「ーーー記憶を失って目覚めたら、そこには神様が立っていて、私に神のノウハウを教えてくれました。自分の事をただの上級神だと言ってましたね。

……それから10何年か経った後、私はその人から〈神様プロジェクト〉の案内人をやってほしいと頼まれたんです。

あの時おかしいといえばおかしかったですね。それこそただの下級神である私に、そんな大役を任せられるなんて……でもまさかシンラさんがお兄ちゃんの魂を受け継いでるなんて、思いもよりませんよ。

…………もし、もしもこうなると知っていたら、私は記憶を消すことも無かったかもしれません」

「……さっきも言ったが、カムラ死んだからな。ラファエナの大好きだったカムラお兄ちゃんはもういない。それが事実だ。

……ま、まあ、カムラはお前の事が好きだったんだろうな」


ラファエナは初めて笑った。


「はい、お兄ちゃんは私にメロメロでした!」

「あ、ああ……でだ。俺が何が言いたいかというと、俺もラファエナは嫌いじゃないぞ。

ラファエナの事は絶対に嫌いじゃない。好きか嫌いかで言えば……そう……好きな方だ」

「っ……」


今の言葉には聞き覚えがあった。

記憶が蘇ったラファエナは、ある記憶を思い出す。

『もう、お兄ちゃんは私の事が嫌いなの?』

『バカいうな。俺がラファエナを嫌いなわけないだろ。

ラファエナの事は絶対に嫌いじゃない。好きか嫌いかで言えば……そう……大好きだ!』

『うん! 知ってる!』


ーーーいいえシンラさん。お兄ちゃんはちゃんと、貴方のなかに……


「そうだ、知ってますかシンラさん? お兄ちゃんって地球では中村って名前だったそうですよ」

「 へぇ地球か。それに中村……名 カムラってわけか?」

「それでですね、自分の名前を漢字で書くとこうだ! って……」


すると、ラファエナは空中に文字を書き始めた。

下界にいれるよう力を抑えた状態でも、このくらいの神力は使えるらしい。


ところでカムラの下には、神という字と、羅という字が書かれた。


ーーーいや、確かに神ってカムと呼ぶかもしれないけど……それにしても俺と同じ字だったなんて、すごい偶然。いや必然だったのか? ……だったら、俺という存在は……カムラ、神羅(カムラ)が転生した物語だったのか。


「あっ、シンラさんそろそろ……」

「ああ分かってる。もうすぐ俺は完全に神になるんだな」

「いえ、そうじゃなくて……」

「神になったらもう下界には手を出せないんだっけ。もう2度とファナ達には会えないんだよなぁ」


ドガンッッ!


と、後ろの扉が開い…壊れた。それはもう木っ端微塵に。


ーーー何これデジャヴ。

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