「魔王様とあんな近く、羨ましい! 」魔王の側近、ガイムは一人外にいた。
◇◇◇◇◇
何故、人の家の前でこんなにも躊躇しないといけないのか。こんなにも緊張しないといけないのか。
ーーーしっかりしろ。サクランに笑われるぞ。
「……という訳で、まずはファルシーから入ってくれ」
「阿呆。よく分からんがそこは自分から行くべき……ん? おい、今お前何と言った?」
「だから先に入ってくれって」
「そこの前だ!」
「ん? ああ、ファルシーって……あ、すまなかった。名前で呼ばれるのは嫌だったか?
ステータス確認ってので知ってたけど、そういえば魔王魔王呼ばれて、お前本人の名前を呼ばれるのは見たことないな」
「なっ……お、おまっ! それ、結構重要な事で…………私、ファルシー? そういえば……確かにそんな気が……」
ーーーあれ、どうやら自分の名前を忘れてたっぽい?
魔王の名前、それがいかに大事な事かシンラは分からなかった。
「はぁ……やはりお前はとんでもないな」
「なんか悪いな魔王さん」
「ふんっ、ファルシーでよい。いや、ファルシーと呼んでくれ。
そう呼ばれたい……大事な名前なのだ。もう2度と忘れぬ。
ーーそれより、早く入るぞ! 私の胃が鳴いておる」
「っと、そうだな。
よし覚悟を決めた!」
今ならシンラは自信を持って言えた。
地球で最初にして最後の友は、梅宮 舞だ。
◇◇◇◇◇
メイドに出迎えられ、
シンラは初めにマイと目が合った。マイも初めにシンラと目が合った。
一方は完全に別人。一方は何も変わらない姿。
一方は何十年ぶりで、一方は何週間ぶり。
だけどマイは確信した。魂が叫んでいた。
この人がシンラ・アリエルトで、五十嵐 神羅なのだと。
そう認識して口を開けるもーー声が出ない。
さっきまでずっと何を喋るか考えていた。
しかし、その全てがせき止められたダムのように、胸の中へ溜まるばかり。
何とか喋ろうとシンラを見てーーいつもの不安にかられる。
見限られたんじゃないか?
失望したんじゃないか?
……許してくれないんじゃないか?
そんなのは唯の言い訳だとわかっていても、考えずにはいられない。
ーーー怯えた目……
昔の神羅なら、空気を読まなきゃと勘違いしてこの場を去っただろう……昔なら。
だがそれはサクランと出会い、間違いだと気づいた。岡目八目とはよく言ったものだ。
なら今はどうする?
こんな目をしているマイに、自分は何ていう?
考えた末、シンラは一言だけ喋る。
「よっ久しぶり、マイ」
たったそれだけ。文字にして10文字も満たない言葉。だけど色々な想いが詰まったその言葉。
それがどれだけマイの救いだったのか、最初はポカンとしてーーダ ム 崩 壊。
「う…うわぁああん! しんらぁ…しんらぁぁあ……!」
もれるもれる言葉や涙。
そこからはマシンガントーク。やれ私が悪かっただの、やれ罵ってくれだの、途中からシンラでさえ理解不能な言語を発したのだった。
そして、パーティは盛り上がる。
種族と世界を越えたつながりが、そこには確かにあった。
◇◇◇◇◇オマケ
称号が変化しました
【仲直りのチャンス】
↓
【深まる友情】
◇◇◇◇◇
「なっ……これは!」
「どうだ、美味いだろ?」
「はい……まさか、俺と同じくらいだとはびっくりしました」
ピキッッ
「あん? 寝ぼけたこと言ってんじゃねえよ」「パパ怖っ……」
「事実を言ったまでです」
「おーけ、ちょっと表出ろや(キッチン)」
〜〜〜〜〜30分後
「いやいやシンラ、ここはもっと……」
「そこは、敢えてチュパカブラの酸味を生かしてですね……」
「なるほど、いけるなそれ」
〜〜〜〜〜さらに30分後
「シンラ……お前話の分かる奴だな!」
「いえ、俺も有意義な時間を過ごせました」
◇◇◇◇◇オマケ2
称号をゲットしました。
【男の友情】
◇◇◇◇◇
「むっ…何か用かメイド?」
「……クロイヌ様の作る料理はどうかと思いまして」
「美味。決まっておるだろう?」
「それは、前回もですか?」
「だから決まっておるだろう。お主、さっきから何が言いたい?」
「…………自白剤…プッ」
「っ!? な、なんだメイド! メイドらしからぬ今の行動はどういう事だ!?」
「哀れ魔王」
「〜〜〜っ! なんで、なんでそんな目で人を見てくるんだ! 教えろ! 教えないと許さないぞ!
絶対に許さないんだからな!」
◇◇◇◇◇オマケ3
称号をゲットしました。
【哀れ魔王】