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神羅転生物語  作者: watausagi
最終章 降臨
194/217

クロイヌ無双

◇◇◇◇◇


クロイヌは無双していた。


身に纏うは 竜王の鎧

左手には 魔銃テスタロッサ

右手には 神剣オーディン


何故、このようなスキルが増えたのかはクロイヌ自身よく分かっていない。メイドが持ってくる食材を使って作った料理を食べたらこうなっただけ。美味しいから良かったが他にもまだまだスキルはある。


漏れ出す 覇者の威圧。

襲うは 見えざる巨人の手。

六対からなる 大天使メタトロンの翼。

騎獣 ブラックドッグ召喚。

死霊 デッドキング召喚

武器創造 ヴァイスブレイドetc……


もう何が何やら。

決して弱いはずのない、むしろ名のある猛者ともいえる強者の魔族は、一言もしゃべる暇なくクロイヌによって葬られた。


人外シンラが面白半分で創った食材を使ったのだから、この結果は当然なのかもしれないが。


ーー魔族は混乱した。


誰が予想できよう?

たった1人の人間にーー勇者だけどーーここまではっきりと分かる力の差が、格の違いが、思考を放棄する。


比較的弱い魔族の中には、怯えて武器を放り出し降参のポーズを出すのもいたがーークロイヌは殺す。容赦なく殺す。



理由は2つある。


1つは魔王から言われた言葉。

『これは見せしめ。残酷だが、必要な処置』

つまり、平和を乱す者は殺す。


2つ目はクロイヌの戦う理由。

「家族大事に」

フンムラビ王国にはワカナがいる。

成り行きと……あるいは実験。その為に家に連れ込んだ結果、懐かれ、クロイヌは情が湧いて、いつの間にか呼ばれた『パパ』。

この時、家族愛が覚醒した。訳すと『パパ頑張る!』


娘の為、クロイヌは戦う。


『たたかうの? 血、出るの?』

『そうかもなー』

『……怖い。パパ傷つくの嫌』


娘を怖がらせた罰として、クロイヌはーー殺す。


「くそっ!

暗黒魔法 【終焉の誘い】!」


1人の魔族が、最大威力の魔法を放つ。

闇より深き黒が群れをなして、その全てが凝縮してクロイヌへと襲いかかる。

だが、甘い。


「ーーヴァイスブレイド」


突如現れた白く輝く刀がーー斬る。

それだけで闇は霧散して、刀から放たれた斬撃がそのまま魔族を真っ二つにした。


「ブラック様!?

こ、このぉーっ!!」


近くにいた側近が、怒りをあらわにしてクロイヌに襲いかかるが、


「ーー見えざる巨人の手」


途中で潰される。

身体はひしゃげだトマトのように、流れ出る血はワインのように、死んだ。


「ーーデッドキング」


物理不可、魔法攻撃を通り抜かす死霊は、魔族の魂を貪り尽くす。

それによって死んだ者も、デッドキングの配下となり近くの魔族を襲い、また魂が増える。


「ーーメタトロン」

「ーー魔銃テスタロッサ」


ブラックドッグに兵の安全を確保させ、自身は空高く舞い上がり、地上にいる哀れな魔族共を撃ち抜く。

生まれながら翼のある魔族はクロイヌに向かって行くが、


「ーー神剣オーディン」


高くなった身体能力で斬り殺す。

魔族はハエのように、命を散らして地におりゆく。

また一つ、また一つ、魔族の死体が増えて行く。

ワカナを怖がらせた愚か者の末路だ。


◇◇◇◇◇


クロイヌの家では、ワカナとメイドさんがいた。

異常に静まり返った家の中で、ワカナもいつもの元気がない。


「安心して下さいワカナ。何も心配はいりませんよ」


膝の上に頭を乗せて、浮かない顔のワカナを優しく撫でながら、これまた優しげな声を出す。


「……本当?」

「はい。なんたってクロイヌ様は勇者ですから」

「勇者……メイが読んでくれたあの本? 勇者ってパパ?」

「そうです。パパは勇者なのですよ」


元気のなかったワカナに、少し笑顔が蘇る。

勇者の話は子供の憧れだ。

それがどれだけ凄いかは、ワカナにも分かる。


「パパ凄いね。

……凄いから……だから……帰ってくるよね?」

「……はい。大丈夫です」


ーーー大丈夫ですよね、クロイヌ様?


油断をしたらワカナと同じような顔になってしまうのを、メイドスキルで我慢して、心配させまいと取り繕う。

やはり、メイドさんも心配なのだ。

仲間の死を何度も味わってきたとはいえ、慣れるものではなく、むしろ知っているからこそ心に響く。




………ただ、一言言いたい。

クロイヌに限って何も心配はいらないと。



◇◇◇◇◇


クロイヌの兵はいいとして、マイ派とシライシ派の兵士は奮戦していた。


「ぐあっ!?」


これは人間の叫び。

鋭利な爪を持った魔族に、腕を持っていかれてしまったのだ。

空に舞い上がる腕を見て、魔族はニヤリと笑う。

痛快で爽快。やめられない止まらない。日々溜まっていた鬱憤が、今暴力となって吐き出される。


……しかし、ここで異変に気付いた。


腕を失い、バランスの崩れてこけた男の目はいまだギラギラと戦意の篭った目でこちらを見返してくる。

不審に思って男の行動を見てみると、それは懐に手を忍ばしてーーエクレアを取り出した。

魔族はエクレアを知らないが、鋭い嗅覚でとらえたエクレアの甘い匂いがそれを食べ物だと理解する。


死して望むものが食べ物だと、これは滑稽で魔族も笑うしかなかった。同時に戦を汚されたようで、心にふつふつと怒りが湧き上がる。


「なんだ、なんなんだぁ? 人間様はお腹が空いたんですかぁ?」


威圧の篭ったからかい半分でそう聞くと、男は気にもとめずにエクレアをパクリと食べる。

それを不快に思った魔族はもう殺そうと男に近づいて、気づく。


本来男にあるはずの失った腕の周辺に、みるみる光が現れて、それが晴れるとーー



「よしっ、まだいける!」


ーー腕が生えていた。


「っ!」


何かがおかしいと思った魔族は周りを見渡すと、敵である人族の重症の者は、たい焼きは肉まんを食べて元どおり。軽傷の者はグミを食べて元どおり。先ほどの男のように足や腕を失った者はエクレアを食べて元どおり。


悪夢。


魔族の回復手段は魔法。それも血を止めるだけで失った腕を瞬時に癒すなど無理。


これだけでも魔族としては面倒な話だが、それに追い打ちをかけるのは、ほとんどの人間が自分達と同じくらいの力を持っているのだ。



ーーありえない回復。

ーー本来高スペックである魔族が負けてる信じ難い事実。


この2つは、どれもクロイヌの仕業。


「てんめぇ何クチャクチャ食べてやがる!?」

「これはガムと言ってな! 勇者様がくれたんだ!

噛めば噛むほど力が出るわあ!」


どこからはそんな声が、他にもこんな声が……


「てんめぇ何舐めてやがる!?」

「これはアメと言ってな! 勇者様がくれたんだ!

舐めれば舐めるほど力が出るわあ!」


1人では流石に魔族は倒せないが、そこは人間。数の利を生かす。


ーー強い魔族は勇者が倒し、そうでない魔族は兵士が倒す。


徐々に魔族は数を減らしていき、人族は士気が上がる一方。

まだ決着はついていないものの、戦争の結果はこれで決まった。

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