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神羅転生物語  作者: watausagi
最終章 降臨
192/217

魔王訪問 2

◇◇◇◇◇


魔王は非常に、それはもうひじょ〜〜〜うに混乱していた。


「あ、魔王さんチョコはいかがですか? お兄様がお作りになったものでもったいないのですが、どうぞお1つ」

「う、うむ頂こう」

「先輩のチョコは本当に美味しいんだよっ! ……それで、えっとティファナ先輩。私も欲しいかな〜なんて……」

「1つだけね」

「やったぁ!」


目の前で和気あいあいと広げられる日常的空間。

まるで自分などいないかのようにーーいや違う。いると分かっているのにこの態度。つい先日メイドさんを見たからこそ、これがどんなに異常なのか分かる。


「これ、城で出るお菓子なんて目じゃないわ」

「そんなの今更でしょ。……久しぶりに王女らしい発言が出たわね」


ーー王女!? ……男女が言ってる事が本当だとして、何故ここに? いやそれより……美味しい。


「……私も」

「ん? なんだエルフっ娘」

「……私も欲しかった」

「え、ああ何かすまないな。まだ食べてなかったのか?」

「……にじゅ………2個」

「少しでも悪いと思った私がバカだった」



魔王はそこまで言って、自分もこの謎空気に毒されていると反省する。

交渉。ここにはあくまでもお願いをしに来たのだ。魔王として、魔王らしからぬ行動を取りに来たのだ。


「ーーシンラ・アリエルト。話したいことがあるから、まずは周りをどうにかしてくれ」

「そうか? 別にいいだろ」

「良くないわ! 何でこやつらは私に対して何の驚きもないのだ? アホだアホ!

魔王だぞ? 本物の魔王なんだぞ?」

「知ってるよ。ただ、そのくらいじゃもう驚かないだけだ」

「魔王がそのくらい!?」


自分は波乱万丈な人生を送ってきたが、ここの家は相当だと呆れる魔王。


「はぁ……もうよい。何でもいいから2人っきりになりたい」

「お兄様」

「ああ、うん。魔王、妹だけは一緒にいるがいいか?」

「……好きにせい」


〜〜〜〜〜


「ーー今日はお主に話があってきたんだ」

「話?」

「ああ何から話したものか……もうあまり時間がないというのかもしれないのに……」

「とりあえず最初から言ってみればいい。中途半端に聞くのは嫌だからな」

「そうか……うむ、そうだな。

では100年前から話そうか」


最初からはやめたほうがいいかもしれないと、シンラは焦った。


「100年前、お主は何があったか知っているか?」

「いや、興味なかったし」

「興味なし……まあいいわ。

ーー100年前、魔族と人族は手を取り合おとしていたんだ。勇者マサルと魔王が初めて対面したその時にな。

互いを認め合い、真の友となれたかもしれないその時、アレが来た」

「アレ?」

「そうだ。アレは自分の事を神だとか言いよったが、あの言動と態度のどこに神を感じればいいのやら」


神……100年前……あれ、それってもしかして邪神じゃないのか?

(※世界のシステム 後編 参照)


「ーーそいつは不思議な力で私たちの状況を理解したらしく、言い放った」


『もったいないですねぇ〜ここの魔族。うまくやりさえすれば、この世界を手中に治めるなど簡単にできますでしょうに。

本当、もったいない』 嘲笑うかのように、こちらを見下していた。


「ーーそして、事態は急変した。

そいつは魔王をっ、私の父を殺したんだ! 『老いぼれに興味はない』となっ!」

「……」

「ーー勇者はそこで怒り狂った。とんでもない力だったよ。

だが、そいつを追い詰めたと思っていたら、全くの見当違い。そいつは全然本気など出していなかったのだ。

いや……何か訳の分からぬことを言っておった」


『くっ……これ以上力を出せば知られてしまいますねぇ。仕方ありません。結界を……』


「ーーするとそいつは、膜のようなものを城で覆ったかと思うと、一瞬で勇者を殺した。

私がそこで見た光景はそれが最後だ。

気づくと、ボロボロの城の床で倒れていて、それから周りの情報を集めた。

すると……私たちはどうやら100年後の世界に来てしまったらしい事を理解させられたよ」


ちょっと訳が分からなくなってきたから、ここで一旦整理しよう。




まず、邪神が現れる。


そして邪神は結界を張った。これは恐らく、他の神々に気づかれないよう対処したんだろう。結界一つでそんな事が可能なら、どこの邪神もやってそうだが何かあるのか?


まあ、とりあえず勇者を殺した。


その際ーーこれはあくまでも考察で妄想の域だがーー力を隠す結界は勇者を殺すエネルギー的なものに耐え切れず、そこら一帯の時空間が歪んでしまって、魔王達はこの時代に飛ばされたという訳なのかも。


「あれ、でも自称神のそいつはどこにいったんだ?」

「それは私たちも知らない。

何故私たちだけがこの時代にいるのか、もしかしたらアレは消えたのか?

だが、そうではないと思っている。

……嫌な予感がするのだ。このままでは取り返しのつかない何かが起こりそうな、そんな予感が。私の勘はよく当たると、ガイムも言っていた」


ガイム? ……ああ、星夜祭にいた怖い人か。

ーーそれよりも、邪神。

よし、困った時の【創造魔法】。〈先見水晶〜〉これを使えば未来が見えるぞ。


俺は早速魔王城の近くを先見水晶使って見てみるがーー確かにいた。


「約2週間後、そいつが現れるぞ」

「なっ!? なんでそんな……いや、お前だからもういい。

それよりも2週間後だと? マズイな」

「何かあるのか?」

「……実はな、私は魔王だが全ての魔族を従えてるわけではない。

平和を望む私…魔王の考えに逆らい、戦いを求める“個性派”が存在するのだ。

戦いを求めるということは、皆それなりの戦闘力を持っている。

つまり、個性派は魔族の中でも力ある者だから、これまた厄介な話だ。

そんな個性派の奴らが、約2週間後、総攻撃をかけて勇者を召喚した国を攻め入るという情報が入ったんだ」

「っ……勇者だと?」


マズイ、だって、そこには……保険をかけておこう。


「何をそんなに慌てているのだ?」

「……今回の勇者召喚は怪しいと思わなかったか?」

「怪しい?」

「ああ、本来勇者召喚魔法陣はとても珍しく、そんな代物が都合よく4つもあったんだ。偶然にしてはおかしい」

「それは……確かに」

「俺は、負けるために存在したんじゃないかと考えたんだ」

「負ける存在? 意味がわからないぞ」

「俺もこれ以上はよく言えない。

ただ、魔王。アンタは勇者についてくれ。親の仇は残念だかこちらがとらせてもらう」

「……勝てるのか?」


魔王の表情は憎しみが渦巻いて、悲しみが見えて、心配を感じた。

だから言ってやった。


「ーー10分で終わらせてやる」


◇◇◇◇◇


そこは、灰色な空間だった。人のような形をした生命体が2人。1人は泣いていて、1人はそれを慰めている。


「アウス様……その」

「いいんだよ。いずれこうなる事は分かっていたから」

「でもっ、こんなのおかしいです! アウス様がじゃっ…じゃ…邪神になる可能性があるなんて! そんな、なんで……!!」


ポンっと頭を置かれる。


「あっ……」

「よくお聞き。

例え何であろうと、そこには必ず闇があるんだ。大きいか小さいの問題で、例え闇は小さくても、やがてそれは光を飲み込むほど大きくなる。

私はそれがきただけだ」

「アウス様!」

「少し! ……1人にさせてくれないか」

「っ…う、うぅっ……分かりまじだ」


やがて、泣きじゃくる1人は消えて、後に残ったのは優しい笑みを浮かべたーー次の瞬間憎悪に顔をしかめた1人が残る。


「しおどき……か。

そろそろかと予想はしていたが、全くふざけた話だ。

この私が……上級神であるこの私がっ!」


灰色だった空間は闇に染まり、そこには光明一つ見当たらない。


「ーーふぅー……落ち着け。まだもう少し。

アイツがどれまでやってくれるか見届けていようじゃないか。

駒は揃えた。3人も。

だから早く勇者を殺せよ……クーガ」


グランウェールの時空の狭間に囚われた、もうすぐで解放される邪神に呟く。

しかし、彼はまだ知らない。

クーガなるものが、たったの10分で倒されるなんて……

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