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神羅転生物語  作者: watausagi
最終章 降臨
188/217

カクレンボ

◇◇◇◇◇


まず、くじ引きが行われた。

鬼を決める為だ。

選手達は鬼とそれ以外のものにわかれ、タスピニア王国の所有する森で、カクレンボを行う。

有利なのは鬼といえよう。何故なら、1人でも見つければ予選突破。隠れる方は1回でも見つかればそこで敗退なのだ。

なお、ルールとして、召喚者は使役魔物のそばにいなくてはいけないが、命令をするだけで手を出してはならない。自分の姿をどうやって協力して隠せるかもこの競技のポイント。


隠れるものは何をしてでも隠れろ。

鬼は何としてでも見つけろ。


そこで勝者と敗者は決まるのだから。


《ところで、鬼は誰なんですか?》

《エリックという人ね》

《……全く知りません》

《あら、結構有名よ。

彼の使役魔物はゴブリンーー300体なんだから》

《さんびゃっ……!?

それはまた何というか、個性的な方ですね》


ある意味才能があるのだろう。

ゴブリンというのは残念だが、300というのは異常。シンラのスライムの量と比べると劣るが、まずシンラと比べてはいけない。


《私はゴブリンが苦手なんだけど、エリック君はよく300体も使役できたわね》

《確かに、300体というのはこの競技で有利なんじゃないでしょうか。

ただでさえあまり隠れるところが少ない森だというのに……おっと、選手の皆さんは隠れ終わったそうです。

では、第一競技ーー始め!》


◇◇◇◇◇


「くふふっ我がゴブリン隊の出番ぞよ」


周りも見る目がない。ゴブリンという思考の存在に気づいていないのだから。

こいつらこそ世界を統べる魔物! 我が手下にふさわしいではないか。


「ーー第一ゴブリン隊は右から!

ーー第二ゴブリン隊は左から!

ーー後のゴブリン隊は適当に!

しらみつぶしに探すのだぁ!!」


ゴブリンは酷使してこそなんぼ。「おいそこのメスゴブリン。少し肩をもめ」「ググッ」

くふっ、ここでしばらくゆっくりとしておくか。


《……これはまた濃いキャラです。ですが、やる事はやってますね。

彼はどうやら、1〜6までの各ゴブリン50体に分けて隊を作り、隠れた人達を見つけようとしているようです。

やはりこの数ならではの作戦にでましたか。これは案外見つけられる人達がぞろぞろと出てきそうです》

《くすっ、どうかしら》

《?》

《前に生徒会室で聞いた話なんだけど、シンラ君って特別嫌いな魔物がいるのよ。

……オーク。それにーーゴブリン》


〜〜〜〜〜


「グッ、グガァグ、ググゴ」

「なに!? 1人も見つからないだとぉ!?

どういう事だ……おいそこのオスゴブリン!!」

「ゴズ?」

「ほんっとうに1人もいないんだな?」

「ゴズップ」

「くっ……このぉ、これだけ探してもいない? そんな訳あるか!!」


ありえない。ありえない。

隠れる場所といったら木しかないであろうが。土の中にでもというのかぁ? んなバッキャな!

例えそうだとしても全員がいないなど……ん?


「ーーグガァガアッ」

「今度はなんだぁ!」

「グルッ……グルルリア」

「ーーっ!? あ、あり得ないだロ? 第一ゴブリン隊が全滅? ちゃんとこの目で見たぁぁ?

一体何が起こってるというのだ!」


これはどういう事だ! 俺はここで踏ん反り返ってればそれだけで優勝確定だったはずだろう。これではメスゴブリンとイチャイチャ出来ないではないか!!

我がゴブリン隊がここまで恥をさらしている……んん?



「ーーグガァガアッ!! グガァガアッ!!」

「ぬわぁんだって!? 第二ゴブリン隊も!?」


……本当にこの森で……何が起こっているんだ?




《これは……》

《シンラ君ね。ちょっと見てみましょう》


◇◇◇◇◇


ゴブリンーー300体だと!?

悪趣味すぎる!

「1体見たら30体いると思え」

これはよく聞く言葉だが、それにしても300はないだろう……


仕事の都合上、ゴブリンの被害にあった女性達はよく見てきた。絶望して死を望む者も少なくはなかった。はっきり言って女性の被害にあった数なら、盗賊といい勝負だ。

エリックとかいう奴の使役魔物とは関係がないのかもしれないが、あまりいい感情はいだけない。

殺すとまでは言わないが、このカクレンボでは負けてもらおう。

八つ当たりって訳でもない。

これはカクレンボの……ちゃんとしたルールに沿った行いなのだから。


「ーーレティス」

「……なに」

「ここから北西の方角約100メートル先にゴブリン50体がやってくる。

……できるな?」

「……りょうかい」


よしっ、じゃあ他は俺がやるか。

本体はファナに任せよう。


◇◇◇◇◇


「ギグガ?」 「ギゲギャギャギュギャギョ」「ギャギャ……ギョッギギャ?」「ギュゥ……ギギャギゲ」「ギョ、ギョンギャ……ギャギーン」


あしおと、聞こえる。

どんどん、近づく。

すこし……イヤ。


「……きた。キュー……お願い」

「キュキュキュー!」


キューは賢い。

はやく土をほって、ゴブリン近づいていく。

ズドドン。ズドドド。


「ギャギャ…………ギ?」


ズドドド……ズッドッン!


「ギャギュゲ!?」


悲鳴がいっぱい。

キューは偉い。



「……足元が、お留守デス」


……褒められる


〜〜〜〜〜


「来い。アシッドスライム。ポイズンスライム。パラライズスライム。

“厄災の三兄弟”よ

何をするかは分かっているな?」


彼らはしゃべるはずもなく、行動で示した。

ある程度整っていた形は崩れていき、ほとんど液状となって広がる。

こいつらは戦場で生き残るため擬態能力もあり、俺以外には分からないほど巧妙に隠れれるのだ。


「ん? もう来たか……」


ゴブリンが近くにきたため、俺は木の上に登り、スライムの擬態能力で隠れる。

……来た来た。


「ゴブブ…………ッッギャァ!?」「ギョ、ギョゲギャギ!!」「ゴブゴフ!?」


フハハハハハッ。無駄な事。

もがけばもがくほど、そのスライム沼は沈んでいくぞ。

そして味わうがいい!

徐々にいうことが効かなくなっていく身体。明らかに調子が悪くなっていく身体。全身がほんの少し溶けてヒリヒリする身体。

安心しろ、死にはしない。


エリックも運が悪いな。ゴブリンでさえなければ、今頃誰か見つけれていたかもしれないというのに。


◇◇◇◇◇


《……ペルセフォネ王女。1つ疑問なのですが、鬼を倒すのは問題ないのでしょうか?》

《隠れるものは何をしてでも隠れろ。

鬼を倒すそれ自体は何も問題ないけど、スライム沼がギリギリだったわね。

でもゴブリン達が魔物だと気づいてないから、カクレンボとしてはセーフよ》

《わたしの知るカクレンボは鬼を倒しませんが……やはりこれは大会。なんでもありでしたか。

ーーあれ? じゃあこの勝負って、終わり方は制限時間が終わるか、それとも鬼がみんなを見つけるか、それとも……》

《鬼が全滅するか、ね》


◇◇◇◇◇


おかしいおかしい。

私の耳はおかしくなってしまったのか? それともやはり、目の前のオスゴブリンがおかしくなったのか?


「……もう1度言えよぉ」

「ギャギャ、ギュゥ」

「第三第四ゴブリン隊全滅?」


何故だなぜ? ゴブリンが負けるなど予想外も予想外だ! そんな非現実な事があっていいのか?

我がゴブリン隊だぞ。そこらのとは違う、私の! ゴブリン隊!

それがどうして……


「……もう1度確認してこい」

「ギ、ギギ?」

「だから、ゴブリン隊の様子をもう1度見てこいと言ったのだん。

口答えは認めんぞ」

「ギャギュゲ、ギャギギッッッッギャギャァァアア!!??」

「なっ、どうしたゴブリン!! 大丈夫か!?」


急に倒れたゴブリンに近づくと……


「これは、水?」

「グ、グゲガ」

「なんだゴブリン……上だ? っ!」


ゴブリンに「上だ」と言われ、慌てて上を見ると、そこには青一面が視界に広がり、それに包まれて私は意識を失ってしまった。

恥だ。これは恥。……ただ、頑張ってくれたゴブリンには、何か褒美をあげないといけないな。


「ーーお兄様の敵は、私の敵です」


意識を失った私には、その言葉は聞こえなかった。


◇◇◇◇


《こ、これはつまり、エリック選手以外は皆、第二競技へと進出なんでしょうか?》

《そうね……シンラ君のスライムが手伝ってくれたおかげで、見つかった人は1人もいないみたいだし》

《ゴブリン300体と聞いた時はあれでしたが、ここまでくると可哀想に思えてきました。

というか、これのどこがカクレンボなんでしょう?

競技はもう鬼退治ですよ》


確かに、鬼退治とは言い得て妙だ。

数ある鬼のゴブリンは、時に落とし穴にはまって、時にスライムの餌食となる。

エリックなんかは上にいるクーネに気づかず、水の波動をくらって気絶。

始めに有利なのは鬼といったが、見つけられる側の問題でそれは大きく変わる。

そして今日の場合、見つけられる側が異常だった、それだけだ。


《なにはともあれ、第一競技は終了です。

あと2つ残っていると思いますが、この後も楽しみに待っています。……そして、無事に終わるよう祈っています》

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