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神羅転生物語  作者: watausagi
最終章 降臨
177/217

魔法ってすごいや!!

◇◇◇◇◇


ハクバ・クロイヌは、正義感あふれる人間。というわけではない。

そんなもの、汚い大人達を見たときから諦めている。汚い大人を見て、汚い自分を自覚したそのときから。

かといって悪人かといえば、そんなはずもない。助けられれば助けるし、助けられなければ同情する。そんな、どこにでもいる人間らしい人間だ。

しかし、そんなクロイヌも譲れない部分がある。

 それは家族。

家族の為ならば、クロイヌは命をかけられる。なんの比喩でもなく、言葉通りの意味で。

そこで、異世界だ。

もしも……家族が出来たら?

聞けばこの世界、明らかに日本よりは厳しく辛い生活だ。そんな世界で、力なき者はどれくらい生き残れる?

そこまでクロイヌは考えた時、非常に焦った。家族が出来た時、今の自分じゃ何も出来ない。だったらどうする? 強くなるしかない。


家族>越えられない壁>その他


家族を守る為、異世界で強くならないといけない。


◇◇◇◇◇


マイとシライシとは別の部屋でステータスを見せ合いっこしている間、クロイヌは1人ベッドの上で目を瞑っていた。

明かりは消えていて、すぐ前も見えないほど真っ暗だ。

そんな中、魔法に関して詳しい者は分かっただろう。クロイヌの魔力が、ざわりと動いた事を。


「………(あかり)よ」


不意に、ポワッとクロイヌの人差し指が光った。

指は常に一定の明かりを保ち、部屋全体を照らしている。

クロイヌはさっきと違い目は開いているが、その顔は段々と苦しそうに歪んで……フッと光は消えた。


「ーーーっ……ああ、きつい!

たった灯をつけるだけでこれって、俺魔法の才能あるのか?」


さっきからクロイヌはこの流れを繰り返しているものの、自分の成長を実感できずにイラついてくる。

そも、異世界初日で何やってるんだという話だが。


「今度は魔力を……すぅぅ………おっ、やっぱなんか満たされた」


さっき見つけた独自の呼吸。これをすればきつさが和らいでくるので、恐らく空気中にある魔力を自分に取り込んでいるのだろうと、クロイヌは予想している。

そも、初日で何見つけてんだという話だが。


「今度は……」


魔導具で部屋を明るくして、また目を瞑り……


「闇よ」


ゾワァっとクロイヌの影から闇が広がり、それは瞬く間に部屋を覆う。


「っ……俺はこっちの方が得意っ……かぁぁ……」


ジワジワと闇は小さくなり、クロイヌの影へと戻っていく。


「すぅ………うん、考察するに闇は魔力で広げられる。滅茶苦茶キツいけど出来る。大きさを変えずになら持続出来るんだけどなぁ」


そして、クロイヌはまた一連の流れを繰り返す。自分はまだまだと反省し戒める。


ーーークロイヌは知らない。


呼吸で魔力を取り込むのは、この世界で知られていない魔呼吸である事を。


ーーークロイヌは知らない。


闇を魔力で広げるなど、キツいどころではないという事を。


◇◇◇◇◇

夜は明け、小鳥がさえずる朝となった。


コンコン


鳴き声ではない。

ノックの音だ。


『クロイヌ様、入ります』


魔法の練習をしていて、寝落ちを体験しているクロイヌはもちろん返事など出来ないが、ドアを開ける音すらせずに部屋へと入り込んできたメイドがそんな事を気にするはずもなく、なんの躊躇もせずにクロイヌへ近寄りーー殺気をぶつけた。


「っ!!」


勢いよく壁の端へと移動したクロイヌを見て、メイドは一言。


「良い反応です」


これには嫌な汗をかいてしまったクロイヌも呆れるしかなかった。敵かと思えば、服装からして違うなと判断する。

それでも、完全には信用しないが。表情から見てもやっぱり敵ではない。


「……メイド、か」

「お食事の準備が出来ています。

ですが、まずは先にお顔を洗いましょう。ついてきてください」

「あ、ああ」


メイドには、有無も言わさない迫力があった。そしてクロイヌは、こんな強気な人は、絶対に妻にしたくないと、そう思った。


〜〜〜〜〜


水が出る魔導具を使って顔を洗いながら、クロイヌはここの生活に不便がないなと実感している。

日本よりは歴史が感じられると外の景色を見て思ったが、視点を変えてみてみると、魔法のおかげか案外地球より凄い所などたくさんあるのだ。

手に握れるほどの青い石から、何リットルもの水が出てくるなど誰が予想できよう? 魔力を感知する防犯道具など誰が考えつこう?


さすがは異世界といったところだ。


クロイヌは顔を洗った後、メイドから渡されたタオルで顔を拭き、男性用の洗面室から出ると、丁度女性用の洗面室から出てきた2人組ーーマイとシライシがいた。


「おはよう2人共」

「あっ、おはようクロイヌさん」

「おはようございますクロイヌさん」


分かると思うが、最初がマイで次に挨拶したのがシライシだ。


「あれ、クロイヌさん眠たそうですね。昨日は眠れなかったんですか?」

「そうだったら良かったんだけどな。生憎と寝てしまった」

「?」


まさか、異世界にきて初めての夜で魔法の練習をしていたなど、2人は想像もできなかった。

クロイヌが魔法を使えたのは称号にもあった、〜に愛されし者によるところが大きいだろう。現に闇と光以外で魔法が発動したものはなかった。……適正が無かったからともいえる。


「さて、じゃあ異世界初めての料理に会いに行こう!

楽しみだなぁ。どんなのがあるかなぁ」


急に子供っぽくなるクロイヌをみて、2人は顔を見合わせクスリと笑った。


ーーー異世界は、まだ平和である。


◇◇◇◇◇おまけ


「知っていますかお兄様?」

「んー……なにを?」

「フンムラビ王国が勇者召喚を行ったという噂が「知らない!!」……えっ、どうしたのですか?」

「知らない知らない!! ……寝る」

「え…えぇ?」

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