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神羅転生物語  作者: watausagi
最終章 降臨
168/217

交わる赤と金

◇◇◇◇◇


武闘大会本戦は、決して規模の小さきものではなく、むしろ王族が見にくるほど有名で名の知れた大会だ。3回勝てば優勝。

学園側も、もちろん自分の受け持つ生徒が勝ってほしい。自国の力を見せるという意味合いも持つからだ。


魔闘場。


そこで本戦は行われる。

そして今、歴史ある本戦でも代々受け継がれるであろう、力と力がぶつかり合おうとしていた。


◇◇◇◇◇ファナVSセレナ


1人は、セレナ。煌めく赤髪。燃えるような意思をその目に宿し、両手にはチャクラムと呼ばれる対の武器。


1人は、ティファナ。輝く金髪。油断なき余裕の佇まい。右手には伸縮自在の伸びる棒。



「こうして2人だけで戦うのはいつぶりかしら、ファナ?

貴女には何度負けたことか……」


セレナは昔を思い出しているのだろう。整った顔立ちをしているその目が薄く細まり、次の瞬間、さっきまでの熱気を感じさせる目に戻る。


「でも、今日は勝つわよ。

全力で戦ってはいけないのが残念だけど、それは貴女も同じよね。

負けるわけにはいかないわ」

「それはこちらのセリフよ。

私はお兄様の妹。無様な姿は見せられない」


ファナは、思う。

至高にして絶対なる存在。自分の兄。

比べることすらおこがましく、認めることすら図々しい。最早こちらからすれば神と等しき力を持つ者。


ファナは考えた事がある。

完全完璧を形とした兄。その妹が私のような者でいいのか? 同年代では確かに優れている方なのかもしれない。だが、それでもシンラ・アリエルトの妹として私は余りにも小さき矮小ではないのか……と。

しかし、それと同時に誇りでもある。

妹である事は、自分を卑下してしまうものでありながら、それ以上の喜びを感じさせるのもまた事実なのだ。

数え切れないほどシンラを想い、止まることのない尊敬と愛。兄弟の壁を壊した感情は、何度その身を快楽に沈めた事か。


「ーーーだから、負けられない」


ファナも昔を思い出す。

セレナと一緒に魔法の鍛錬を、時に対人戦闘の腕を競った日々。

セレナも才能というのはあったかもしれないが、それ以上にファナにも才能があった。

故に模擬戦ではセレナに負けた事がないファナ。しかし、負けた事がないのであって、引き分けはあった。

決して楽に勝てる相手ではない。そんなのは百も承知。


「………!」

「………!」


勝負の合図はもうしてある。

2人は既に言葉を捨て、無言で武器を握りーー始まった。


「斬り裂け!」


先手はセレナ。

手首のスナップを生かし、高スピードで放たれる2つのチャクラムは、独特な軌道を描きながらファナに吸い込まれーーそのどちらも傷一つつける事はできなかった。


ファナの動体視力は完全にチャクラムを見切り、流れるように力を受け流した後は神縮自在棒で器用にすくい上げる。


「っ!」


しかし、そこで終わるはずもない。

チャクラムに魔糸をくっつけていたセレナは、綱引きの原理で力一杯引っ張る。

ファナはそれも予想しており、慌てず神縮自在棒を縮ませてやり過ごした。


この間、およそ3秒。


ファナとセレナにとっては準備運動。

でも、周りにとっては、これだけで驚愕に値する応戦。今から驚いては後が持たないというのに……


〜〜〜〜〜


拳が頭の横を通り過ぎ、蹴りが体に直撃しそうになる。受け流し、反撃し、守りに転じ、ただ勝つ事だけに専念していた。


「はぁっ!」

「っ……!」


ファナとセレナは武器を使わず、体術だけで勝敗を決めようとしていた。話し合って決めたとかではなく、自然と今はそういう風に落ち着いたのだ。


元々魔導具ありきの本戦だが、かといってガチガチの魔導具フル装備は嫌われる。例えるなら法には違反してないが、モラルが欠如しているとみなされるのだ。


そんな事は一切考慮していない、シンラの言いつけにより全力でなくとも本気な2人は、やはり勝つ事だけに専念している。


「ぁっ!」

「はぁ……っ!!」


生徒は分からない。

しかし、戦いを知るものなら、どれだけファナとセレナが異常なのか分かる。

目に見えない速さで戦っているわけではなく、集中すれば一般人でも捉えられるスピード。

しかし、だからこそおかしさが目につく。


「今何回フェイント……」「4……いや5?」「何だどうやって動いた?」


力ではなく、技量。

女性という面もあり、ただの人間ということもあり、力の強くない2人はより一層技術を磨いた。


流れるような2人の動きは静かな激しさを撒き散らし、穏やかではない。


「くっ……はぁ!」

「っ……」


セレナとファナは距離を置き、先にセレナが牽制として火の魔法を使って、それをファナは水で取り込みセレナの足元にばら撒く。そこから体術ではなく魔法と魔法の戦いへと変化した。


「[火鳥風]!」


意識してイメージする。

セレナの周りには(おびただ)しいほどの燃える鳥が現れ、一斉にファナへと突撃する。


「……[爆流・滝登り]」


ファナの周りの地面から勢いよく天へと昇る水が、魔闘場の結界を破壊しつつ、そのまま心強い防御壁となる。


水の向こうに映るセレナを見ながら、次の一手を思案するファナだったが、それが命取りとなった。


「甘いわよ、 [弐式・火勢風]!」

「っ!?」


セレナの2度目の魔法によって生み出された風が、容赦なく[火鳥風]を加勢する。

いきなり何倍もの威力に膨れ上がった[火鳥風]に、ファナは反応が遅れてそのままーーー……セレナは一瞬勝ったと思った。同時に、このままでは終わらないとも思った。


そして、その期待に裏切らないファナ。


なす術もなく、[爆流・滝登り]の防御魔法は、セレナの[火鳥風]を防ぎきれずに霧散すると思いきや、水蒸気などによって視界が晴れていくとその限りではないと判断する。


滝登りは未だ健在だった。


おのが主人を守り抜こうと、天を貫く防御のイメージは変わらない。

しかし、そこでセレナはある事に気づく。


(あれって……もしかして!)


滝登りの中に、うっすらと光るものがある。

観客からは気づかれないが、セレナだけは分かった。


(凍らせた! )


威力を増した[火鳥風]を水で守りながら、弱ったところを凍らせる。なんとも理にかなった現実だが、セレナとファナは戦いの前にシンラからこう言われたのだ。


『面倒なことになるから、ファナは氷魔法と雷魔法は絶対に気づかれちゃダメだぞ。

セレナは……念の為、蒼炎もな』


だから全力ではなかった2人。本気だった2人。

それが今は氷魔法をファナは使っている。その事に頭をとらわれ、セレナは致命的なミスーー先ほどのファナと同じように油断をしてしまった。


「あれ……今何か光っきゃっ!?」


滝登りに何かキラキラしたものを見たセレナは、最初それがなんなのか分からなく、結果は自分の体で理解した。


光だ。


滝登りの中の氷に反射して、最後にセレナの目へ飛び込んだ。

視界を潰されたセレナは、このままじゃマズイと目は諦め耳を澄ませる。気配を探る。


危険。


既に目の前にはファナが迫っていた。

慌てて横に飛びのこうとするが、思わずバランスを崩してしまう。

何故? と掠れた視界でセレナが見たものは、自分の足元で凍らされた水だった。もちろん、観客は気付かない。


「私の勝ちね、セレナ」


手刀を首に添えられ、目に指を突きつけられる。


「……ずるい」

「お兄様は気づかれちゃダメだと、なら使ってもずるくないでしょ?」

「私は蒼炎使わなかった………いいえ、私の負けね。降参するわ」


言い訳にしかならないと、負けは負け。素直にセレナは降参した。


「ーーー………すげぇ」


誰かが呟く。それは水たまりにできた波紋のようにすぐ広まり、観客は感動に震え、皆がファナとセレナに拍手した。


第一回戦。これにて終了。


◇◇◇◇◇


一方……シンラの戦い。


『ーーー始め!』

「見せてやる、努力の末俺が編み出した、完全火魔法[メ……]ぐあぅ!?」

『ーーー勝者、シンラ・アリエルト!』


〜〜〜〜〜


「負けるわけにはいかないんだ!

僕の勝利を信じて、妹が待ってるんだァァアア!」

「っ……妹」

「絶対に勝ってやる。僕の妹の為にも……『おい見ろよアイツ。またやってらぁ』『同情作戦。相手のやる気を削いで、勝とう作戦だな』『ぷっ、さっきは死んだばあちゃんの為って言ってたろ』…………」

「………[レクイエム]」

「ぎゃぁぁぁーー!?」


〜〜〜〜〜


シンラ・アリエルト。

大した活躍もなく、決勝まで勝ち進んでいたのだった。

◆後書き◆

投稿遅れました。すいません。

戦闘描写ってなに!? どうやって書くの!? 少々情緒不安定な作者です。

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