表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神羅転生物語  作者: watausagi
最終章 降臨
164/217

役者変更

◇◇◇◇◇


ダメだった。

いくら演技だといっても、ファナを泣かす奴や背中を切るやつには殺意が湧いてしまう。本能が、魂が勝手に動いてしまい、理性とかそういう問題ではないのだ。


俺のワガママで一旦演劇は中断。

これからどうするか?

クラスで緊急会議が行われた。


〜〜〜〜〜


『まずはさ、暴走しちゃうシンラ君が1番の問題なのよね』

『僕、怖かった』

『俺も死ぬかと思ったぜ』


すまんエド。

ごめんよウィル君。


『ここにはシンラ君(あのバカ)を物理的に止められる化け物は………うん、いない。そうよね、いたらおかしいもんね。

じゃあ、根本的な解決として、いっその事役者変更をしなきゃならないと思うんだよ』


すごく失礼なことを言われたが、クラスメイトは口々に賛成している。


『ファナさん演じるメイドを誰かに変えなきゃいけないんだけど、どうする? 誰かやってくれる人はいないかな?』

『ティファナ様に匹敵する美しさを持ち合わせている者は……』

『いないとして〜』

『ティファナ様に匹敵する演技力を持ち合わせている者は……』

『いないとして〜』

『必然的に、ティファナ様の、ワンランク下の人物を選ぶことに……』

『なりそうですなぁ〜』

『黙ってなさいファンクラブ!!』


……ファナのファンクラブ。俺は会員ナンバー1。と言いたいところだが、自重して入っていない。


『全く……あっ、みんないいのよ!

あいつらの言うことなんか気にしないで、やりたい人がいればいいんだから!』

『うーん……』

『ちょっと気が引けるかな』

『俺っちやってもいいんだけど『あんたは男』……そっすよね』


主役であるメイドをやりたいという人が、誰もいない。

なまじファナが優秀すぎたせいで、どうしても気後れしてしまうのだろう。


『……私がやる』


誰だ? と思ったらレティスだった。

だけどレティスは……


『うっ、ごめんなさいレティスさん。貴女に任せられない理由が2つあるのよ』

『……嫉妬?』

『しばくわよ』


容赦ないな。委員長みたいな女。


『なに、あいつ嫉妬でレティスちゃんを苛めてるのか?』

『あいつの考えてること分かったぞ!』

『お、なになに?』

『本当は自分がやりたくて、だけど自分から言うのはあれだから、誰もいないから私やりますっていう雰囲気つくろうとしてんだ。

だから、誰か自分以外の立候補は蹴落とすつもりなのさ』

『なんてやろうだ……みんなのレティスちゃんを、そんな理由で苛めてるのか』

『違うわよ!!』

『ぐほっ!?』


委員長の土魔法が、容赦なくレティス信者に顔に的中した。


『はぁ……あのね。そもそも、レティスさんは演技とかそういうのが苦手だろうから、何も喋らない雪だるまになったのよ?

主役であるメイドなんて演じきれる……というかセリフすら覚えきれるか不安だわ』

『……もう1つは?』

『貴女もシンラ君のお気に入りでしょ。

メイド役なんてしたら、どっちにしろ、ウィルとエドモンド君が死んじゃうのよ』

『……なるほど、納得』

『ごめんね、だから諦めて。でも珍しいね。レティスさんがやりたいだなんて』

『……好きって、言われたかった』

『あっ、そ。じゃあ、レティスさん以外で、誰かメイド役をやってくれる人?』


やっぱり誰もいない。だけど、このまま終わるわけにもいかない。


『はい』

『うおっと、シンラ君?

えっと……でもシンラ君は男だからメイドはちょっとね。

っ……そうだ! 去年の女子会で見せてくれた女装なら文句ないわ!』

『ちょっと待て委員長!?

なんでアンタが去年の事を!!』

『なんでって、私もあそこにいたから? そりゃ気づくわよ。1年生の時も同じクラスだったし。それと、私はなんの委員長でもないんだけど?』


ええいっお前は委員長キャラだ!

迂闊だった。まさか去年あそこにいたなんて。でも、今迄言わなかったことを鑑みると、優しいやつだな。願わくば墓場まで持っていってほしかったが。


『えっ女装?』

『まさか……』

『でも……ありえそうだ』

『ちょっと鼻血でちゃった』

『どっちが受けなんだろ』


ありえねえよ!!

それと最後の奴、一体俺と誰を妄想した。


『俺が言いたいのは、このメイド役に相応しい人物がいるという事です』

『へぇ……シンラ君の推薦かぁ。で、誰?』

『その前に、その人をメイド役にするなら護衛騎士を俺にやらせてください。

それが前提条件で、これはやっと成り立ちます』

『護衛騎士?

でも、その役は……』

『はい、エドがいますね。

だからこそです。

エドはーー王子役をしてもらいます』


〜〜〜〜〜


緊急会議が終了した。

案外早く役が決まったことは、吉と出るだろう。 もしかしたらずっと決まらなくて、グダグダしていたかもしれない。


後は練習あるのみ。


急に王子役に出世したエドは戸惑っていたが、本人は結構やる気があるらしく、セリフも既に半分を覚えていた。……まあ、思慮深い設定の王子は何処かに消えたが。


「ーーよっ、アティ」

「シンラ……何か用かしら?」

「いや、なんとなく。

さっきも少し元気無かったかなーって、なんかあったのか?」


緊急会議が始まる少し前から、アティはボーッとしていたのだ。

あんなにうるさかった緊急会議の時でさえ、ボーッとしていたものだから、気になっていた。


「別に、何も無いわ。それに元気がないわけでもない。……そうね。敢えて言えば、楽しかったわ」

「楽しかった?」

「ええ、私が隣国の王女で、貴方が王子。

最後の方で式を挙げた時、不思議と心が熱くなったわ」

「んん? なんだそりゃ。

おいおいアティ、まさか俺と劇の中で結婚出来たのが良かったのかよ」

「そう言ってるのよ」


……んん?


「ほら、私は仮にも王女だし、この先望まない結婚をされないとも限らないでしょ。

だから、例え嘘でも、自分が嫌いじゃない人と〈結婚〉を経験できて、少し浮かれてしまったわ」


お、おお……なんという事だ。

俺たちのクラスに、1人シリアスが紛れ込んでいた。


「父はきっと私を不幸にさせない。

でも、抗えないものだってこの世にはあると思うから、変な期待はしたらダメよね。

……本当に、おかしな話。

政略結婚も、さっきのも、同じ偽者であることに変わりはないのに、むしろ劇は道化者の役回りなのに、なのに、なのにーー」


久しぶりに、満面の笑みを見た。


「ーー断然、嬉しかったわ」


だけどそれは一瞬で、アティはいつもの無表情8割・飄々2割の顔に戻った。


「それよりも、大丈夫なの?」

「ん? 何が?」

「さっきのよ。

結局貴方は護衛騎士。エドモンド・カスターンは王子。それに……」

「いいんだよ。むしろ最高。きっと素晴らしい劇を見せてくれるだろうさ。

なにせ、偽りでも演技でもない、あいつらは正真正銘の本物だしな」


ーーーーー

メイド・???

王子・エドモンド

護衛騎士・俺

隣国の王女・アティ

雪だるま・レティス

嫌な奴・ウィル

以下省略

ーーーーー



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ