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神羅転生物語  作者: watausagi
最終章 降臨
163/217

シンラご乱心

◇◇◇◇◇

☆役決め☆


主役であるメイドは、このクラスで1番可愛い(※シンラの偏見もあります)我が妹ファナとなり、ファナ自身の要望で王子様は俺になり、護衛騎士はエドとなった。


詳しくはこちら


ーーーーー

メイド・ファナ

王子様・俺

護衛騎士・エド

隣国の王女・アティ

雪だるま・レティス

嫌な性格の奴・初登場ウィル君

メイド仲間・セレナとかシェリーとか

他のみんなは色々

ーーーーー


無事に役も決まり、さあ練習の始まりだ。


◇◇◇◇◇

場所、城1階

メイドと嫌な性格の奴

〜〜〜〜〜


「え、えっと……ゴホンゴホン。

………ふ、ふーむ、分かっているのかねカミュー? それがどんなに浅はかで、愚かだということを?」


いやらしい視線だこと。

文官ハンザムエイトは、昔から私の苦手な存在だった。

何かをすればネチネチと、何もしなくてもネチネチと、この人はきっと私を苛めたいだけ。嫌がる私を見て悦に浸っている。

人の心を読むのに長けているのは、きっとそんな性格が故にでしょう。


「じゅうぶんに分かっているつもりです、ハンザムエイト様。

だからこそ私は、この想いを誰にも言わずに墓場まで持っていく所存であります。

気に障ったのなら謝ります。

ですから、もうこの件については何も言わないでください」

「ち、ちっ……たかがメイドが」

「気に障ったのならすいません」


形だけならば、喜んで頭でもなんでも下げましょう。


「……ふんっ、精々指を咥えて、王子の式を待っているんだな」

「………」


ハンザムエイトは、最後に大きく口を歪ませて、どこかに行ってしまわれました。


ああ、お兄ーー王子。いつものようにワガママを言ってくだされば、私は何でもするというのに、どうしてこんな時だけなにも言ってくれないのですか?

しょうがないと分かっていても、目から落ちる涙を(水魔法)止める手段は、今の私にありません。

でも、それが王子の意志とあらば「ちょっ、ちょっとシンラ君ストップストップ!」


……?


急に騒がしくなったと思ったら、ハンザムエイト役のウィル君が、恐怖で顔を歪ませていました。

普段優しいウィル君の怯えた視線の先、そこにはお兄様がいました。


「よくも……よくも泣かせたな」

「落ち着いて!? ティファナさんの涙は演技だから! 惚れ惚れするくらいの演技だったから! そして僕もまた演技だったんだからぁあ!」

「なめるなよハンザムエイト。文官如きが、圧倒的な力の前には意味をなさないと思え!」

「僕ハンザムエイトじゃない!! 文官違う。クラスメイトのウィル、ウィルだから!」

「たかがメイドだと? とっても可愛いじゃないか!!」

「それ僕も思ってるから! ね? ね?

落ち着いて深呼吸だよシンラ君。これは演技なんだ。つっこんだら負けなんだよ!」


お兄様の美しい殺気にあてられ、顔を真っ青にしながらも、命の危機だとウィル君は必死にお兄様をなだめようとしています。

……本音を言わせてもらえば、このまま凛々しいお姿のお兄様を見ていたい気持ちもありましたが、流石にウィル君が可愛そうだったので止めることにしました。


「お兄様、口を挟む真似をしてすいません。ですが本番まであまり時間がないのでは?」

「っ…そう、だな。この場面はもう大丈夫だろう。次にいこう」

「た、助かった……」


◇◇◇◇◇

場所、庭

王子とメイドと雪だるま

〜〜〜〜〜


後はこれを頭につけて……っと、よし、雪だるま(※レティスです)の完成だ。


「おっと、手がずれるな」


ついでに外れかけた手袋も付け直し……今、雪だるまの頬が赤くなったのは気のせいか?

……気のせいなのだろう。 最近は色々なことがありすぎた。


ファーーカミューに長年積み重ねてきた想いをぶちまけて、未だその返事は返っておらずーーああ、思い出すだけで体が火照る。今はこの冷たい雪だるまに身を預けるとしよう。


「……や、役得」


雪だるまが何か喋った気がする。……やっぱり気のせいか。あの事で気が滅入ってしまっているのだろう。


 父上も酷な事を。


メイドに恋する俺を危うく思ったのか、俺に好意を持っているらしい隣国の王女と、政略結婚なるものを結ばされる事になった。

俺の為だとあの人は言うが、本当にそう思っているのだろうが、笑止! 幸せなど他人が決めていいものではない。 人それぞれ価値観が違うというのに。

平等など嘘だ。敢えて言うなら、皆不平等なのが平等。


「ーーお前は冷たいな。名も無き雪だるまよ。少し、そばに居させておくれ」


身体全体に冷たさが染み渡る。

雪だるまに抱きつくのは初体験だが、中々これはいいものだ。


「……抱きつかれるのも、悪くない」


やはりこの雪だるま、さっきから喋っていないか?


考えても仕方がない。カミューの作ったオニオンスープでも頂くとしよう。


◇◇◇◇◇

場所、式場

メイドと王子と護衛騎士

〜〜〜〜〜



走りに走って目の前に、佇む1人の護衛騎士。


「バルムンクさん!」

「……き、決まったみてーだな。

いいのかい? 今中に入ってティファナさん、じゃなくて! アンタのやりたい事をすれば、きっと……大、大混乱だ」

いいんです。覚悟は決まりました。

後悔だけはしたくないんです」

「……そうかい。

だったら俺からは何も言わねえ。さ、ここを通りな」


護衛をしない騎士だけど、貴方は立派な男です。


「ああ王子、今行きます」



私は今更ながら鼓動が早まる。覚悟を決めたからこそ、体が火照り身が震える。

でも、立ち止まってはいけない。この先に王子が待っているんです。


「ーー王子様!!」

「っ……カミュー!?」


中はガヤガヤ大騒ぎ。

式の邪魔が入るなど、前代未聞な事だから、それは必然だったのでしょう。

私がした事なのに、思わず笑みがこぼれてしまう。

私に会えて嬉しいと思っていてくれてるのでしょうか? 王子がそんな顔をしてくれているなんて、私は幸せ者です。


ーーーだから、聞いてください私の想い。


「王子! あの時言えなかったことを今言います!

私は、貴方のことがっ!?」


背中が熱い。

どうして。

斬られた?

どこから。

後ろ?

でも、でも後ろは……

崩れ落ちる私の体。首を動かし見たものは、涙を流したバルムンク。


「どう……して」

「すまねえなぁメイドさん。

俺を恨んでくれても構わねえ。だけど俺はアンタが……ゴニョゴニョ(んなこと言ったらシンラに殺されるぅ!)

今ここでアンタが想いを伝えれば、処刑台に送られるのは知っていた。

だから俺が殺した、俺の責任。逃げはしねえ。処刑台に送られるのは俺だけだ」


本当はとっても怒りたいけれど、そんな悲しい顔をしてたら卑怯ね。

赤い水たまりなんて気にせず、今は貴方の涙を拭きたい。


「でも、ごめんなさいバルムンク……私はやっぱり……王子が好きなの」

「それは俺に言うんじゃねえ。

ほら、もう来たぜ」


バルムンクは他の兵に捕まった。涙声で私の名前を叫ぶのは、私の愛しい王子様。


「カミュー! ダメだカミュー!

死ぬな。死なないでくれ!」

「貴方はいつも、そうやってわがままばかり……」

「これで最後だから! だから死なないでくれカミュー!!」

「……王子……好きですよ」

「っ……ああ、ああ! 俺も……俺も大好きなんだよカミュー!」

「ずっとそばに居てあげたいけれど……もう眠たくたってきました。

……王子、最後にもう一度、私は貴方が……大好きです」


最後の力でキス(完全にはしていない。ある角度でそう見えるだけ)をして、想いを遂げれたメイドの私。

処刑台の上じゃなく、王子の下で死ねるのなら、死んだあの世でバルムンクに礼を言わないと。


「ーーーカーーー!! ーーカーーミューーー!ー!!」


もう、意識が遠のいていきます。


これが幸せな終わりだったのか、不幸の終わりだったのか、なんとも決めがたい話だけど、少なくとも想いは告げた。キスもできたし、王子から好きだと言われた。


王子にはこれから悲しい思いをさせるけど、ごめんなさい。私は最後に幸せでした。

他の誰がなんと言おうとも、私にとっては幸せな終わりです。


来世というのがあるのなら、欲を言ってもいいのなら、生まれ変わりはメイドがいい。

確かにメイドは辛かったけど、王子に会えなかった方がよっぽど辛かったはず。



ーーー赤く広がる血の海に、私の目からこぼれ落ちたのは、王子の目から流れているのは、暖かくて尊い想いの涙。


先に逝きますバルムンク。

待っています王子様「ちょっと待てシンラ!! 俺だ、エドだ!!」


………?


「言いたいことはそれだけか護衛騎士。ファナに傷を負わせたんだ。楽に死ねると思うなよ」

「血のりぃぃい! アレは血のりだからぁあ!

ちょっ、マジで怖いよ! 殺気がビンビン伝わるぅぅう!!」

「俺が早く処刑台に送ってあげよう。

[サモン・ギロチン]!!」

「うぎゃあぁあ!?

死ぬこれ! あぶっな!?」


エドさんが可愛そうなので、お兄様を止めましょう。

◆次回◆

このままじゃ演劇どころじゃない!

反省するシンラだが、反射で動く体は止められないのだ。


次回! シンラが解決策を見出す!演技じゃない本物を見せてやれ!!

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