咲く裂くサクラン
◇◇◇◇◇交流会3日目
昨日俺とぶつかった、燃えるようなピンクがかった赤い髪をした女性が、今俺とダンスを踊っている。
……なんでや!
◇◇◇◇◇
事の始まりから話そう。
交流会3日目といえばダンスパーティー。
華やかな服装を着た美少女達が、花に群がる虫のように(なに言ってんだ俺?)男たちの心を鷲掴みにする。
俺はいつもの如く、みんなと移動していた。
「セレナは何でスーツを選んだんだ?」
「あのヒラヒラはちょっと……私にはこれが丁度いいわ」
かっこいい美女は健在だった。
一部の女性から熱烈な視線を受けている。
「ファナはいつも通り可愛いな」
「そ、そんな……照れますよ」
よく漫画などで、卑猥なものを見ると鼻血が出ているが、そんな事あるわけないだろと思っていた。
だけど、こうして天使もといファナを見たら、完全に否定はできない。
なぜにファナはこんなに可愛いのだろうか? これは度々真剣に考えているが、未だ答えは出ない。
ファナだから、というのが今のところ最有力候補だ。
「私なんかよりも、断然お兄様の方が可愛いです」
これは……新手のいじめか?
去年の女子会を思い出し、憂鬱な気分になっていると、どうやらダンスパーティーが始まろうとしているらしい。
前回と同じく、第1魔法学園のギルス学園長が話し出した。
……今思えば、このとき口を塞いでいればよかった。
『今回はみんなより先に踊ってほしい人がいるんだ。
まあ、深く考えずに、1年生のお手本と思ってもらえばいい。
じゃあ第2魔法学園の主席入学の子と第3魔法学園の主席入学の子。
第1魔法学園の主席入学の子と第4魔法学園の主席入学の子ね。
あ、もちろん同学年だよ』
◇◇◇◇◇
それで、こうなった。
目の前には気の強そう、実力も強そうな女性が、しかめっ面で俺と踊っている。
さっきは赤髪と言ったが、角度が違えば黒髪に見えなくもない。赤黒い髪だな。
残念なことに一言も喋っていない。できるだけ俺に触れないようしているのが目に分かる。
……ん? あれはステラとパニスじゃないか。なんだ、パニスは主席入学だったのか。
ステラと仲も良さそうだし、良かった良かった。
ーーー結局、目の前の女性とは、何事もなくお手本的なダンスパーティーは終了した。
〜〜〜〜〜
俺はギルス学園長が1人になったのを見計らい、問い詰めた。
「なんであんな事をしたんですか」
「おや、君かい。あんな事って?」
「とぼけないでください。
俺を……っ、名前も知らない。
第1魔法学園の主席入学の女性と、わざわざ踊らさせたということです」
「ありっバレてたか。
ゴホンッーー彼女の名前はサクラン。ここからずっと東にある村に生まれて育ってきたんだけど、色々あって君にどうにかしてもらおうかと思って」
「……え、またか、また俺なのか?
パニスの時もそうですけど、今回はわけが違う。ご期待には答えられませんよ。
サクランは俺と口もきかないんですよ」
「う〜ん、君ならどうにかなると思うんだけどなぁ」
この人のこの自信はどこから来てるんだろう?
「なんども言ったはずですけど、俺にだって出来ないことくらいあります」
「………実はね、サクラン君は村で一番の実力を持っていたんだ」
あれ、これどうにかするパターンじゃね?
「いや、違うね。それは過小評価だ。
村1番なんてとんでもない。世界でトップレベルの実力だと思っている。
多分冒険者のSランクは確実。分かりやすく言えば、君の妹さんよりは強いと僕は思っているよ。
でも、彼女の実績と言えばーー盗賊千人殺しくらいだけどね」
「盗賊千人殺し?」
「そう!
不幸な事に彼女村はつい最近、悪知恵を働かせた盗賊の集団に襲われてね。ま、返り討ちにあったんだけど。
盗賊はサクランから皆殺しにされたんだよ。
そして間も無く、サクランは僕の学園に来た。今は寮で生活している」
「………」
「僕から言えるのはここまでだ。
サクランをよろしく頼むよ………今度の大会、最後まで勝ち進めば決勝戦で会えるから、ね」
ギルス学園長は最後にボソッとそう言うと、いつもの飄々とした雰囲気に戻り、勝手にどこかへ行ってしまった。
『っ……お前みたいな奴が、私なんかの手に触れるな!』
ファナはあの時、サクランの目に恨みがこもってたと言っていた。
でもそれは、俺ではなく自分自身に向けていたのではないか?
俺はファナみたいにサクランの目を見ていなかったが、多分俺がその時サクランの目を見ていたら、あることに気づいただろう。
ーーーまるで、昔の俺と同じ目をしてるって。
◇◇◇◇◇おまけ
快適だ。
他のところと違い、俺は魔法を使い、この帰りの馬車を快適空間に変えた。
「聞きましたかお兄様?
最近フンムラビ王国の近くで、魔族が暴れていたらしいです」
「………」
「それでフンムラビ王国完全に恐慌状態でして、もしかしたら……」
「………」
「お兄様? お兄様?
一体昨日から何を考え込んでいるのですか?」
「………ん、今日の晩御飯とか」
「それで、一体昨日から何を考え込んでいるのですか?」
「いや、だから今日の晩御飯……」
「それで、何を考え込んでいるのですか?」
我が妹は、テレパシーでも使えるのか?
「……はぁ、実はな、今日の土曜日か日曜日出かけるところが出来た」
「どこにですか?」
「ずっと東、かな」
◆後書き◆
自分の昔のお話、第一章らへんを読んでみると、何これすっごく恥ずかしいってなります。こんな駄文載せてて大丈夫なのか? と。
でもまあ、今書いてるお話も、後々見てみれば、何これ、ってなるんでしょうね。
気にせず投稿したいと思います。
それと勇者召喚なんですが、男1人に女2人召喚されることとなります。
それで、男の方の能力が決まらないんです。候補はあるんですけど、納得がいかなくて……誰かアイデアがあればよろしくお願いします。
因みに男は勇者(笑)ではありません。こいつ主人公でいいんじゃないの? みたいなキャラです(作者的に)