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神羅転生物語  作者: watausagi
最終章 降臨
160/217

俺、嫌われてる?

◇◇◇◇◇交流会2日目


今日は特にすることもなく、フラフラと歩いていた。

女装? しないしない。

というか女子会はもう終わる頃だ。今回は逃げ切れた。


ーーー ああ、この学園内には中々に立派な木がある。邪魔にならない程度に花が生え、……よく見ればこの木は桜じゃないのか?

春になればさぞかし美しかろう。


たまにはこうやってベンチで休むのも悪くは……


『ーーー輩!!』


なんだか背筋がぞおっとした。

まるで、誰かから追いかけられるような、後ろを振り向けば後輩が自分の名前を叫びながら走ってくるような、そんな気配がした。


『シンラ先ーーー輩!!』


……気のせいだ。

なんとかスイッチが入ったイリアの声がするのは多分気のせいだ。

でも、一応気配は隠しておこう。それと透明になっておこう。


『待ってよイリーーー!!』


……気のせいだ。

友達の暴走を止めようとしているステラの声がするのは多分気のせいだ。

でも、でも……


「……ん、ここから匂いが……」


なんでイリアは目の前で止まったんだ!?

今まで走ってたのになんで目の前で!?

匂いとか言うなよ。昨日お風呂に入ったのに不安になってくるじゃないか!!


「はぁ……はぁ……やっと追いついた。

ん? どうしたのイリー?」

「近くに、シンラ先輩がいる」


なんですと……こやつは我が妹と同じ能力を持ち合わせているのか?


「先輩が? でもどこにも……あれ、確かに少し気配の残滓が……」


お前らは何者なんだ!?


「んー……いるのは分かってるんだけど、闇雲に探すのは非効率的ね。

ーーー水魔法[ただの雨]」


っ……イリアは広範囲に水をぶちまけた。

透明なだけの俺じゃ……もういいや[転移]。


◇◇◇◇◇


水に濡れた花が、キラキラと雫を光らしている。

もちろんベンチも、平等に濡れている。


「あれ、消えた……?」

「どうしたのイリー?」

「さっきまで確かに……これは振り出しに戻ったわね。

ステラ、走るわよ!」

「ま、またぁ〜〜?」


◇◇◇◇◇


適当なところに転移したが、……ここは廊下だな。高さは2階といったところ。場所に見覚えがある。

ここは、多分女子会があった部屋の近く。

さっきまでそのことを考えていたから、無意識にここに来てしまったのだろう。


さて、ここからどうしたものか……


『ーーー一体何のようなのですか?』

『んー? いやね、ちょっと俺たちに付き合ってもらおうかと』


耳に入る声。

これは俺がよく知る相手、ファナではないか。

右に視線を向けると、通路の先にファナが……男共に絡まれていた。


プチンッ


かなりのスピードが出ていたと思う。控えめに言って音速。

絶対に殺……ハンゴロにしてやろうと、本能に従った行動だ。


その結果といってはなんだが、俺は気づかなかった。

ちょうど角の向こうから歩いてくる人物に。


そう、俺は曲がり角で女性とぶつかってしまったのだ。

パンを口にくわえてないし、遅刻遅刻なんていうのも言っていないが、確かにぶつかった。

女性は尻餅をついてしまった。


「うおっ……すまん、大丈夫か?」


あれ、でも俺かなりのスピードでぶつかったはずなのに、女性は尻餅をついただけなのか?

そう疑問に思いながら、燃えるようなピンクがかった赤髪の女性に手を差しのばすが……


「っ……お前みたいな奴が、私なんかの手に触れるな!」


女性さ軽い身のこなしで起き上がり、1人でどこかに行ってしまった。

……え、俺初見で嫌われたの?

そういえばエステルにも交流会の時嫌われてたんだよな? これもうお約束?


「ーーー失礼な人ですね。沈めましょうか」

「怖い怖い。どうしたいきなり」

「お兄様にぶつかった挙句、謝罪の1つも出来ないなんて」


ファナはプンスカプンスカほおを膨らましている。


……チラリと、先程ファナに絡んでいた男共の方を見ると、不思議なことに海で溺れてしまったかのような現場になっていた。何でだー(棒読み)。


「どちらかというと、俺からぶつかってしまったんだよ。

向こうが怒るのも悪くはない」

「違いますよお兄様。

先程の方、目に恨みがこもっていました。

ただぶつかっただけで人を恨むなんて、お門違いというものでしょう」


……恨み?


「なぁファナ。それって本当に……」


俺を恨んでいたのか?


「お兄様?」

「いや、何でもないただ……『シンラ先輩ーーー!!』『待ってよイリーーー!!』……逃げようか」



ーーーこの時、俺は考える事を止めていた。


それはさながら、自分の過去に向き合うのが辛いかのように、記憶と過去に蓋をしたんだ。


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