何気に広がる水遊び
◇◇◇◇◇
そして私達は川に着いた。
川ってなんかいいよね! あの水の流れを見ていると、なんかこう……
「私生きてるー!」
っていうか、あのサラサラコポコポ流れる川の音を聞いていると、なんかこう……
「きゃー冷たい! 」
っていうか、とにかく凄いよね。
だから私は、
「イリーと一緒に楽しもう! 」
って、思ってたんだけど、そしたらね……誰かいたんだ。
「知ってる人?」
「知らないわ。服からしてアインスの子じゃないかしら?」
イリーも知らない人らしい。
その人は川に入るのかなぁって思ってたけど、どうやら違うみたい。よくよく見てみると、右手に石を持っていた。
「何してるんだろう?」
「分からないわ。……全く」
イリーも分からないらしい。
だから2人でジーっと見ていたの。そして、その人は動いた。
腰を少し下げて、右手に持つ石を横から滑るように投げたかと思うと、その石は川にーー沈むことなく、ピュッピュッってなった!!
「凄い凄いっ!」
「っ……誰!」
「ねーねー! もう1回やってみて!」
「え、だから誰……」
「こうやるのかな? ーーえいっ!」
ポチャン
な、なんて難しいんだろう。
いやダメよステラ。諦めるなんて、そんなの最後までとっとくんだ。
「えいっ!」
ポチャン
「……出来ない。ねえ教えて! さっきのどうやってやったの?」
「だから誰……はぁ……いいわ、教えてあげる。一回だけだからね」
「本当に? やったぁ!
ーーお〜い、イリーも来て来て!」
「まだ誰かいるのね……」
〜〜〜〜〜
「お願いします先生! ほら、イリーも一緒にやろうよ」
「私は別に……」
「そんな事言わないでーーそうだ、これが出来るようになって、先輩に見せれば褒めてくれるかもよ?」
「お願いするわ先生」
段々と扱い方が分かってきたかも……
「じゃあやるわよ。
まずこのくらい平らな石をーーー」
〜〜〜〜〜
ポチャポチャポチャン
「出来た出来た!
見て見てイリー……」
ポチャチャチャチャチャチャ……
「なるほど。
それなりのスピードに回転、石選びもそうだけど角度は結構大事ね」
イリーって実はかなりハイスペックだと、今日思い出した私であった。
「2人共上手いのね…… 」
「そんな事ないよ。私まだ3回くらいだし」
「シンラ先輩の為なら、これくらい当然よ」
「え……シンラ?」
「あら、先生は知らないの? シンラ先輩は、言葉では表せないほど凄いのよ。ああシンラ先輩、今すぐにでもお探しに!!」
あ、スイッチ入っちゃった。そして、シンラ先輩を探しに行ってしまった。
「すごいわね。もう見えなくなったわ」
「あ、あはは、イリーは先輩の事になると、少しおかしくなっちゃうから。
先生は本当に先輩の事知らないの?」
「……学園で噂なら聞いたことあるわ……どれも、信じがたい話だけど」
「そっか、でもそれ多分、全部本当の話だよ。先輩すごいんだから」
非常識に非常識を重ね合わせて、非常識で包みこみ、しっかりと非常識を熟成したのが先輩だもの。もちろん隠し味も非常識。
「……顔だけだと思ってたわ」
「え?」
「何でもない。それより、まだ貴女の名前を聞いてなかったわね」
「ステラだよ!」
「ステラ……ステラ、それって確か……」
「あっ私先生の名前を聞いてないよ!」
「ああ、ごめんなさい。私はパニスよ」
パニス? いい名前!
「ーーねえ、ステラ」
「何?」
「その……私と、友達にな、なれ……友達になってくれないかしら?」
顔を赤らめながら、モゴモゴと口を動かす先生……ううん、パニスはとっても可愛かった。
「ちっちっち、それは違うよパニス君。
『友達っていうのなるもんじゃなくて、いやそれも1つの形だけど、友達っていうのはなってるものだ』って先輩は言ってた」
「そう……そう、よね」
「うん、だから私とパニスは、もう友達なんだよ!」
「っ……ごめんなさいステラ。どうやら私は余計な事を言ったみたいね。
ーーそれより、さっきのお友達は追いかけなくていいの?」
「あっそうだね。私もそろそろ先輩を探さないと。じゃあねパニス!」
私はイリーの消えた先に走った。
去り際に、「やっと、1人」って聞こえたのは、一体どういう意味だったんだろうか?