川といえば……あの人
◇◇◇◇◇交流会2日目
ここで大事な発表をします。
私は先輩を探していました。
何故なのかって?
それが私の生き甲斐だからです! 存在理由といっても過言ではありません!
ーーー少し昔の話になりますが、あの時の私は幼かった。(※今もそうである)
最初に死神さんを見たときは、いくら院長先生が連れてきたとはいえ、全身黒い服なんてどこぞの暗殺者かと思ったもんですよ。
言葉遣いがいいとは言えないが、不思議とどこか気品がある。不思議な人。それに何より、魔法が使えた。
ただの魔法じゃない。
人を傷つけるくらいの魔法しか知らなかった私は、普通に驚いた。
ただ光を出すくらいなら、光属性に適性のある者の子は誰でも出来るだろう。
でも、それから闇で絵を作った。これはおかしい。今の私でさえ、あんな複雑に絵なんて作れない。数字を作るのがやっと。
他にも火やらパチパチなるのやら、見事に私の常識を壊してくれていた。
だからだろう。
恋愛感情を抜きにして、その時の私は死神さんに興味が湧いた。 ずっとそばにいて飽きない人だと思い、徐々に惹かれていく。周りに子供たちで囲まれてお姉さんぶっていた私は、年上っぽい死神さんを頼りたかったというのもあるかも。
極め付けは、命を助けてくれた時だ。
魔物に殺されそうになった私を、死神さんは私の事を2回ほどぶった後、優しく抱きしめてくれ……ああ、思い出しただけで顔が熱くなる。
学園の前ではじめて見かけたとき、綺麗な赤い目で先輩を死神さんだと気付き(何故か、雰囲気は違った)、私も学園に入りたいと強く願って、またしても死神さんに助けられていた。
いろんな意味で卑怯なズルい死神さん。優しくて鈍感な先輩。
最近思ってきたことだけど、私が好きなのは先輩で、それ以上に好きなのは死神さんなのだ。
同じだけど違う。
まるで別人だと錯覚するくらいに、死神さんと先輩を知る私は、そう思える。
別人だと言われても、納得する。それくらいに違う。 いやもしかしたら……本当に死神さんは、違うのかも……
って、今はそれどころじゃない。私は大事な発表をしていたんだ!
先輩を探すことがじゃなくて(それも大事だけど)、探す途中にーー川を見つけた!!
このアインスの敷地内には、大きな川が流れてた。 私達の学園よりも、自然豊かな所は羨ましい。
それで、川を見つけたら何をする?
泳ぎたい! ……のは自重して、せめてこの感動を伝えたい!
「イリ〜! どこなのイリ〜!
私の友達イリ〜ちゃ〜〜〜ん!!」
「ーーここにいるわよ」
「うわっビックリした!
もう、背後を取らないでよ。思わず縛っちゃうところだった」
「ステラ、あなた……そんな猟奇的な趣味を持ち合わせていたのね。
いえ、私からは何も言わないわ。そういうのは人それぞれよね」
「ち、違うよ! そういうのじゃなくて、これは死神さんの教えで……」
「死神にそんな事したの!?」
「だから違うよ!
これは護衛の為でね、闇魔法で影を針状に実体化させて、相手を突き刺しながら縛り上げるの」
死神さんが私に教えてくれた闇魔法、[影縫い・ツナギミチ]。
盗賊を拘束するときに愛用していたらしい。
死神さん曰く、『盗賊には念入りに返し縫いをしてる』とのこと。
「突き刺す……凶悪ね。ーーそれで、私に何か用があるんじゃないの?」
「そうだよ、私、川を見つけたんだ!
イリーも一緒に行こう?」
「もう少しシンラ先輩を探していたかったんだけど……まあいいわ。そこにいるかもしれないし」
「本当? やったぁ!」