助けなきゃ!
◇◇◇◇◇学園内 廊下にて
「ふんふふ〜ん」
意味なく鼻歌、なんとなくスキップ!
「ふ〜ん……ん? あれって……」
私の目に留まったのは、可愛らしい女の子と厳つい男2人。
やや、もしかしてあれは……
『おいおい、お前なめてんのか〜?』
『そんなの嫌ですよ気持ち悪い』
『かあっ! やっぱこいつなめてんなぁ。弟よ』
『全くでさぁ!』
……なんか濃い人だ。
って、そんなことしてる場合じゃない、女の子を助けないと……あれ、先輩!
『なんなんだ騒がしい』
『っ、いえ、何でもねえんですよ何でも。
なあ弟?』
『全くでさぁ!』
『……そのキャラは何だよ』
心なしか、先輩が引いてる気がする。
『というより、何でもないわけないだろ。俺も生徒会なんだ、ここで見逃すわけにはいかない。
で、どっちが何をやったんだ?』
『そんなのこの女が悪いに決まってますって! こいつ、俺の肩にぶつかり足を踏みつぶした後、罵詈雑言をあびさせられたと思ったら、極め付けにはガン飛ばしてきやがったんだ。
なあ弟よ?』
『全くでさぁ!』
おやおや、状況が怪しくなってきた。
私てっきり男の方が悪いと思ってたけど、女の子が悪いんだね。
これは反省しないと。
『マジか……そっちの君、こいつが言っていることは本当なのか?』
『全てデタラメです』
『おっと、俺に嘘は通用しないぞ。因みに今のは嘘だった』
『っ……証拠も何もないのに決めつけるなんて、貴方何様ですか?』
『元神様だったりしてな。
ーーー言い訳はいい、こういう時は生徒指導室に連れて行かないといけないんだった。ちょっと来てもらうぞ』
瞬く間に先輩が事件を解決しちゃった。やっぱり凄いや。学ばないと!
◇◇◇◇◇学園内 渡り廊下にて
「ふ〜ん……んん?」
意味なく鼻歌、なんとなくスキップをしていると、すらっとした男の人が、背の低い男の子を睨みつけていた。
『君みたいな平民が、何でこんな所にいるんだ? ん?
ここは私みたいな誇りある貴族だけがいるべきだぞ』
『そ、それは……』
……これってアレだよね。ダメなやつだよね。あの子を助けないと……あれ、さっきの兄弟君だ。
『やいやいやい、テメエそんなとこでなーにしてやがんだ、ああん?
平民とか貴族とかなんだか聞こえたがぁ、ここじゃあそんなの関係ねえって、お天道様から教わらなかったのかぁ!?
なあ弟よ』
『全くでさぁ!』
すごい、兄弟君は優しい人だった。
それなのに私ときたら……恥ずかしい。
『なんだね、貴族であるこの私に君みたいな野蛮人が何かようなのか? ん?
用がないなら消えたまえ、出来るだけ急いでな』
『てんめぇあんまり調子に乗ってと、怒るぞ!!』
『全くでさぁぁぁ!』
これはちょっと熱くなりすぎかもと、間に入ろうとしたら……あれは学園長?
『おやおや、一体何の騒ぎさね』
『学園長! 聞いてくだせえ、こいつときたら 貴族だからっていちゃもんつけてんですよ、頭くらぁ』
『ふーん……で、本当かい坊主?』
『坊主っ!? 誇りある貴族である私に、よりにもよって坊主呼ばわりだと!?
貴様学園長だからといって調子に乗ってるんじゃなかろうなぁ?』
『バカ言いなさんな。私は乗りこなしてんだよ。
それと、ここでは貴族とか平民とか関係ないと知っているんだろう?
これ以上ギャアギャア言うと、死神を連れてくるよ』
『なっ、Sランク冒険者死神の事か!?』
『あいつと私は親友でね〜。私が一声かければ何でもやってくれるんだよ』
サラリとウソを言った!
『くっ……覚えてろよ!』
『次はないからね、こっちもよーく覚えておくよ』
瞬く間に学園長が助けてくれた。
普段何をしてるか分かんなかったけど、やる時はやるんだね。私も学ばないと。
◇◇◇◇◇マイホームにて
……今日は何だったんだろう。
助けようとしても裏目に出る。助けなくても裏目に出る、かもしれない。難しいなぁ。
あっ、先輩が前に言ってたっけ。助けるなんておこがましい、って。
私はまだまだ未熟者なんだし、ちょっと早過ぎたのかもしれない。学ばないと。
「お、落ち着けファナ! 別に俺はやましい事なんて……」
「ならば、何故今日の朝にレティスが裸でお兄様の部屋にいたのですか?」
「だから本当に知らないんだよ。気付いたら良くあることだろう?」
「そんなのよくあったらたまりません。少し反省してください」
「い、いや………っ、助けてくれステラ!」
え、私? 私は……
「……私じゃおこがましいです」
「心の声が聞こえたぞ!」
ーーー私は少し、成長した(かも)