確かな異変 迫る非日常
◇◇◇◇◇
2年生。
そろそろ学園に飽き…ゴホンゴホン、今年も1年頑張ろうと思う。
だが、なんというか……少しクラスメイトに申し訳ない。ファナと友達になろうと近寄る男がたまにいるのだが、条件反射でそれを撃退してしまう。
くそ、静まれ俺の右腕(※魔糸で男を縛り上げた右手)。
……と、冗談はここまでにして、俺たちは昼ご飯を食べていた。
「シンラ先輩、今日は栄養目ばっちり美味しい自信アリの弁当を作ってきました。
食べてくれますか?」
「いや、ファナが作ってくれてるのがあるんだけど」
俺は、イリアの弁当をチラッと見て、アイコンタクトで横にいるファナに助けを求める。
「……ふぅ、ねえイリア。
なんの事前もなしに、それは失礼にあたると思うわよ。今日はしょうがないけど、今度から気をつけなさい」
「はい、お義姉さま」
プチン
あっ
「……ねえお兄様、やっぱりコレが家にいるのは我慢がなりません」
お、結構抑えている。ここが学園だからだろうか?
マイホーム内じゃ怒声一歩手前というところだからな。
度重なるイリアの不躾な言葉に、この頃ファナはストレスが溜まっていくようだった。本当にイリアは何がしたいんだろう?
「でもなファナ、イリアは……」
「私、今親子の縁を切っています」
「これだもんなぁ」
イリアがマイホームに来たあの日、実は、イリアの父が猛反対したらしく(当然だ)、急いでいたこともあって、イリアは親子の縁を切り家出状態という事だ。
俺から何か親御さんに一言言わなければならないと思うんだが、ちょっと怖そうだから後伸ばしにしている。
母親の方にはイリアの無事を報告しているので、大事にはなっていない。父親の方は意固地になり、イリアなんかもう知らん! みたいな感じらしい。
「というか、ファナ。イリアの事は認めていないのに、ステラはいいのか?」
「ステラは良い子です。何かと手伝ってくれてますし、気配り上手な女の子です。ステラは大丈夫だと思っています」
なんじそりゃ
「でも、イリアだって色々と手伝ってるようだが?」
「下心丸見えです」
そういうもんか。
どうやらイリアとファナは仲良くなれそうにないらしい。
「それに、イリアは大丈夫じゃないんですよ。
私が止めなければ、夜に10回はお兄様の部屋へ侵入しています」
ファナのカミングアウトに、イリアは「あら?」といった感じで、付け加える。
「それはティファナ先輩だって同じじゃないですか。私が止めなければ、10回はシンラ先輩の部屋に忍び込もうとしていましたし」
どっちもどっちという事か。
というか、前ファナに一週間禁止をしたのに、これじゃあなんの意味もなっていない。
「そもそも何で夜に忍び込もうとするんだよ、訳分からん。
レティスなんか、堂々と最初からいるぞ」
「「……レティス(先輩)?」」
「……ん」
「そんなっ、ティファナ先輩が抜け駆け!」「レティス貴女………そう、コレが……寝取られ」
なんのこっちゃ。
ファナとイリアがショックを受けていると、俺は後ろに知った気配を感じた。
「ーーーシンラさん」
「ミランダ副…ミランダ会長、一体どうしたんですか?」
「ちょっとこちらへ」
手招きで誘われて、俺はミランダ会長についていった。
場所は、生徒会室だった。
◇◇◇◇◇
「それで、何か用ですか?」
「はい。私達の将来についてで、重要な話があります」
「……」
「……」
「……ペルセフォネ元会長の真似ですか? 失礼ながら、少し笑いそうです」
「それは良かったです。では本題に移ります。
今度の遠征ですが、魔物……ラットアットが大量発生しているようなのです」
「大量発生? 原因は何か分かっているのですか?」
「それが、よく分かっていないらしく、一部ではクラッシュバガーの狩りすぎにより、ラットアットが捕食されずに、増え続けてしまったという結論に至っています」
ラットアット……ドブネズミみたいな見た目の魔物か。
「それで、中止という事ですか?」
「普通はそうなっていたのですが、学園長が『ああ、シンラ・アリエルトにでも任せときな』……と仰っていました」
何言ってんの学園長?
何があっても責任取れるのかよ。
「昨年の遠征した場所が、1番ラットアットが少ないようです」
「……それを、俺が殲滅すればいいんですか?」
「いえ、学園長が『1年生に経験を積ませる。シンラ・アリエルトには、1年生が怪我しない程度に頑張ってくれ』……と、仰っていました」
本当に学園長なんなの? 注文多すぎない?
「シンラさんを筆頭に、私達生徒会が1年生を怪我なく対処します。
ですので、これはティファナさんとレティスさんにも伝えといてください」
「分かりました……ん? ファナとレティスならさっきいましたけど、なんで一緒にここへ呼ばなかったんですか?」
「あまり関わりたくない雰囲気を出していたので」
……なるほど、納得。