実技試験
◇◇◇◇◇
『10時から……ーーー……ですね』
って、受付の人が言っていたことまでは覚えている。
今は10時。……ん? 10時だよね?
え、ここであってるよね? 逆にここじゃなかったらどこだって話だし……
「次は誰だ!!」
「あっ、はい私です!
私、です……………私ですよね?」
「いや知らんが、とりあえず名前を言ってくれれば分かる」
『ぷふっ、何あれ?』
『緊張しすぎだろ!』
『お前らバカか?そんな事どうでもいい。
今はあの可愛いさが異常な件について議論しろ』
うぅ……なんか目立ってる。アホの子と思われちゃったかな?
先輩は堂々としてればいいなんて言ってたけど、無茶だよぉ〜。
「ス、ステラ、です」
「ステラ…ステラ……ん、安心しろ。ここで合ってるぞ。
それに、筆記の結果は素晴らしいなぁ。期待しているぞ」
「は、はい!」
恥ずかしい。とっても恥ずかしいけど、筆記は大丈夫だったらしい。
よし! 実技も頑張ろう!
……でも、何をアピール? みたいなのをすればいいんだろうか。
「どうした、何かやって見せてくれ」
「えーっと……」
「ーーー的を壊せばいいさ」
「学園長!」
後ろから誰かに声をかけられ、え? 学園長?
「あのー、的を壊すだけでいいんですか?」
「ふふふ、簡単に言ってくれないでおくれよ。
前回はボコボコ壊されてたせいで、今回は一層硬くなってるんだ。そうやすやすと壊せるもんじゃない。
このことを分かった上で、それでもまだそんな減らず口を叩けるのなら、いいさ、それを現実にしちまいな」
「わ、分かりました」
大きく深呼吸……すぅぅはぁぁぁ。すぅぅぅはぁぁぁ……
大丈夫!
先輩が言ってたことを思い出すんだ!
『ステラの場合、空間魔法と闇魔法に適性があるんだけど、空間魔法は知られない方がいい。面倒なことになるから』
『えーと、じゃあ、私は闇魔法だけって事ですか?』
『いや、空間魔法も使っていい』
『ほへ?』
『みんなはもちろん空間魔法なんて知りやしない。こっちが何かをした所で理解不能と結論づける。
要はバレなきゃいいってこと』
『バレなきゃいい……覚えときます!』
ーーーいける。
闇魔法はその特性上、扱いにくいものとされている。
なんでかっていうと、攻撃範囲が狭いから。自分の影を魔力で実体化させて攻撃するから、せいぜい10メートルいけばいい。
例外は魔力で影を作るか(言葉にすると簡単だけど、私は全然ムリ)、自分以外の影を使うことだけど、これは一気に難易度が上がる。魔力と上手く混ざりにくいのだ。
それに実体化させた影は動かしにくい。熟達した人じゃなければ真っ直ぐにしか動かせない。そして私もまだまだそのレベル。
だけど私は先輩がいる。
まずは自分の側で影を魔力で高密度に実体化。次に的を攻撃。
ではなく、このままじゃ距離が遠すぎて、細く頼りない影の攻撃になってしまうので、空間魔法で的の影にもっていく。
そして……
『この棒が見えるか?』
『はい』
『そしたら、こっちの端が始まり。こっちの端が終わりと考えて、こうやって輪にする。
さ、始まりと終わりはどこだ?』
『んー……ない?』
『そう、始まりと終わりなんて存在しない。
一直線の棒を、こうやって輪にする事で、始まりは終わりに、終わりは始まりとなった。
ま、これは単純な例だ。別に輪にすることはない。
確か、ステラは影を動かすのは得意じゃなかったな』
『す、すいません』
『謝らなくていいよ。あれは俺でも難しかった。
えーっと、だけどな、ステラには空間魔法がある。それを使えば問題は解決できるんだ。
あっ、もちろん空間魔法は……』
『バレなきゃいい、ですね!』
実体化させた影で、一直線に的を貫かせる!
本来ならこっからまた影を動かせればいいんだけど、難しい。だから私は……
貫いた影の先に、空間魔法を使い、再度的の方に向けて貫く。(先輩は『まるで理論上のブラックホールとホワイトホールみたいだな』って言ってた。)
そして、その貫いた影の終わりに、また空間魔法を使って的へ。
こうする事によって、私の感覚では影を一直線に出しているだけなのに、的の串刺しが出来上がった。
「闇魔法 [影縫い・ツナギミチ]!」
シュドッドドドッッドドドドド……
「「「………」」」
「これは……ったく、やっぱりアイツが関係していたかい」
あ、あれれ?
何これ。何この空気。私ダメたったの?
「せ、せんせ〜い」
「まさか自分以外の影をあれほど高速に、何か仕掛けあってのことか? だが一体どうやって………ハッ…な、なんだ?」
「私、ダメだっんでしょうか?」
「いやいや、そんな事はない!
あまりこういうのは言っちゃあいけないが、入学は確定だと思うぞ」
「良かったぁぁ」
先輩にいい報告が出来そうだ。
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ステラ
筆記300満点中290点
実技 特級
これにより、特待生とする。
なお、主席入学を決定する。
クラス1ー2
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