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神羅転生物語  作者: watausagi
最終章 降臨
130/217

孤児院と別れ

◇◇◇◇◇


今は春休み、俺は(依頼ではなく、俺の格好は死神ではない)孤児院についた。

なんとなーく、初めて来た頃を思い出す。

見た目こそ立派ではないものの、どこか暖かみを感じてたんだった。その時は分からなかったが、今ならわかる。

あそこには院長先生がいて、ちびっ子達がいて、だからこそ暖かいんだ。暖かいから、俺は多分……この孤児院を好きになったんだ。



「シンラさ〜ん!」


声のする方を向くと、孤児院の中からステラが飛び出してきた。

昔は真っ先に院長先生が来ていたんだが、いつの日かステラが1番になっていた。

ステラはスピードを緩めることなく、俺の体に抱きつく、というより突進をしてくる。


「っ……ステラ、今日は話があってきたんだから、ちょっと離れて……」

「話?」

「ああ、院長先生はいるか?」

「院長先生?

今は多分……こっち!」


ピシッと、院長先生がいるであろう場所を指差すステラ。

だが……


「降りてくれない?」

「やだ」


◇◇◇◇◇


ステラの指示通りに動くと、直ぐに院長先生は見つかった。

こちらを見てクスクスと笑っていたのは、俺の背中にステラがまだいるからだろう。

俺は院長先生に話があります。というと、院長先生の部屋に連れてこられた。


「ーーーそれで、お話とは?」

「はい、ステラの学園の事なんですが……」

「行く! 行くよ絶対!

シンラさん、ううんシンラ先輩!!」


せ、先輩!? ……いい響きだ。


「分かってる分かってる。それでな、ここから学園はちょっと遠いだろ?

だからステラは俺の家に来ないか、という話なんだが」


俺がそう言うと、ステラはピタリと動かなくなった。

顔は若干ひきつり、目が少し泳いでいる。


「せ、先輩の、家?」

「ああ、まさか嫌だったか? なら……」

「ううん! 嫌じゃない! 全然嫌じゃないんだよ!

だ、だけど……」


チラリと院長先生の方を向くステラ。

ここにきて俺もステラの考えいる事を理解する。

院長先生はというと、終始ニコニコ顏だ。


「どうしたのステラ?」

「ふぇっ…とっ……別に、何でもないよ?」

「だったら言えばいいのよ。

行きたい、と。

ただその一言を言うだけでいいのよ、簡単でしょ?」

「で、でも……」


ステラは困っている。意味もなくてをアタフタさせて、冬でもないのにタラリと汗をかいている。

院長先生はニコニコ顏。だけど、そこには見えない迫力があった。


「どうしたのステラ?」


再び、院長先生は同じ質問を繰り返すが、ステラは今にも泣きそうな顔をするだけ。


「わ、私は……」

離れるのだけは嫌(・・・・・・・・)、なんじゃないの?」

「っ!」

「これは離れるどころか、もっと近づくチャンスよステラ。

私の事はいいのよ。貴女は今までよくやってくれた。

ラルフも、お兄ちゃんっていう意識が出てきたし、

ステラが行きたいなら、シンラさんがいいと言ってくれてるのなら、

私からは何も言うことなんてないわ」

「院長先生……」

「……どうしたの、ステラ?」

「わ、私行くよ! それで、頑張るから! いっぱい頑張るから!

ありがとう院長先生! ……だから、えっと、準備! 私、準備してくる!!」


ガチャバタンッッ!!


何かに耐えられなくなったのか、ステラのは逃げるように部屋を飛び出した。

俺にはステラと院長先生の交わす話に分からないことがあったが、それきっと大事なことなのだろう。


「……寂しくなるわね」

「あー……それは、なんか、すいませんでした」

「ふふ、そこは謝るところじゃないのよ。

それにしてもシンラさん、貴方はやっぱり、ずるい人(・・・・)ね」

「?」


何か含みを持った言い方だ。

でも、やっぱり院長先生も寂しいだよな。いや当たり前だ。

でも、俺としては案の1つに、こことマイホームを空間的に繋げる、というのがあったが……雰囲気が言わせてくれなかった。


「何をそんなに変な顔をしているの?」

「変な顔って……」

「何でもいいけど、もうすぐステラがくるわ」


ガチャバタンッッ!!


「準備! 出来た!」


気配を察知なんて出来ない院長先生。なのに、こんな早くステラが来る、という事を予想していた。もはや予知していた……敵いそうにないな。


「ステラ、ちゃんとみんなにお別れをしないとダメよ?」

「そ、そうだった!」


ガチャバタンッッ!!


「あ、慌ただしいですね」

「それだけ嬉しいということね。

ーーーシンラさん、ステラの事を、よろしくお願いしますね」

「はい、もちろんです」


この後、ちびっ子達の泣きの合唱をバックに、俺はステラとマイホームに向かった。


◇◇◇◇◇


「へ〜! ここが先輩の家ですか〜!

今は誰が住んでいるんでしたっけ?」

「えっと、俺と妹と義妹と幼馴染と王女と努力家と幽霊」

「よ、よく分からないけど、多分きっと女性なんだよね。しかも、美人」


この少ない情報でそれが分かっただなんて、お前はどこのシャーロックだ。


「とりあえず中に入ろう。

ステラの部屋を決めないとな」

「はい!」


〜〜〜〜〜


「うわ〜!これは、うわ〜!」

「それは冷蔵庫」

「こ、これは〜!」

「ただの本棚」

「こっちも〜!」

「普通の椅子に普通の机。

なぁ、もういいだろ? 後は自分で調べてくれ」

「でもこれなんて、とってもフカフカですよ! 先輩もこっち来てください!」

「俺が創ったんだから、フカフカなんて知ってるよ……」

「いいから、いいから」

「おいそんなに引っ張るな……って、うおっ!」


俺はバランスを崩してしまい、ステラとベッドの上に倒れこんでしまう。

……視線の下、俺の影が揺らいだのは、気のせいじゃない。しっかりと兆候もあったし、つまり……というか今はそんなの関係ない。

このままじゃ、俺がステラを襲ってるみたいだ。


「悪いステラ。今すぐ離れて……おい?」


俺はステラから離れようとしたのだが、そのステラが俺の首をガシッと掴んだ。


「先輩……」

「ステラ、いやステラさん? なんかおかしいぞー、大丈夫かー?」


目、目が怖い怖い。

なんだその獣の目は? 俺獲物? 美味しくない、人間美味しくないからな!



ガチャ


「ここにいましたかお兄…様」

「ファナ、いやファナさん……」


目、こっちも目が怖かった。


〜〜〜〜〜


「す、すいませんでしたティファナさん!

あれは、その、なんというか……すいませんでした!」

「……ステラ、でいいのかしら?」

「はぃぃ!」

「そう……ステラ、別に気にしなくていいのよ。私はもう怒ってないから。

あれは事故だったんでしょう? ねえお兄様、あれは事故だったのでしょう?」

「お、おう、嘘偽りなく事故だった」

「なら、私から言うことは何もありません。

ステラ、今日からよろしくね」

「は、はい! ええと、ティファナ先輩!」

「せ、先輩!?……いい響き」


どうやら、ステラはファナと仲良くなれたようだ。

ハ、ハハハ……めでたしめでたし、だな。


◇◇◇◇◇おまけ


その夜。


「ファナ!?

俺が入ってるのになんで……」

「まあお兄様、これは事故ですよ。嘘偽りなく……ね」

「なっ……!?」


ーーーめでたし、めでたし。

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