光陰矢の如し
◇◇◇◇◇
生徒会室。
いつもはガヤガヤとしているが、今は違う。沈黙が場を制している。
そんな静寂世界を取り払うかのように、ペルセフォネ会長が口を開ける。
「し、しりとりをしましょう! しりと、り!はい、り!」
「「「……」」」
ダメだ会長。話題が尽きた時のしりとりは、それ即ち敗北を意味する。学校で、「次の授業何だっけ?」と同じ類だ。
「り……誰かぁ? り〜……だよぉ」
「ーーー会長も遂に終わりなんですね」
ミランダ副会長がズバッと切り出した。誰もがあえて口にしなかった、会長が逸らそうとしていた話題を。
「うっ……そ、そうね。もう会長じゃなくなるよね、私。
後は頼んだわよ、ミラーちゃん」
「寂しくなりますね」
「も、もうちよっと心を込めて言ってくれれば、何も言うことはなかったんだけど」
ガクッとなり、机を見下ろす形になるペルセフォネ会長。
……そう、今日は役員が変わる日なのだ。
「シンラくんは? シンラくんは私がいなくなって寂しい?」
「え、あぁ……とっても悲しいですよ」
「な、なんでここに居る人達って心がこもってないの……?
そうだ、ティファナさんは私がいなくなって寂しい?」
「……(ニコ)」
「無言で笑顔になられても……
これは最近気づいたんだけど、意外とティファナさんは優しくないのよね」
俺と似てファナは容赦ないからな。
流石に今のは流れに乗っただけだと思う……多分。
「もういいわ。 みんなヒドイんだから。
ミラーちゃん、話を進めちゃって」
「ではーーーまず、会長に代わり私が生徒会長となります。
副会長はシンラさん。会計はファナさん。書記はまだいないので、来年こそは見つけてください。
それと……会長」
「なーに」
「今までご苦労様でした」
「なっ……なななによ急に!?」
衝突にーー今度こそーー心のこもった言葉を投げかけられ、ほおが赤くなると同時に、軽くパニクるペルセフォネ会長。
「急に、ではありません。私達はずっと会長にかんしゃしていましたよ。
会長が会長で、本当に良かったと心の底から思っています」
「ミラーちゃん……」
「……と、シンラさんが言えとおっしゃいましたね」
あっ……
「え、シンラくん?」
「ええ。ちなみに『なっ……なななによ急に!?』という言葉も、シンラさんは予想していましたね」
「私って、一体……」
……誤解しているかもしれないが、何も全てが全て演技ではない。ただペルセフォネ会長を喜ばせるために、それっぽい事を言ったんじゃない。それはきっと正しくない。
確かに、俺がミランダ副会長にそう言えと言ったのは事実かもしれないが、それは副会長の気持ちを理解したからだ。
「全く、恥ずかしいなら恥ずかしいって言えばいいのに……」
「なんの事でしょう」
「いえいえ、何でもありませんよミランダ副会長」
俺は見た。
色々なプラスの感情が詰まったペルセフォネ会長の目に見つめられ、ほんのりとミランダ副会長が恥ずかしそうにしていたのを。
「な、何だか疲れちゃったけど、ぎゃくにこれが生徒会っぽくて安心したわ。
ーーーこれが最後だし言っておくけど、ここは私にとって楽しい場だった。最初は興味本位や色んな思惑が絡んでたんだけどね。
……ふぅー……シンラくん、ティファナさん、これから忙しくなるかもだけど、頑張ってね」
ペルセフォネ会長は最後にそう締めくくり、、このメンバー最後の生徒会が終わりを告げたという事だ。
結局、最後まで影の薄かった会計も、今日でお別れだ。
名前を覚えてないといったら双子書記も同じだが、双子書記は2年だし、来年も書記を務めるのだろう。
書記……か
◇◇◇◇◇
時が経つのは早く、あっという間に終了式が始まり、一瞬で終わった。
そういえばペルセフォネ会長……いや、もう違うか。セフォネが別れの挨拶をして、多くの生徒や、中には教師も泣いている奴がいた。
人望というか、結構慕われてたんだなぁ。……ミランダ副会長の目がキラリと光ったのは、見なかったことにしよう。
終了式が終わり、エドが泊りに来ようとしたが、流石に断っておいた。
春休みは、マイホームに1人増える予定だからな。
……遂に2年生。
ええと、何だっけ。……そう、魔王。なんか魔王が出るのはもうすぐなんだよな? まあ、大丈夫か。