天使なレティスと小悪魔レティス
◇◇◇◇◇
クスクスクス
ある所に、それは可愛い可愛いお嬢さんがいました。
名前はレティス。
レティスちゃんの性格は俗に言うマイペース。だけど、周りから愛されるのは、その誰もがうらやむ純粋さを持っているからでしょう。
そんなレティスちゃん、今日は休みだから家でゴロゴロしてるね。
コタツでアイスを食べ終わり、周りに誰もいないことを確認すると、2秒ほど目をつぶって、そしてガバッと起き上がると、家の中を探索したよ。何をする気かな?
………おや、おやおやおや?
レティスちゃん、そこは、シンラ君が創造魔法で失敗した物を保管している部屋じゃないかな? 勝手に入って、後で怒られても知らないぞ。
「……?」
あー、ダメダメだよレティスちゃん。どんなものかも知らずに手を出したら、とーっても危ないんだからね。
って、聞きやしないんだから。
「……(コクコク)」
飲んじゃった!
良い子になるクスーリ(効果は30分)を飲んじゃった!
一体どうなっちゃうのかな?
クスクスクス
◇◇◇◇◇
あれからちょっと経って、レティスちゃんはハッと何かに気づくと、部屋を出て、何かを探し出した。
お、どうやら見つかったらしい。
「……シンラ」
「ん……なんだレティスか。どうした? アメちゃんいるか?」
「……(ブンブン)」
「違う? じゃあ何か……って、レティス!?」
うわお大胆だよレティスちゃん。
シンラ君にむぎゅ〜っと抱きついたね。
「ど、どうした?
いつもより力が入ってる気が……」
「……ありがとうシンラ」
「ほへ?」
「……ありがとう、ありがとうシンラ。私、シンラに会えて、本当に良かった 」
「お、おぉ……」
「……本当に、ありがとう。
大好き、シンラ」
「っ!?」
驚いてるねシンラ君。というより戸惑ってるねシンラ君。
あんなに真っ直ぐ大好きと呼ばれたのは、案外初めてなのかも。
「え、えっと……レティス、本当にどうした?」
「……大好き」
「そっ…か……うん、嬉しいよ」
なんだかとってもいい雰囲気。
あらあら、レティスちゃんはシンラ君からたくさんお菓子を貰ったみたい。
これはラッキーだ!
◇◇◇◇◇
翌日。
またまた、レティスちゃんは例の部屋に来ていたよ。
「……薬、飲む。
……お菓子、貰える」
すごい発想だ。
薬さえ飲めば、昨日みたいに、たーんとお菓子を貰えると思っているらしい。
「……(コクコク)」
ああっ、飲んじゃった!
悪い子になっちゃうクスーリ(効果は30分)を飲んじゃった!!
これは大変だ。口元が怪しくゆがんだぞ!
クスクスクス
◇◇◇◇◇
レティスちゃんは台所に向かったよ。
でも待って、そっちは昼ごはんの準備をティファナさんが作ってる。
「レティス、ごめんなさい。まだ昼ごはんはまだなの」
「……だいじょぶ、だいじょぶ」
「そう?」
全然大丈夫じゃないよティファナさん。笑っているよレティスちゃん。
ほら、だって見て。ティファナさんがよそ見している間に……スープに塩を入れた! それもちょっとやそっとじゃない。大さじ×1000くらい!
「ん、何レティス?」
「……もう済んだ」
「そう? 良かった」
なんにも良くない! 何にも良くないよ!
このままじゃエステルがスープ一気飲みで、下手したら死んじゃう。
でも、今のレティスちゃんは、そんな事気にしない。今度は別のターゲットを探しに出かけたよ。
後ろから、「っ〜〜〜!!??」声にならない悲鳴が聞こえた気がする。味見……しちゃったか。
◇◇◇◇
おっ、次の標的が見つかった。
あれは、エステルだ。
何か大きな荷物を運んでいるみたいだけど、そんなエステルにレティスちゃんが近づき……ぶつかる。
ドンッッ
と、大きな音がした。
「いっ……てて……何なんだ」
「……」
「お前は確か……レティス?」
唯のレティスちゃんじゃない。小悪魔レティスちゃんだ。
「なぁ、まさかとは思うが、今わざとぶつかったか?」
「……」
「む、何か喋ってくれないと分からないぞ」
「……(ニタァ)」
「っ!!」
うわっ、レティスちゃんの笑顔怖い。
「い、一応聞いておくが、何でこんな事を?」
「……(ニタァ)」
「あ、あのなぁ! そんな笑みを浮かばれても……」
「ーーーどうしたんだ?」
おっと、これは急展開。
シンラ君が登場してしまった。
「シンラ! それがだな……」
「……」
エステルは何かを喋ろうとしたが、無言になったレティスちゃんを見てやめた。
「どうしたんだ、エステル?
って、その箱……」
「いや、その、すまない。
お前に運ばれていたこの荷物を落としてしまった。
……私の不注意が原因だ」
エステルの言葉を、レティスちゃんはジッと聞き、ニタァと……
「あれ? エステル、お前今嘘ついたな?」
「なっ……」
そうだった。
このまま何事もなく終わるわけがない。だって、相手はあのお兄さんなのだから。
「嘘だなんて、私は何も……」
「いや、嘘をついた。なんとなく分かったぞ。お前一瞬目が泳いだ。
で、なんで嘘なんかついたんだ?」
「シンラ! 私は嘘などついていない。
あの時、確かに私はうかれていたんだ。別にそいつがぶつからなくても、荷物は落としいたかもしれない」
「そいつ……って、レティスが?」
「あっ……」
思わずエステルは自分の口を抑える。
一方レティスちゃんは小さく舌打ちをした。……怖っ
「なるほど。レティスがぶつかったせいで荷物を落としてしまった。そういう事か」
「違うんだシンラ。
わざとぶつかってきたなんて証拠は、何処にもないんだ!」
「わざと……?」
「あっ……」
どんどん自爆している。
ワザとやっているのかと疑ってしまった。
「でも、ちょっと変だな。
なんでレティスがぶつかったのを言わなかったんだ?」
「うぅ……まぁ、そいつが悪気があってぶつかったかどうかなんて知らないし、それなら可哀想かと思ってしまったんだ」
「んー……話が微妙に噛み合わない。
よし……レティス、ちょっと聞きたいことがあるんだ。
ワザとエステルにぶつかったのか?」
「……ぶつかってない」
ダメだよレティスちゃん。嘘だって分かってしまったよシンラ君。
「っ……どうして? なんでこんな事を?」
「……信じてくれない?」
「いやだって……ん? ちょっと待てよ。
確か昨日のレティスも変だったよな。なんでだ? やけに優しかったというか、まるで強制的に、まるで薬でも飲んだかのように……ハッ、そうか分かったぞ。昨日は良い子になるクスーリを飲んで、今日は悪い子になるクスーリを飲んだんだな!」
(※シンラは天才です)
「そうかそうか、腑に落ちた。
ーーーなあ、レティス。お願いだからちょーっと近くに来てくれないか?
その薬の効果を消す……」
「……嫌」
「そ、そんなこと言わずに。なぁ? 良い子だから……いや、悪い子なのか」
「……絶対に嫌」
「うっ……しょうがない。こうなったら力づくでも戻してやる」
「……近づいたら、嫌い」
これはキツイ。シンラ君思わず足を止める。
「……それ以上は、嫌い」
「っ……い、いいさ! 別に嫌われたって構わない(泣)
俺が好きなのはいつものレティスであって、意地悪のレティスじゃない!」
「……くっ、離して!」
「離さないぞ、絶対に!」
「……うゔぅ、シンラなんか、シンラなんか……」
ー薬の効果が、今消えましたー
「……好き」
◇◇◇◇◇
あの後、たーんとお菓子を貰えたレティスちゃんだった。やったね。
めでたしめでたし