特待生パーティ……前日
◇◇◇◇◇
冬休みもついに終わり、学園初日で俺はまた挨拶なんかもして、案外楽しかった先生の話(貴族の力バランスをやんわりと伝えたり、クスッと笑うような魔物ジョーク。)も聞き終わり、宿題を提出して、この日は終わり。
レオやレミーそれとシェリーもいない久しぶりの家が、妙に新鮮に感じられた。
そうそう、夜中俺の部屋にファナが来なくなったのか、すっかりと安眠できる。
……だが、朝見ると何故かドアノブとか廊下の床が凍っているのだ。(ご想像にお任せしよう)
セレナは最近元気がない。蒼月紅陽輪(長いので今度からクルクルと呼ぶ)の件だとしたら、流石に悪い事をしたと思う。
……でも、何であんなに好きなんだろうな?(ご想像にお任せしよう)
レティスはあれだ、コタツの中で丸くなりながら元気にチョコレート食べてる。時々服がベタベタだ。
〜〜〜〜〜
ーーーそんなこんなで、明日は特待生パーティ。
学園ダンスホールで行われて、服装は自由である。……そう、自由なのである。
基本ドレスだが、別に鎧を着ていっても何も言われないし、家に代々伝わる民族衣装を着ていっても問題なしだ。
「お兄様、こちらとこちら……どちらがいいと思いますか?」
ファナが2つのドレスを交互に体の前に持ってきながら、そう聞いてきた。
ここで……「どっちでもいいよ」は、やめた方がいいんだよな。
だとすると、どちらがいいと聞かれたら……
「パーティには男もいるし、露出の少ないそっちの方がいい。似合ってるし」
「……判断基準が、露出の少ない?
わ、分かりました。ではこちらにしますね。
お兄様が似合ってると言うのなら、それは間違いなしです」
俺は何でそこまで信頼されてるんだよ……
「シンラ、私は何を着ていけばいいかしら?」
セレナが、ファナの選んだドレスをチラチラと見ながら、俺にそう言った。
「うーん……男装?」
「貴方が女装するならいいけど」
「そうだなー! やっぱりセレナにはこの赤いのがいいと思うぞー!」
「……」
俺は絶対に女装なんかしない。しないったらしない。
「……私は?」
「レティスかぁ……レティスはなぁ……もういっその事、着ぐるみでもいいんじゃないかと思ってるんだよ」
「……着ぐるみ?」
「興味があるんだったら、見た目はキューと一緒のやつを創ってもいいけど。(※見た目どころか、破壊不能、音声変換、土の中なら自由自在に動けるetc……)」
「……うん……うんうん……いい、それいい」
目をキラキラさせてるレティス。
するとどうした事か、俺の方をじーっと見てきて、そして面白いことを言ってきた。
「……じゃあ、シンラは、スライム?」
「いや、スライムって……」
その発想は俺にもなかった。レティスはさすがだ。
萌だえ死ぬ、じゃなくて悶え死にそうだ。
レティスの頭をナデナデしていたら、今度はエステルまでもが、何を着たらいいのかと聞いてきた。
「私は何を着れば良いのだろう?」
「甲冑でも着てればいい」
「……」
俺の事を一瞬睨んだエステルだったが、それもいいか、と小さく呟いた。
いいのかよ。俺、結構失礼な事を言った気がするのに。
〜〜〜〜〜20分後
「おぉぉ……」
こう見ると中々に圧倒される。
普段意識はしないようにしているが、やっぱり美女の類だもんな、みんな。
そして、こちらも普段は意識しないが……所謂貧乳が3人もいる。
セレナ(太った男子の方がまだある)・レティス(ちょっ、骨が痛い)・エステル(本人が気にしてないからいいか)。
一方、ファナとアティは、客観的にいっても大きいほうじゃないだろうか? 一般的な大きさが分からないから、なんとも言えないが、所謂美乳だと思う。
「っていうか、何でもう着替えてるんだよ?」
レティスとエステル以外、何故かみんなドレスを着ていた。
「明日の準備です、お兄様」
「脱がなきゃいけないんだから、意味がないだろう?
それにパーティは明日の夜だし、そんな急がなくても……」
「……シンラ、私のきぐるみは?」
「レティスも今着るのかよ……
しょうがない。じゃあ創るか」
「私の甲冑は何処なんだ?」
「んー……家を出て角を右に曲がって進んだら、しばらくして左に防具屋があるぞ」
「……」
俺の事を一瞬睨んだエステルだったが…………うん、今度は睨んだままだったので、仕方なくエステルの甲冑も創った。
ーーーこの後寝る時に、案の定ドレスを脱ぐ事になった。レティスとエステルに関しては、汗をかいてもう1度お風呂に入ったし、一体何がしたかったのか……
まぁ、何はともあれ、明日何を着ていくかも決まったし、準備は万端だ。
◆◆捕捉◆◆
エステルは、こちらに来た時に、特待生となったので特待生パーティに行ける。
アティは、特待生ではないが、王族だからOK。