雪合戦 罰
◇◇◇◇◇
「お兄様、今日こそ勝ってみせます……
クーネ! 修行の成果を見せる時よ!
〈セクス……フローズンカレント〉!!」
キュュュュン……シューブォォォン!!
氷魔法を習得したクーネが、最大威力の技をもってシンラに襲いかかる。
「それもう、雪じゃないだろ!?」
ドバッッンンンン!!
《………ゴクリ……さっきの衝撃で雪が舞い、よくシンラ選手の周りが見えませんね……
一体どうなったんでしょうか?》
「やったか?」
《いけません! エド選手の「やったか?」発言が出ました!
これはもしや…………》
そう簡単に、最強は負けない。
「ーーーフ…フフ……凄いぞファナ。まさか……本当に氷魔法を習得させるとは思ってもいなかった。
おかげで危うく凍るところだったよ……だが、俺も兄として…男としての威厳がある!」
《な、なんとぉぉお!!
シンラ選手無傷! 無傷です!!
あの威力をどうやってこんな……うん? 周りにあるのは……黒い……なんでしょうかアレは?》
《あれは……時空間移動魔法(適当です)。その名も[黒穴]。
シンラくんが、黒皇の銀狼……フェンリルを使役した時に使った魔法ね》
《何故そんな事を知っているのかは別として、その黒穴とはどんな効果があるのでしょう?》
《[黒穴]の真の力は、[白穴]が揃って、初めてその真価が発揮される……!!》
シンラが使った黒穴、これは最強の防御をイメージして作った魔法だが、ペルセフォネが言った通りそこで終わることはない。
「……っ…上!?」
《危ない!! 巨大な6つの氷の玉が、青コーナーの真上に!!》
「任せて! マネマネ!!」
《あぁぁあっあ! これは予想外!! ……というか私にとっては予想通り、ミミックが黒穴と白穴を真似た!!
今度はシンラ選手の右から氷の玉が……》
「甘い!
[黒穴]からの[白穴]!」
「マネマネ!」
「まだだ!
[黒穴][白穴]!」
「マネマネ!!」
「[黒……](詠唱破棄!)」
《あぁ……終わりなき戦いが、今始まったのね》
《見てるこっちとしては、欠片も面白くないですね》
《それをどうにかするのが、私たちの役割よ》
《っ…分かりました。
ーーー対をなす2つの黒穴と白穴! 互いに一歩も譲らないその精神力は、我々の理解を越えている!
2人の戦いは最早、誰にも止めることなどできはしない!!》
ある時は右からある時は左から、6つの氷の玉が、終わりを知らない力が互いを攻め合う。
「くそっ……きりがないな。
しょうがない……」
《っっっ………あれは一体!?
青コーナーの頭上に、もう笑うしかない程大きすぎる雪玉が急に現れた!!》
「創造魔法で俺が創った、物理無効魔法無効の超特大雪玉……絶対に勝利の雪だ。
……無駄なんだよシェリー。何を真似たところで、今それを防ぐ事は出来ない。
時魔法を使っても意味はなし。黒穴は論外。例えスノー・ウィンを真似たところで、それは上から下に落ちるだけの代物。相殺は不可能だ」
《もう何でもアリだー!!》
《本編じゃハーレム人生で男友達はエド君しかいないし、ストレスも溜まってるのよ。許してあげて》
無駄にこの世界で最強に近い雪玉が、青コーナーに迫る。
ファナ達は必死になってそれを防ごうとするものの、物理無効魔法無効は伊達じゃない。
「さ、さすがです…お兄様……」
ズドォォォーン!!!!
《…き…決まったぁぁ!! 勝者はシンラ選手!!
正直に言うと、彼が負けるのを見てみたいと思ってたりする私です》
《そんなの、神様くらいが相手じゃないと無理よ》
《ハハハ、そうですよねー》
◇◇◇◇◇
「さーて、負けた方は買った方の命令を、絶っ対に聞かないといけないんだったよな?
そうだよな? うん?」
「「「ひぃぃっ」」」
「泣いたって許さないぞ。1人だけっていうのは自分でも意外なほどイラっときたからな。何の罰がいいかな?
じゃあ……まずはファナ」
「は…はい……」
「そうだなぁ……1週間、俺が寝ている間に、俺の部屋に忍び寄ることを禁止する」
「き、気付いていたんですか!?」
「流石に毎日来られちゃあな……」
「はぅぅ……」
気配がしたと思ったら、目の前とかすぐ隣にいたりするから、びっくりするんだよ。
俺は気にしなかったんだが、気配がしたら起きてしまうのはもう反射的で、最近寝不足気味だったから禁止する事にした。
「続いてセレナ。1週間、蒼月紅陽輪を見てウットリするのを禁止する」
「知ってたの!?」
「流石に毎日してたらなあ……」
「うゔっ」
セレナはこれでよし。
次は……
「レティス……」
「……ん?」
「えっと……抱きつくの禁…」
「……(ふるふる)」←うるうるとした目で、横に首をふっている。
「じゃ…じゃあ……チョコ食べるの…」
「……(ふるふる)」
「コタツで丸くなるの….」
「……(ふるふる)」
「もう、許す!!」
「……ん」
負けたよ。俺は可愛さに負けちまったよ。
こんなの誰だって無理だろ……罰? そんなのレティスにある訳ないじゃないか。
「アティはチーズ1週間禁止だな」
「うっ………(ふるふる)」
「いや禁止だぞ? 何やってんだか……」
「……」
次は……
「シェリーはマネマネ禁止な」
「えっ、何で!?」
「だってさ、あれはズルいもん」
「自分の事は棚に上げて!?」
最後に……
「エドとレミーは、1週間、互いに口をきくこと禁止」
「そんなぁぁ〜!?」
「んん? 変な罰だな」
これで、よしとっ。
色々あった雪合戦だが、今日はこれで終わりかな。
「ーーーあれ……お兄様、エステルがいませんよ」
「えっ…?」
………確かに。
今日は1回もエステル見なかったぞ。あいつ何やってんだ?
◇◇◇◇◇
「ーーーおっ、いたいた。
なぁ、メリーとやら」
《何でしょう? 》
「起きたら皆が居なかったのだが……どこに行ったか知ってるか?」
《さぁ〜? クスクスクス》
「そうか………まぁいいだろう。
みかんだっけ、あれでも食べるか……」
《コタツに入りながら?》
「お前……話のわかる奴だな。
どうだ、一緒に食べないか?」
《…………クスクスクス……残念です。
今日は………無理、みたいです。またいつか誘ってください》
「なら仕方がない。気にするな。
ーーーそれにしても、本当にあいつらはどこに行ったんだ?」