デート
◇◇◇◇◇ー日曜日ー
今、俺の目の前で、コップが……コップが………消えた。
「やったよシンラさん!」
「うん、よく出来ているな……ステラ」
ステラは度重なる練習の成果、今日で空間魔法の基礎を習得した。
因みに俺の事をシンラと呼ばせてるのは、来年から始まる学園に向けてだ。
死神さんと呼ばないようにする為だ。
「でもあまり人前では使うなよ?
かなり、厄介な事になるからな」
「分かってる、分かってる。
……それで、その………ご褒美が欲しいかな〜……なんて……」
「ご褒美?」
ご褒美…ご褒美……うーん?
別にいいけど、何か欲しい物でもあるんだろうか?
「何か欲しい物でもあるのか?」
「欲しい物っていうか……欲しい者?
ーーーだからね、その……王都で買い物がしたいかな……なんて……」
なるほど、王都に欲しい物があるから買ってほしいという訳だな。
ステラも女の子だ。色々と見た目を気にする年頃だろうし、アクセサリーとかかな?
別にそんな事しなくても可愛いんだけど……女心ってのはよく分からん。
「じゃあ時間もあるし、今から行こうか?」
「うん♪」
◇◇◇◇◇
王都に出ると、今は日曜もあってか人が多い。
まあ、ここはいつも人が賑わってはいるんだが……
「ーーーあっシンラさん。
あれって美味しいんですよ! 私買ってきます!」
「あっおい……」
……俺が買ってきても良かったのに。
◇◇◇◇◇ーステラsideー
ム、ムムムリだよぉ〜。
恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい!!
………勢いで誘ったのはいいんだけど……周りの視線がキツすぎる!! (シンラさんは気がついてなかったけど……)
ああ……周りからは恋人だなんて思われてるのかな?
って、そんな訳ないよね。私じゃ釣り合わないだろうし……でも、いつかは……
『あなた……』
『どうしたんだいステラ?』
『私……今幸せです///』
『そうか……俺もだよ』
そして、いつか子供も欲しい…………
「それでお嬢ちゃん、串焼きは幾ついるんだい?」
「子供は……2人欲しいですね」
「はぁ……?」
◇◇◇◇◇
おっステラが帰ってきた。
でも……あれ?
顔が赤いし……それに手ぶらだ。
「ステラ、何か買いに行ったんじゃないのか?」
「あ……それはもういいです。
また行くのは恥ずかしすぎます」
なんのこっちゃ
〜〜〜〜〜
「シンラさん、少し遅めですがお昼にしましょう」
「そうだなぁ……どこで食べる?」
「あ…あれがいいです///」
「ん? ……アレか」
ステラが行きたいって言うならいいけど……俺は気がひけるな。
なんかカップルが多い。
〜〜〜〜〜
「ご注文は何にしましょう?」
さて、何にしようか……
「シンラさん、私が頼みますね!」
「お、おう……」
妙に張り切ったステラに俺は断れなかった。
まあ美味しかったらいか……だけど、何かを注文するステラに、微笑ましく見つめる店員が気になった。
〜〜〜〜〜
ーーーしばらくして、ステラが選んだであろう物が届いた。
見た目はシホォンケーキ。それにハチミツみたいなのが添えてある。
さあ食べようとしたんだが……
「あれーフォークが一個しかありませんー。
こ、これはしょうがありませんねー。私が食べさせますよ。
シンラさん、口を開けてください///」
「いや、店の人に言えば……」
「口を……開けてください……」
「だから……」
「口を…えっぐ……開けて…えっぐ……くだざいよぉ……」
「お、おいステラ!?
分かった分かった。口を開ければいいんだな?
ほら、あーん」
「……はい、……あ〜ん///
……美味しいですか?」
「ああ、美味しいよ」
「本当ですか? 良かったです」
ふぅ〜、いやービックリした。
急に泣き出すんだからな、何事かと思った。
「シンラさん」
「どうした?」
ステラはふぅ〜と言った後、フォークを置いて言った。
「う、腕が疲れちゃいましたー。
で、でも食べたいなー食べたいなー」
……そんなにひ弱だったっけ?
「……ほら、あーん」
「あ〜〜ん♪
ん〜〜〜っ! 美味しいです///」
「そうか、それは良かったな」
「はい♪ それじゃあ次は私が……」
「あれ?腕が疲れたんじゃなかったっけ……」
「うっ……」
◇◇◇◇◇
昼ご飯を食べた後、他にも色々なところをまわり、時々何かを食べたりしながら、その日は終わった。
「今日はありがとございました、シンラさん」
「別に、これくらいはなんともないよ」
「じゃ、じゃあまた今度も一緒にいいですか……?」
「ああ……またいつかな」
「はい、約束です♪
ーーーそろそろお別れです……さよならシンラさん」
ステラは最後に手を振ると、孤児院に帰り……その姿は段々と見えなくなった。
……あれ? 結局欲しい物ってなんだったんだ?
俺なんにもあげてないんだが……