お久しぶりの死神さん
◇◇◇◇◇
もうすぐ魔物競技大会がある。
だから気分転換として久しぶりに依頼を受けようと思ったんだ。
いつものようにギルドには入り、俺の姿を見ては怯える者が続出。それはシルヴィア以外の受付嬢も同じ。
ちょっとその態度はないんじゃないの? とは思うが口にはしない。
俺のこの格好の所為だからな……
俺は諦めて依頼掲示板の前に向かうと、何か変な子がいた。
「う〜〜〜ん……う〜〜〜ん。
はぁ……う〜〜〜ん………」
何か唸っているが、うるさいから投げ捨ててもいいだろう?
いや、それは流石に非道いな。
「う〜〜〜ん………あっごめんなさい! 私、邪魔でしたね」
「ああ」
「…………正直者、と言えばいいんでしょう?」
「どうでもいい。邪魔だからどいてくれ」
「うっ…すみません………ん?
あれれ? も、もしかして貴方は死神さんですか!?
うわ〜本物? 本物なんですか!?」
変な子は、なんか急に目をキラキラさせながら俺に詰め寄ってきた。
「す、すごいな〜!!
この全身真っ黒という、聞いただけじゃ意味の分からない服装!
一見アホらしい変な形の鎌!
腰にぶら下げてる可笑しな鉄? の塊!
今そんなに寒くないのに、マフラーなんてつけて絶対に暑いだろう!!
全部本物の死神さんじゃ……きゃっ!?」
投げ捨てた。
「いててて……もう、非道いじゃないですか!
お空飛んじゃった気分ですよ……急に何なんですか?」
「人のことバカにしておいて、よくそんな口が聞けるな」
「そんな、とんでもありませんよ!!
私の憧れですよ死神さんは!!」
またこいつは俺に詰め寄ってきた。
「私ことロミナは、死神さんを尊敬しております!!
好きと言っても過言ではありません!」
もう帰ってくんないかなぁ……
「僅かな時間……そう、最短記録でSランク冒険者となった死神!!
その名前、顔は誰も知らず、正直言って胡散臭くて怪しい……きゃっ!?」
投げ捨てた。
「さて、依頼は何にしようかな……
ーーーうん、やっぱりシルヴィアに聞いた方がいいな」
俺がシルヴィアの所に向かおうとすると、誰か……いや、ロミナに足を掴まれた。
「待って下さい〜私の話を聞いて〜……」
「くっ……離れろチビ!」
「なっ…誰がチビですか、誰が!」
「お前以外の誰がいるっていうんだ……よっ!」
「うわっと……ふんっ、私はまだまだこれからです!
胸だってきっと大きくなるんですから!!」
「知るか! お前のその2つの小山に成長なんてない!
いい加減に離さないと、今度こそお空に飛ばせてやろうか!」
「ぐぬぬぬ……離しませんっ!!」
鬱陶しいので魔法を使って強制的に離させようとしたら、ここで救世主が現れた。
「ーーー何をしているんですか、死神さん」
「シルヴィア? よかった、こいつをどうにかしてくれ。邪魔でしょうがない!」
「冒険者は自由ですから……」
「いやいやそんなこと言わないで、お前しか頼れる者がいないんだ!」
「っ……コホン……
ーーーさて、貴女は何故死神さんにしがみついているのですか?」
おおーどうにかしてくれるらしい。
流石シルヴィアだな。
「……」
ーーー何も言わないロミナ。
しかし次の瞬間、こいつはとんでもない事を俺に言った。
「……パパー…私、1人じゃ寂しいの」
「なっ……!?」
ロミナは俺の驚きを無視して、今度はシルヴィアを指差しながら言う。
「ねーねーパパー。今度もまた違うママなのー?」
「お、お前……!」
「ーーー死神さん」
「っ!……は、はい…………」
シルヴィアの今の状態は、怒った時のファナと似ていて怖かった。
おかしいなー……シルヴィア氷魔法使えないはずなのに、俺の体は震えているよ。
「娘さんがいるとは……私、知りませんでした」
「いやちょっと待とうぜ?
少し考えてみれば……」
「違うママ?
一体死神さんは、これまで何人もの……」
「だからおかしいだろ?
これはこいつの冗談……」
「受付……終了です!!」
シ、シルヴィア〜〜〜!!
あっ……あっ……ああ…………救世主は何処かへと消えてしまった。
「……はぁ」
「どうしましたパパ?
ママに捨てられちゃいましたか?
安心してください、私はパパの味方ですよ」
「……………はぁ」
ーーーこの後、俺の必死の説得により、どうにかシルヴィアの誤解は解けたのだった。
◇◇補足◇◇
必死の説得 具体例
まず、耳を塞がれても大丈夫なよう、シルヴィアの頭の中に話し掛ける。
この際、何度も何度も同じ言葉を言うことで、説得力UP
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俺の年とロミナの見た目を考えて、必然的に子供じゃないという事を説明。
その際、余計なことは言わないようロミナの口は縛る。
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シルヴィアを褒めまくる。(これが一番効き目が良かったのは、俺の気のせいだろうか?)
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