表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/17

つんでれダンジョン・第九話『全てが叶うわけではない』




ハァー。まぁた、おめえかよ。



てめえが初めてここに来てからもう一年だぞ! もう来んなって、一体なんど俺に言わせりゃ…

って、おめえ、ずぶ濡れじゃねえか! 傘ぐらいさしとけバカヤロウ!



…ったく、ラストダンジョンに雨宿りにくるたあ、てめえぐらい、



あぁん? 何だよ。



…おめえ、泣いてんのか?



つーか、おめえが抱えてんの、あの馬鹿犬か?



死んだんか…、コイツ。



まあ…、随分歳いってたみてえだからな。寿命だろうな。



…ちっ、何でそんなモンここに持ってきやがるんだよ。ここは葬儀屋じゃねえ、ラストダンジョンだよバカヤロウ……。



泣くんじゃねえよ。寿命いっぱい生きられたんならそれでいいじゃねえか。



おら、とっとと帰ってソイツ庭に埋めてやれや。てめえもそんなナリじゃ風邪引いちまうぞ! バカでも風邪は引くんだからよ!



・・・・・・・・



…あぁん? 今なんつったおめえ?



・・・・・・・・



…バカかてめえは!? 生き返らせねえかって、無理に決まってんだろが!



オレはなあ、ラストダンジョンだ! 神様じゃねえんだよ! オレにだってできねえコトはあらあ! 



とっとと帰ってその犬っころ眠らせてやれや! おれにゃあ何も出来ねえんだよバカヤロウ!



…ああん? そんなこと無いだと? …世界樹がこの中にあるって聞いた?



…って、てめえ! 誰に聞きやがったよ、ンナこと!? ウチに世界樹が有ることなんざ今じゃ殆ど誰も知らねえはずだぞ!



・・・・・・・・



…けっ、誰に聞いたのかは知らねえがよ、確かにウチには世界樹があらあな。



世界の七不思議の一つ、この世界の最も深い場所に根付く、最も古い生命でよ。

確かに世界樹の葉には、死んだものを生き返らせる効果があるって言われてるわな…



…だがな、その犬じゃあ無理だ。命数が尽きちまってんだよ。

怪我で死んだんなら世界樹の葉で生き返らせることもできるけどよ、寿命じゃあどうしようも出来ねえ。そういう決まりなんだよ。



…てめえら生き物はな、いつか死ぬんだよ。



命数が尽きるまで生きられたって事は幸せな事なんだよ。

ほら見ろや、アホ犬らしいいい死に顔じゃねえか。てめえが泣いてちゃ犬っころもうかばれねえぞバカヤロウ。



分かったか? 分かったな? 



……分かれよ! なんで分かってくんねえんだよ、バカヤロウ! 泣くんじゃねえよバカヤロウ!



はあ!? お願いだから世界樹の葉をくれって? 試してみてえって?



…って、てめえ、化粧品のお試しセットじゃねえんだぞ!



世界樹は12年に一度しか葉を落とさねえんだぞ! 超貴重なんだよ! 

無理とわかってんのに試すような気安いモンじゃねえんだよこのクソガキが!



おら、世界樹の事は忘れて、とっとと帰って家で体拭いとけ! 風邪引くっつってんだろうがバカヤロウ!



…だから泣くなっつってんだろうが! 無理だっつっうのが分かんねえのか! 分かってくれっつってんだろうが!



泣いても運命が覆るわきゃねえだろうが! これだからガキは大っ嫌いなんだよ!



・・・・・・・・



・・・・・・・・



……あー! うるせー!



てめえコラ。泣いたらなんとかしてくれるとか思ってんじゃねえだろうな!? 

俺はラストダンジョンだぞバカヤロウ! ガキのお守りが仕事じゃねえんだよ!!



いい加減なきやめっつってんだろが!! 泣き止まねえならモンスターハウスに放り込むぞ!!!



・・・・・・・・



・・・・・・・・



今すぐ泣き止まなきゃ本当に放り込んでやるからな! 言っとくが脅しじゃねえぞバカヤロウ!



・・・・・・・・



・・・・・・・・



これが最後の忠告だ。今から10数える内に泣くのやめてウチに帰れ! さもなきゃ10秒後にはここはモンスターハウスだぞ!



いいな? 数えるぞ!




10! 9! 8! 7! 6! 5! 4! 3! 2! 1! ………ゼロ



・・・・・・・・



あー!!! もう! わかった! わかった! わかったから泣き止めって、壁に反響して五月蝿えったらありゃしねえんだよ!!



…ったく! 特別大サービスだぞ! いいか? こういうのこれが最後だかんな! 

ホントのホントに最後だかんな!!



‥って、てめ! 壁にすがりつくんじゃねえ! 鼻水つくだろうが!

きたねえんだよバカヤロウ! ありがとうじゃねえよバカヤロウ!!



…このクソジャリが! 喜ぶなやバカヤロウ…。



オイクソガキ。最初に言っとくけどな、期待はするんじゃねえぞ。コイツは絶対に生き返らねえ。それが道理ってもんだ。



だからよ…、生き返んなくても泣くんじゃねえぞ。約束できるか?



…おう、忘れんなよ。



ちょっとまってな、今繋げるかんな。



…ったく、あれをここまで持ってくんのは、大変どころの話じゃねえっての。

わかってんのか? わかってねえんだろうなあ、このクソ幼女は…。



…っち、気合入れて一気にやるか。 よーく体をほぐして…、いっせいのーで…、オラアァァァァア!!!!!



・・・・・・・・・



・・・・・・・・・



…ふう、…ふう。…どうよ、コラ? 声も出ねえだろうが?



これがうちの自慢の世界樹よ。



すげえだろうが、ホントなら地下99階だぞ!

いままで世界樹を拝んだ人間なんて片手で数えるほどしかいねえんだからな!



おら、ぼーっとしてんじゃねえよ! 世界中の根元まで行って頼んでみろ、葉をくださいってな。



・・・・・・・



・・・・・・・



…おうよ、それが世界樹の葉よ。…あぁん? 綺麗だって?



ったりまえだバカやろう。世界樹の葉だぞ! それ一枚で城が10個は買えらあな!!



おら! それをすりつぶして馬鹿犬の口に放り込んでみろ。ああ、そうだ。



・・・・・・・



・・・・・・・



・・・・・・・



・・・・・・・



…だから最初にいっただろうが、寿命だってよ…。



・・・・・・・・



・・・・・・・・



…ごめんなさいじゃねえよバカヤロウ、俺にも、ましてやその犬っころにも詫びはいらねえよ!



…けっ、高え授業料だぜ、畜生が…



・・・・・・・・



…いいか? おめえら生き物はよ、産まれて、産んで、死んで、そしてまた産まれての繰り返しなんだよ。



てめえもな、いつか誰かを産んで、それで死んでくんだ。 



覆せねえ事だし、覆しちゃいけねえ事なんだよ。わかったか、ばかやろうが。



…ああん? おれか? おれはおめえらより、ずーーーーーーっと、寿命は長いんだよ。



オレの死ぬときはこの星がなくなる時だわな。

だてに、何億年もダンジョンやってねえよ。



‥はぁ? 寂しくねえのかだと!?

‥って、てめえ! だれにむかって口聞いてんだよ! このクソ幼女!

あぁ? 私だったら寂しい? テメエの物差しで他人の心測ってんじゃねえよ! 知った事かよこのクソガキが!



……けッ!、 ガキの癖して生意気なんだよ、まったく…。



・・・・・・・・・



・・・・・・・・・



おうコラクソガキ。ソイツを世界樹の根本に埋めてこいや。



世界樹っつうのはな、この世の全て生死を司る存在なんだよ。

だからよ、世界樹がまだ地上にあった頃には、みんな世界樹のふもとに大切な誰かを埋めていたのよ。

いつかの日かまた、別の命でもう一度出逢えることを信じてよ。



だからな、世界樹のふもとに埋めるっつうことはよ。また会いましょうって意味なんだよ。



いつかおめえもアイツに会うことができるからよ。「またね」っつって埋めてこいや。



バカ犬がどっか行っちまわねえように、ちゃんと見張っといてやるからよ。



…おうよ、任せとけやバカヤロウ。




・・・・・・・・



・・・・・・・・



…ほら、とっとと埋めて来いや。世界樹が待ってんぞ。



…おうよ、そこに穴掘って埋めろや。



…そうだ、それでいい。



…けっ、葬儀屋じゃねえつってんだろうが、バカヤロウ。



・・・・・・・・



・・・・・・・・



・・・・・・・・



・・・・・・・・



・・・・・・・・



・・・・・・・・



…おら、そろそろ気は済んだか? 気ィ済んだならもう帰れや。日が暮れちまうぞ。



…どうしたんだよ? あぁん? 犬埋めたとこから芽がでてきただ?



‥って、オイ、コラ世界樹! ガキだからって甘やかしてんじゃねえよ! 

…はぁ? んだとコラ。余計なお世話だバカヤロウ! あぁん!? …てめっ、何ぬかしてやがる! 

わかったような口聞くんじゃねえよ! これだからガキとテメエは気に食わねえんだよ!

…ちっ、まあいい! てめえとの話は後回しだ。



おいコラ、くそ幼女! その芽を土ごと掬ってそうっともってかえんな。



それでそれを庭に植えろ。大事に育てな。一万年はいきるからよ。



あぁん、これは何だだと? 世界樹の眷属の芽だよバカヤロウ!



その側に住むものをあらゆる病気から守るって言われててな、世界中の葉と同じぐれえ貴重なんだよ。…ったくガキに与えるようなシロモンじゃねえだろうが。



あとはまあ、さすがに死人を生き返らせるような効果はねえが、そいつの葉っぱは強力な万能薬にもなるからな。植えといて損はねえさ。



・・・・・・・・



…あぁん?



…おうよ、あの犬の生まれ変わりだよ、バカやろう。



・・・・・・・・



・・・・・・・・



…だから泣くなつっただろうが、バカやろう…。







【戦利品ファイル】

No.6 賢者の木(芽)

アイテムランク SS

世界樹の眷属の木。幼女の家の庭で育つことになる。

その側に住む者達のあらゆる病気を予防し、葉には体力回復と解毒・解麻痺の効果がある。

樹高は大きくなっても4m程度で、それ以上育つことはない。

聖人や賢者の墓から稀に生えてくる事が有るらしく、世界に3本程現存している。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ