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数え切れない星の中に  作者: ニャア
再び。夏休み
8/8

真っ白な髪。

紅の瞳。タクツさんとそっくりの顔。


「おっ…、前、いつの間に」


身構えた俺を無視して、その男はタクツさんに近づいた。俺は唖然として、二人を見つめる。まるで、色を映し間違えた鏡を見ている気分だ。


白い人が言った。

「お前さぁ、こんなんじゃ丸一日かかるぞ。分かってんのか?」


タクツさんは、顔をしかめて言い訳する。

「今から言うつもりだった。白が邪魔したんだ」

「うっセ!さっさとやれ!」

「白こそ黙ってろよ!邪魔しないでくれる?」

「俺はグダグダ話してるお前にだな…」

「余計混乱させてどうする?!」


ー…。喧嘩を始めた。


「いっつもいっつも白はー…」

「お前こそ何時間もー…」


俺は、そっと部屋を抜け出して、台所に行った。母親に、自分で麦茶を持って行くと言って、それを受け取る。二つしかないため、もう一つ入れる。


俺が上に行くと、餓鬼のように喧嘩する二人がいた。俺はひとまず声をかけて、麦茶を提供する。


「あ、ありがと」

「どうも、ユーマ」


それぞれ一気に飲んで落ち着いたのか、喧嘩は止まったらしかった。


改めて白い人が俺を見る。


「よう。俺はツクタ。まあ…、こいつとは双子だと思ってくれればいい。深く考えんな」


そう言われても…、と心の中で突っ込んで、俺は返事をした。変な人だと思う。


「って事で、お前を拉致る。準備しろ」

「はぁっ!?」


慌ててタクツさんを見ると、彼は黙ったまま首をくすめた。反対しない所を見ると、彼も同じような事を言いに来たのだろう。


「詳しいことは、追々話してく。今は準備しろ。部活の合宿でも行くって親に言っとけ。いいな」


俺は、訳が分からないまま頷く。


それから何秒か考えて、

「ってどこ行くんですか!?どうして俺?」

と叫ぶ。


白い人…ツクタさんが、耳を塞いで俺を見た。その顔にはハッキリと、うるさいと書いてある。


「バレると困るから、なるべくの情報は隠すことになっている。大丈夫だ、あと、えっと…」


「三人」


タクツさんがそう言った。白い方が、そう。三人。と肯定する。


「君と同年代の子が三人いる。短い間だけど、いい子ばかりだよ。仲良くしてやってね」


そう付け足して、タクツさんは笑った。


「明日また来る。せいぜいママと、さよならのハグでもしてな」


「こらっ、白!言い方が…」


タワツさんが、またツクタを睨んだ。

また喧嘩になりそうだったため、俺は勝手にうなずく。


「準備しとけば良いんですね?」


二人が驚いたように此方を見た。

何秒かの沈黙が流れる。


何かまずったか?


と一瞬俺は冷や冷やしたが、ツクタの方がうなずいた。まるで、訝しむように俺を見たまま。


それからまた、何秒かの沈黙が流れる。


その沈黙に耐えかねたらしいタクツさんが、


「じゃあ…、今日はこれで。また明日」


と言って立ち上がった。ツクタも彼に続いて立ち上がる。ずっと、俺を見たままだったから、少し気味が悪かった。


* * * *


タクツは、携帯をいじりながら歩いていた。隣りには、当然のようにツクタがいる。二人して黙ったまま歩いていたが、唐突にタクツが話しかけた。


「どう思う?彼」


ツクタは、チラリと彼を見る。興味なさそうな、つまらなそうな顔だった。今だに携帯をいじっているタクツを見て、小さくため息をつく。


「怪しい、と言えば怪しいな」


やっぱり?とタクツが言う。携帯を閉じて、ポケットにしまった。


「あんなに簡単に落とせるなんて、まずおかしいだろ。他の三人は、もっと食ってかかってきた」


「だよね」


タクツが、空を見上げて返事をする。少し雲のある、真っ青な空。自分まで吸い込まれていきそうなほど、その色は濃い。


「で、今誰にメールしてたんだ?」

「キエラ。両親は元気だって。生きてるって言わないのかって愚痴付きで」


ツクタがケラケラと笑う。

あの幼なじみちゃんか~、と呟いた。


それっきり、会話はなかった。


 遅い。って自分に突っ込んでます。

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