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数え切れない星の中に  作者: ニャア
再び。夏休み
7/8

ストーリ一上の第二部です。

 カタカタカタ…。


パソコンのキーボードを打す音が、日の光りの差し込んだ部屋に響く。


 カタカタカタ…。


「悠真。学校の先輩方よ」


母親だろうか、ユーマと呼ばれた青年の手が止まった。途端に、部屋は静寂に包まれる。


「先輩?…、ふぅーん、こっち呼んで」


扉を隔てて、青年は母に言った。

母は少しの間迷っていたが、すぐに階段を降りる音に変わった。


青年はため息をついて、パソコンの電源を切る。


「先輩って…、仲のいい人いねぇし」



呆れたように、そう呟いた。


* * * *


俺は、神汀 悠真。


高校一年生、一応運動部。彼女募集中。

友達はパソコン。趣味はゲーム。


という一般的な高校生だ。

まぁ、一般的なダメ男とも言う。かもしれない。


「本当、ごめんなさいね。我が儘な子で…」

「いえ、お構いなく」


母が必死に謝る声と、男の声が近付く。


「えぇ、この部屋です。隣り?気にしないで下さい」


「ありがとうございます。本当、お構いなく」


そう言った後、すぐに扉をノックする音になった。俺は適当に座れる場所を作り、返事をする。


「どーぞ」

「お邪魔します」


そう言って入ってきた男はー…。


「えっと…、あんた誰?」


俺の知らない男だった。


「初めまして。田辺 拓付、タクツと言います」


俺よりも少し年上だろうか。

まだ青年を抜けきれていない顔は、しかしどこか余裕のある表情だった。


「嘘、付いたんですか?」

「まぁね。一番手っ取り早い方法だし」


警戒心剥き出しの俺に苦笑して、ベットの上に座る。せっかく下を綺麗にしたのに。


「何のために?」

「君は、ユーマ君だったよね」


俺の質問を無視して、タクツは笑った。いつの間にか名前もバレてる。母さんが言う訳ないから、なら俺の事でも調べたのだろうか。


「部屋のプレートに」


…、違った。


「で、タクツさん。嘘付いてまで俺に何の用ですか?理解出来ません」


噛み付くように尋ねた。タクツは、それも笑って誤魔化す。その時、胸のペンダントが光った。



少し歪んで、赤黒い。


「銃弾、の…?」


やけに生々しく、背筋が冷たくなった。


「最近流行りだよ。知らない?」

「えっ、あ、そうでしたか…」


ジッとそれを見つめる。タクツは、それを持ち上げて見やすくしてくれた。


最近の小物は、やけにリアルだ。


「ありがとうございます」

「いえ、どういたしまして」


そう言って笑う姿は、あくまで悪い人には見えない。だからこそ余計に、嘘を付いてまで会いき来た理由を知りたかった。この人はどうして、何のために、俺なんかと会うのだろう。


「えっ、と。本題に入りたいんだけど…、ユーマ君はいいかな?」


「え、あ、はい。大丈夫です」


どことなく背筋をのばす。

タクツさんは笑ったままだったが、真剣な瞳になった。


そして、ゆっくりとロを開く。


「ぼ「僕と駆け落ちして下さい」


「「はぁ!?」」


そう言ってから、タクツさんまで叫んだ。

慌てたようにペンダントを握る。


俺は唖然と彼を見ていた。

こんな事、ありかよ…。


「何言ってんだ、バカ!勘違いされたらどうする!?ったく、本当に、あぁ~もう!」


誰に言ってるのだろうか。

そう言ってタクツさんは、ペンダントを投げる。


あまりにも荒っぽい動作に、俺は再びポカンと彼を見た。それに気付いたタクツさんが、オロオロと俺を見る。


「あー、これはね、えっと…。僕が言ったんじゃなくて…ね。うん」


そんな事言われても、今ここには俺と彼しかいない。俺が違うなら、タクツさんだろう。声もタクツさんのものだったし…。


困惑している俺に向かって、タクツさんは苦笑した。そして急に、顔が固まる。


俺の、後ろ?


彼の目線を追った先には…─。




いつの間にか、もう一人の男がいた。






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