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あなたの隣に  作者: ミサ
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再会

「君の隣に」のメイ視点です。

よろしければ、お付き合い下さい。

「俺も女で背の高い奴は好きじゃない」

 彼のその言葉は私の胸に突き刺さった。

「ごめんね……」

 泣きたい気持ちを抑え、早く彼から離れたくて走って逃げた。

 中学1年---私の初恋が終わった瞬間だった。



 麻生五月---それが私の名前。でも、今はメイという名前でモデルをしている為、ほとんど本名で呼ばれる事は無かった。

 身長が175センチある為、街を歩いていると目立ってしまう。振り返られることも度々ある。

 それでも、仕事の時だけはこの長身を気にしないでいい。むしろ長所になっている。

 【next】の渡瀬社長がある日、私をスカウトしてくれた。最初は何の冗談だろうと相手にしなかったのだけど、あまりにも真剣な態度に負けて事務所に入ったのが、この世界に入るきっかけだった。

 仕事は楽しい。コンプレックスがこんな風に役に立つなんて思ってなかった。

 彼氏は残念ながらいない……やっぱりこの長身だと、男の人も躊躇うのだろう。全くいなかった訳ではないが、やはり周りの好奇の目には敵わないようだ。気が付けば自分よりも小柄の可愛い女の子に横取りされているという情けないパターン。もう、半分諦めてますけど。

 そんなある日、私に思いがけない再会が待っていた。

 できれば会いたくない人だった……



「あ、もしもし、私よ。今どこ?悪いけど今すぐ事務所へ来て」

 一方的に言うと、私の『オフなんですが』の返事の途中で通話が切れた。

 久々の休日に、社長である渡瀬さんからの呼び出しだ。

 なんだろう?社長はこんな風にいきなり呼び出す様なことをする人ではない。訳がわからないまま慌てて準備をすると、愛車である自転車に乗り事務所である【next】へ向った。

 事務所に着いたのは電話があって1時間後だった。額に汗が滲んでいる。

 息を整え扉を開けるも、勢いがつきすぎてしまった。

「メイ、遅いわよ!すぐ来てっていったわよね?」

「…これでも急いで来たんですが。それに今日はオフなんですよ」

 社長に文句を言いかけて、他に人がいる事に気づいて黙った。

「この娘が、メイです」

 その時、部屋の中にいた2人が席を立って私の方を向く。

(この人、背が高い)

 私が175センチで少し見上げる位だから、180センチ以上はあるはず。その彼が名刺を差し出した。

「初めまして、【グローリー・コーポレーション】の朝倉と言います」

 名刺を受け取り、そこへ印字された名前を見て驚いた。

 −−朝倉大樹−−

(まさか!)

 思わず相手の顔を見ると、精悍な顔立ちをしていて、私が知っている--彼--のふっくらした温和な顔の面影は無かった。

 同姓同名の別人?

「あの…名前はなんて読むんですか?」

「ああ、ひろきです」

「…そうですか」

 間違いない、--彼--朝倉君だ。

 私は動揺を隠すのに必死だった。

「初めまして、メイさん。私は【アンジェリア】のチーフデザイナーの雪村瞳子といいます」

 彼の横にいた女性に目を向けると小柄で可愛らしく、私が『こうなりたい』と思い描くような感じの女性だった。

 私は簡単に自己紹介をすると、渡瀬さんの方へ向いた。

「社長、一体何なんです?休みにわざわざ呼び出すなんて」

「メイ、あなた【アンジェリア】のモデルになれるならどうする?」

 そう言うと、私に契約書を手渡す。

 その書類の内容に目を通すと、私は社長にそれを押しつけた。

「無理です!私に【アンジェリア】のモデルなんて!それに唯香さんがいるじゃないですか。彼女には敵わない」

「メイちゃん、私があなたがいいって言ったの。お願い」

 雪村さんや社長は説得するように色々言ってくるが、朝倉君はじっと黙ってこちらを見ていた。

「なぁ…君、仮にもモデルだよな?トップになろうとか野心ってないの?」

 ふいに、彼が問いかけてきた。

「確かにモデルの仕事をしてるけど、それだってこの長身を活かせるからってだけだもの…トップなんてそんなだいそれたこと思ってない。それに唯香さんと張り合うなんて」

 彼の目が冷たく私を見ていた。

 それにこの仕事を受けるという事は、彼と会う機会が増えて私だと気づかれるかもしれない。

「……雪村さん、帰りましょう」

「朝倉君、待って!まだ契約が」

 雪村さんはあせって彼を止める。

「こんな無理とか言っている奴、【アンジェリア】のモデルには相応しくないですよ。やる気のない奴がモデルになったって、売れる服も売れなくなる。今回は雪村さんの見る目が無かったってことで諦めて下さい」

 彼の言葉に、思わず唇を噛み締めた。

 あぁ、嫌われたな。完全に……

 2人が応接室を出ようとしたその時---

「ねぇ、朝倉君だっけ?ちょっと待ってくれる」

 社長が呼び止める声が聞こえた。

 彼は振り返ると問いかけるような視線を向けている。

「メイにチャンスをくれない?」

「社長!」

 止めるように腕を掴んだが、彼女は話続けている。

「仕事の出来で、メイを使うかどうか決めて頂戴。私はこの娘を買ってる。あなたの評価が間違っている事を証明したいの」

 楽しそうに社長はウインクしている。

 朝倉君は呆れたように、雪村さんは安心したように社長を見ている。

「……判りました。社に戻り上に報告後、もう1度こちらから連絡させて頂きます」

 そう言うと2人は、一礼して出て行った。

「社長!何であんな事---」

 私は渡瀬さんに詰め寄った。彼女は楽しそうに笑っている。

「ねぇ、メイ…あなたがこの話を受けないのは、本当に唯香だけが理由?」

「え?」

「ホントはね、【アンジェリア】のモデルの話がきた時、私は断ろうと思ったの。唯香を引き立てる為だけのモデルだと思ってたから……でも、雪村さんは真剣にあなたを使いたいそうなの、唯香よりもよ…だから自信を持って。これはチャンスよ!メイ」

 社長の真意を聞き、私は個人的な感情で事務所の有益になる話を断ってしまった事に罪悪感を感じた。

 たぶん、連絡は来ない……罪悪感を感じながらも、彼にもう会わないでいいという安心感があったのも事実だった。

 私はその時、1週間後に再び彼に会う事になるとは思ってなかった。



 


 


「君の隣に」と並行して掲載したいのですが、遅筆なものでペースはゆっくりになると思います。それでもいいという方はお付き合いくださいます様よろしくお願いします。

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