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Eye of Glaia Online 〜ナイフ縛りが趣味の男は意図せず配信界をザワつかせる〜  作者: 天沢与一


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第3話:初めてのボスはあいつに似ていた

 ボスエリアに入った。


 道の真ん中に耳と手足の先だけ赤で、胴体は茶色の熊が鎮座している。目つきは悪いが結構可愛い。


 俺に気づいた熊は、すぐさまこちらに向かってきた。


 4足で駆けてくる突進攻撃を横にステップして躱す。


 熊はエリアのギリギリで急ブレーキをし、咆哮して再び突進してきた。動きが素直で避けやすい。


 すると今度は腕をぶんぶんと振り回しながら近づいてきたので、後ろに逃げ、エリアギリギリになったら横に走って攻撃を避けた。


 その後も攻撃を避け続けたが、熊の攻撃は突進攻撃、振り回し攻撃、たまに振り下ろしの3パターンくらいしかない。


 これが最初のボスか……一昨日ナイフ縛りしたボスと若干動き似てるんだよなぁ。


 そのおかげかローブを着ている所為で若干動きにくいのに、問題なく避け続けられてしまう。


 避けられるってことはつまり……



「ナイフでいけるな」



 俺は武器を持ち替えた。


 突進後エリアギリギリで急ブレーキをかけて止まったところを斬りつける。


 そして振り下ろし攻撃を躱してナイフで突き刺した。


 また突進……じゃない!

 土かけてきたんだけどこいつ!


 最初は突進だと思ってたおかげで避けられたからいいけど、これ受けてたら目潰しされてたぞ。


 初めてのボスなのにそういうことしてくるのかよ。


 近くにいたらしてくる攻撃かな。びっくりした。気をつけよ。



『注目されました。』



 待って今度はなに。なんの通知それ。


 警戒したものの、熊はいつも通りの攻撃をしてくる。


 避けて攻撃してのヒット&アウェイを続けていれば、今の通知のことなど忘れていった。


 ナイフで斬る。

 向きを持ち替える。

 突き刺す。


 スキルなんてなくても、ナイフの動きは他のゲームで染み付いている。


 途中首を狙ったら大きくHPが削れることに気づいた。

 急所が設定されているとはラッキーだ。


 首を重点的に攻撃していれば、熊のHPがどんどん削れ、やがてゼロになった。



『ボス:凶暴化したグレートベアが討伐されました。

 クリアタイムは5分37秒です。

 クエストクリア条件を達成しました。

 配信レベルがアップしました。

 レベルアップ報酬を受け取れます。』



 一撃も喰らうことなく無事に倒せた。


 5分を大幅に過ぎちゃったな。

 でも頑張れば1分切り狙える気がする。




[YUKICHI:<♢100>討伐おめ]

[藍汽:<♢10>初ボス討伐記念]

[かげまる:<♢1000>やるじゃん]

[セカはじ:<♢10>なんでナイフで戦ってんの?]

[ぴょこん:<♢10>間違って魔法職選んじゃった?]



 えっ、なんでコメント流れてるの?


 ……あっ、課金コメントだこれ。


 そうか。課金は受け付けるようにしてたから、コメントオフにしてても課金コメなら流れるのか。


 どうしよう、一応返事した方がいいよね。



「コメント……投げ銭ありがとうございます?別に間違って魔法職選んだわけじゃないし、ナイフで戦ったのは倒せそうだったから……かな?」



[永遠の初心者:<♢10>理由雑で草]

[ぴょこん:<♢100>配信なれてなさそうで可愛いね]




 ……本当にどう反応したらいいのこれ?

 コメントなんてくると思ってなかったから、心の準備が出来てないんだけど。


 てか投げ銭されるってことは、もしかして結構な人数に見られてる……?


 よくなんも喋ってない状態でこんな序盤のボスと戦っていただけの配信を見ようと思ったな。途中“注目されました”って通知来てたけどそれのせいか?


 まぁいいや。


 特になにもやらなければそのうちみんな見なくなるだろ。


 もう一回このまま再戦するつもりだったが、先に討伐を依頼してきた女性に討伐報告しにいくことにした。


 無言の戦闘シーンは見れても、無言のただ歩いているだけのシーンは流石につまらなくて見続けられない筈。


 今投げ銭した2人に一応お礼だけいって、始まりの村にのんびりと歩いて戻る。


 途中、メールマークに②と数字がついていたことに気づいて、中を見た。


 《配信レベル2達成報酬》として初級HP回復薬が5個、《配信レベル3達成報酬》として初級MP回復薬が5個が届いている。


 2を飛ばして一気にレベル3になってたんだ。ささやかなプレゼントだなぁ。


 回復薬は大切なのでありがたく貰っておこう。


 そんなことをしているうちに村に戻って来れた。



「アンナさん、倒してきましたよ」


「ほんと!?……失礼しました。流石救世主様ですね。これで村も救われました。お礼にこちらを差し上げます」



 武器修繕無料チケットを貰った。



「今なら凶暴化したグレートベアの肉をより高く買い取らせていただきますが、いかがですか?」



 凶暴化したグレートベアの肉……?

 なにそれ。


 あっ、ドロップアイテム拾ってない!


 急に来たコメントに気を取られて完全に忘れてた。


 くそぅ。コメントオンにしてたら誰か教えてくれてたかな。今後も絶対オンになんてしないけどさ。


 気を取り直して再度凶暴化したグレートベアに挑みに行きたかったが、まだ見られてると思うとうまく動ける気がしないので、一度ログアウトする。


 若干お腹空いた気がするな。


 ゆっくりとカップ麺を食べ、水分補給をしてから再ログインした。


 ここまですればもう誰も見てないだろ。


 改めてRTAチャレンジだ。


 といっても、今回はまだやらない。


 まずは検証からだ。


 とにかく相手の動きを見て、いろんなことを試して、より効率の良い攻撃方法と最適な避け方を探っていく。


 実はナイフ縛りにハマる前はRTAにハマってたんだよね。


 ナイフ縛りとRTAは両立しなかったから辞めたけど、今も最速を狙うのは好きだったりする。


 2回検証したところで道筋は見えた。



「“ブレイズアップ”」



 まずボスエリアに入る前に攻撃力を上げておく。

 これは次の攻撃一回だけ攻撃力が上がるスキルだ。事前に唱えておいても効果が続くことは確認している。


 そしてブレイズアップのリキャストタイムが終わるのを待ってからボスエリアに入る。



「“ファイヤーボール”」



 入った瞬間、すぐさま攻撃を顔面に当てる。


 そうすると熊が怯むので、近づいてロッドで頭部を思いっきり殴る。


 よろけた隙に、



「“ブレイズアップ”、“ファイヤーボール”」



 攻撃力を上げてまた顔面に当てる。


 この距離だと土を掛けようとしてくるので、ロッドで手を殴って防ぎ、さらに足を狙って転ばせる。



「“ファイヤーボール”」



 3度目のファイヤーボールも顔面狙いだ。


 というか、顔面しか狙わない。


 どうやらナイフだと首筋が急所になるみたいだが、ファイヤーボールは首筋に当ててもダメージ量は変わらず、むしろ顔面を狙った方がHPが多く削れた。


 刃物は首筋、魔法系やそれ以外は顔面ってところかな。


 また、ロッドで殴るという攻撃もダメージが入っている。なんならナイフで切りつけた時より大きいダメージ与えられてた。


 たぶんロッドは適正武器だからだろう。


 ロッドで頭部を殴り、リキャストタイム明けに近距離からファイヤーボールを顔面当てる。


 その流れを3回繰り返すと、熊のHPはゼロになった。



『注目されました。

 ボス:凶暴化したグレートベアが討伐されました。

 クリアタイムは24秒です。

 ランキングが更新されました。

 公開設定を行なってください。』



 あ、また注目の通知入ってる。


 でももう討伐し終わったから見るもの無いよ。

 1位は取れたからもう挑まないし。


 何もないから人が集まらないことを願って、とりあえず公開設定とやらとしておこう。


 うーん……名前も職業も非公開にできるみたいだけど、別にする意味ないよな?


 どっちも公開でいいや。


 ドロップアイテムを忘れずに拾って、ボスエリアを出る。


 するとさっそくランキングが更新されていた。


 1位に入る自分の名前……悪く無いな。

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