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恋の物語

これは彼と彼女が付き合うことになるまでのお話。

都会から少し外れた場所にあるとある町。

そこにある小学校から高校までのすべてを合併した学校に俺は高校二年生として通っていた。


「そう言えば聞いたか?(ひいらぎ)


「・・・・・・どの噂だ?またお前が中等部の連中とやり合って先生が仲裁して終わったっていうやつか?」


「いやいや、まぁそれもそれでちょっとした事件かもしれないが・・・・・・」


目の前にいるこいつ・・・名前は阿達蓮(あだちれん)といい、この島でのこいつの評価というのは都会で言うところのたばこや酒をして停学をくらうような人間であり、お世辞にも良い人間とは言えない。

実際この学校でもこいつに近づこうとする奴なんて俺ぐらいしかいないだろう。

まぁ俺も近づきたくて近づいたわけではないのだが・・・・・・


「というか、それなら何なんだ?あー、あれか?物理の先生の安田先生が小等部の女の子にセクハラして教師人生終了ってやつ?」


「は?なんだそれ、あのくそ教師、それが理由で退職したのか?ちょっとその話も気になるが・・・違う、あれだよ、高等部の一年生、令嬢さまがまた告白断ったって話!」


「・・・・・・あぁ、なんだそのことかよ、そんなのいつも通りだろ?」


「それがだな、今回の告白で遂に百人切り達成したんだってよ、いや~、すごいよな、この学校小等部から高等部まで合わせて800人いくかいかないかぐらいだぞ?その中の百人をばっさりいっちまったんだ・・・・・・そりゃ話題にもなるだろ」


「色恋沙汰に関しては俺はあんまり興味ないからなぁ、その令嬢?についても特に何なのかよくわかってないんだよな」


「まっ、そうだよなぁ、お前にはもうすでに意中の相手がいるんだもんなぁ」


ニヤニヤとしながら、そいつは俺のことを見てくる。

そんな視線に流石の俺もうざくなってきたため、話をここで無理やり断ち切ることにする。


「・・・・・・はいはい言ってろ、それじゃあ俺は部活行くから」


「はいよ、行ってら、また明日な」


雑に阿達と別れ、俺は()()のいる部室へと向かうことにするのだった。



******

・・・この学校には令嬢と呼ばれる女性がいた。

今年の春、突如として高等部の一年生として転校してきた生徒。

その可愛い見た目から一躍この学校の有名人となった。

高等部の同学年から先輩、噂によると中等部の生徒もわざわざ高等部に来ては告白をしている・・・らしい。

そして彼女が令嬢と最も呼ばれる理由。

それは誰が告白したとしてもすべて断っているということだ。

サッカー部のイケメンでも、バスケ部のキャプテンでも誰であろうと。


噂では、

もうすでに付き合ってるのでは?

好きな人がいるのかも?

などの憶測が立てられている。

中には女の子に興味があるのでは?なんというありえないような噂すら立てられていた。


そして俺、柊真也(ひいらぎしんや)はそのすべての噂が嘘であるのだと知っていた。

それはなぜか?

それは至極単純なことだ。


「・・・・・・よっ、やっぱり今日も早いな、(たちばな)


「先輩が遅すぎるんですよ?一応部活開始時刻はすでに過ぎてます」


「はは、悪い悪い、主にお前の話で盛り上がってたんだよ、令嬢サマ?」


「・・・・・・やめてくれます?その通り名、普通に恥ずかしいので」


そう、なぜそんなことを知っているのか。

それは彼女が俺の所属する『漫画研究部』に属しているからだ。

漫画研究部なんて言いながらもただの読書好きが集まって本を読むだけの場なのだが。


最初こそ、令嬢が・・・橘立夏(たちばなりっか)が来たときは驚いた。

その時はまだ令嬢なんて通り名がついていないこともあって、ただただめっちゃ可愛い子が来たなぁぐらいにしか思っていなかった。

それがまさかこんな状況になるなんて・・・・・・

今ではそれなりに仲の良い読書仲間という感じだろうか?


「そう言えば、お前また告白断ったんだって?よくやるな、今回はどんな相手なんだ?」


先ほど阿達と話していたことを俺は彼女に聞いてみる。

すると、さっきまでは無表情だった彼女から明確に怪訝な顔をされる。


「・・・・・・野球部のキャプテンの人ですよ」


「おっ、そいつもか、確かあれだよな?キャプテンであり四番張ってるキャッチャーしてる人」


全く野球に興味がない自分ですら噂で聞いた記憶がある。

めちゃくちゃ野球がうまいし、それなりにイケメンだからか、俺のクラスの連中も良いよねなんて聞いたことがある。

それなりに優良物件であることは確かなわけだが・・・・・・


「・・・・・・あの人、きもいですよ?私が告白断ったら肩掴んできて・・・息遣い荒かったですし、あぁ今思い出しただけで震えが・・・みんな表面の部分しか見なさすぎなんですよね、あの男、次あったらただでは済ましません」


橘からそんな怒りが漏れ出る。

まぁ話を聞いている限りでは悪いのは向こう側だろうし・・・まぁ仕方がないということだろう。


「ちょっと?先輩聞いてます?私結構怒ってるんですけど?」


「ん?あぁ、聞いてるぞ、というかよく逃げれたな・・・一応向こうは鍛えてる男だぞ?」


そう俺が疑問を口にすると、橘は少しだけ歯切れが悪い様子で答える。


「それはまぁ・・・・・・一応私も鍛えてるほうですし、ね?」


「・・・・・・まぁそんなもんか」


とりあえずそういうものなのだろうと納得する。

聞きたい話も聞けて、一度区切りがつくと、俺はふと気が付く。


「そう言えば、今思ったんだが部長はどこ行ったんだ?」


「え?あぁ部長ですか?部長ならもうすぐ来る・・・・・・」


彼女のその言葉が言い切る前、部室のドアが突然勢いよく開く。


「グッドモーニング!可愛い後輩たち!いや~、部活動集会が長引いちゃってねぇ~、遅くなっちった!」


耳障りとも感じてしまうほどうるさい声量でそいつは入ってくる。


「・・・・・・あれ?二人共、元気ないんじゃない?もっと元気出さなきゃ!ほらほら」


「うるさい、逆になんでそんなに元気なんだよ、部長」


「いやいや、やっぱり私たち漫研ももっと存在感をアピっていかないといけない!そう思ってさぁ」


そう言いながら、先輩は付け加えるようにして、

「そーでもしないと新入部員が入ってこないし・・・・・・」

どこか目元が曇ってるように感じられた。


「・・・・・・それこそ、橘を宣伝に使えば大量に来てくれるんじゃないか?男限定で」


「ふむ、私もそれを考えたのだがな、本人の意志を尊重するとそうもいかないのだよ・・・」


そういい、部長は橘のほうへと視線を向けた。

すると橘は少しだけ気まずそうに顔をそむける。


「・・・・・・そう言えば、お前って人見知りだったな」


そう、彼女——橘立夏は結構な人見知りだったりする。

そのせいか、誰に対しても冷たい態度で接してくるため、男子からはそう言うところも良いと言われる反面、恋人は当然友人という友人すら存在しないのだ。


「それはただあまり多くの人と関わるのがダメなだけです」


彼女自身はそう否定してはいるが・・・・・・

それを世の中では人見知りという。


まぁそれを本人に言ったらまた面倒なことになるだけだろうから言わないが。


「はいはい、まぁ可愛い後輩のことを考えるならあまり嫌がることはしたくないのだよ、柊くん」


「それに男まみれになるのも嫌ですしね、加えて本を読むための部活なのに橘を見るなんて言う趣旨がまったく違う部活になるというのも気が引けますし」


「うんうん!部長としてはもっと部員が欲しいところだけど・・・・・・私の気持ちとしてはこうやって三人でわいわい雑談しながら本を読むのが一番だから大丈夫だよ!」


そんな少し照れくさいような、

らしくもない部長の言葉に、俺も橘も二人して吹き出す。


「むっ、二人共私に失礼だとは思わないのか?私がせっかくいい話をしたというのに!」


「いやいや、俺も橘もうれしいんですよ、そんなこと言われて・・・・・・ねぇ?橘」


「そ、そうですよ、部長そんな・・・こと、いってくれてうれしいですよ?わ、私は」


橘はどうにか笑いをこらえながらそう言葉を紡ぐ。


「・・・・・・君たち!ちっとも思ってないだろ!」


そんな何気ない雑談。

そしていつも通りの代り映えのしない日常。

この日常がこれからも続くと思っていた。

ただ・・・・・・そんな日常いつのまにかに壊れてしまった。




―————翌日。

俺はいつものように部活に行こうとしていたのだが、

その際にとある手紙が自身の机の中に入っていたのに気が付いた。


「おっ、柊・・・・・・もしかしてラブレターってやつか?おいおい、お前も隅に置けないなぁ!」


隣で喋っていた阿達はそう言い茶化してくる。

が、それを俺は大きくため息をするとその手紙の中身を確認する。


『放課後、校庭の体育館裏で待っています』


そのたった一文だけ。


「まぁ嘘告の可能性もあるからな、もし嘘だったら俺が慰めてやるよ」


「・・・・・・・」


俺はそんな阿達の言葉を無視するとそのまま急いでその”彼女”がいるであろう場所へと向かうのだった。


「・・・・・・おいおい、どうしたんだあいつ?まぁいいか」



・・・・・・あの字、よく見覚えのある字。

手紙の字をみた瞬間に気づいた。

ただ、そんなことありえるのだろうか。

正直半信半疑でしかない。

だが・・・・・その答えを知りたくて。

だからこそ俺はその場所へと走り出していた。


「はぁはぁ・・・・・・どうしてだ?お前・・・・・こんないたずらするようなやつだったか?橘」


「・・・・・・そんなはずないことぐらい先輩なら知っていますよね?」


「なら・・・・・・どうして?」


その俺の言葉に。

彼女は――橘立夏は少しだけ笑みを浮かべて。


「私と付き合ってください・・・・・・柊真也先輩」










******おまけ******

人物紹介:

・柊真也

今作の主人公であり、令嬢と呼ばれている橘立夏と唯一普通に話すことができる男生徒。

高等部二年生で漫画研究部に所属している。

一般的な黒髪の短髪の好青年のようなイメージ(身長なども高校二年の平均ぐらい)


・橘立夏

今作のヒロインのような枠、学校では令嬢と呼ばれており、他者には結構ドライな性格であり、中・高等部からの告白が絶えない。

高等部一年生で主人公と同じ漫画研究部に所属している。

珍しいきれいな白く長い髪をしており、学校で令嬢と呼ばれるだけはありきれいな見た目ををしている。


・三崎奈菜

今回では語られなかった名前で漫画研究部の部長をしている。

性格は読んだ通りの元気で結構楽観的な性格をしている。

高等部三年生であり漫画研究部の部長。

黒い長い髪をしており、目が悪いため眼鏡を普段からつけて生活をしている。


・阿達蓮

主人公の友達で、学校内・外でも悪い意味で有名な人。

性格はクズでもあるが意外と頼りになったりもするようなよくわからない性格をしている。

高等部二年生であり友人は柊だけ。

髪をかっこいいだろうという理由で赤く染めており、先生たちからも何度も怒られていながら本人は一切悪びれず、ずっと赤くしたまま。

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